PROFILE

1972年、京都府生まれ。スタイリスト。ヴィンテージやアンティークに造詣が深く、それらを取り入れたスタイリングで雑誌や広告を手掛け、ファッション業界人にもファンは多い。また、自身の感覚を全面に出したヴィンテージアイテム紹介本『THE SUKIMONO BOOK』がこれまでに計10冊リリースされており、古着業界では知らぬ者のいない存在。
パックTから感じる、いわゆるオーソドックスなアメリカの匂い、そこが好き。

ー そもそも服に興味を持ち始めたキッカケは、小学校高学年の頃だったとか。
原田:そうですね。地元は京都の新京極というエリアなんですが、そこの商店街やちょっと離れた木屋町周辺なんかに、アメリカのインポートアイテムを売る、いまでいうところのセレクトショップがあったんですよね。それが小学校高学年だった80年代がちょうど増えていった時期で。〈カーハート(caarhartt)〉や〈ディッキーズ(DICKIES)〉のようなワークウェアや、スエットシャツ、あとは派手な色した〈コンバース(CONVERSE)〉のオールスターがあったりして。その光景を見て、子供ながらに格好良いなぁって思っていたのを覚えています。もちろん、それらを自分でお金を貯めて買うようになったのは、もう少しあとの話ですが。
ー そこにはやはり〈フルーツオブザルーム〉もあったんですか?
原田:もちろん、あったと思います。ロゴマークがそのものズバリのフルーツですし、分かりやすくってカラフルじゃないですか。だから印象に残っているんじゃないかな。

ー なるほど。原田さんは古着屋で〈フルーツオブザルーム〉に出会う機会も多かったと思いますが、どんなイメージをお持ちですか?
原田:どちらかといえばアンダーウェアの印象が強いですかね。古着としてはタンクトップやTシャツ以外に、パジャマなども出てきたりするんですが、そうして色々と掘っていると「あれ、スラックスなんてあるんだ!?」とか「ドレスシャツもあんじゃん!」みたいに、色んなモノが見つかるんですよ。その意外性がまた面白くって、古着屋さんで話したり、友達と「こんなフルーツがあったよ」っていう情報交換をしたりすると、それを覚えていてくれてまた珍しいモノが集まってきたりっていう。
ー 〈フルーツオブザルーム〉公式ウェブサイトのHISTORYページの制作にも少し関わっていらっしゃいますが、年代ごとのラインナップの特徴ってあったりするんでしょうか。
原田:ブランドの歴史をまとめた年表に掲載されているアイテムは、1週間くらい古着屋を回って集めたんですが、アイテムのバリエーションが増えるのは70年代ぐらいからですね。それ以前も40年代のシャツが出てきたり、50年代のミリタリーシャツが見つかったりするので、世間一般的に思われているTシャツ・アンダーウェアのブランドというイメージ以上に、ブランドとしての振り幅も広く、掘っていて面白かったです。


数年前に購入したという3パックのAシャツ。いわゆるタンクトップなのだが、注目すべきはそのサイズである。
ー 今回は、そんな原田さんのコレクションから、お気に入りのアイテムを持ちいただきました。
原田:このタンクトップは、年代的には50年代~60年代くらいかな。袋に書かれている数字は…なんでしょうね? 当時の価格ではなさそうだし。それよりも注目すべき点はサイズ。なんと50(日本サイズでは6Lに相当)! 実際に着てみると、これがもうズドンとした極太&極長のシルエットで。たしか女の子のスタイリングで使ったら可愛いんじゃないかなと思って買ったんじゃないかな。タグに青ラインの囲みがありますが、これがさらに古くなると刺繍ネームに変わったりします。で、Tシャツの場合は逆に、結構新しめのモノを持ってきました。

〈シュプリーム(SUPREME)〉のボックスロゴの元ネタとされるバーバラ・クルーガーの作品をプリント。コピーライトによると1995年のモノ。
原田:当時、古着屋で買ったんですが、よく考えたら実は古着ではなく、現行品だったってことですよね(笑)。シルエットに関しても、ヘビーなボディが人気の時代だったので、ネックがちょっと詰まっていたりして、それも90年代のベーシック。当時は、バーバラ・クルーガーが何なのかも全然知らなかったんですが、デザインが気に入ったんでしょうね(笑)。これも衣装として買って、あの頃だから、チェックシャツなんかと重ね着させていたんじゃないかな。

プリントから察するに、目標の100マイルまで75マイルの踏破を達成した記念品と思われる。
原田:これも90年代ですね。BESTの文字が入るのでコットンポリの混紡ボディを使っていますが、多分、ランニングクラブのものじゃないかなと。一時期、ジョギングやマラソン大会のTシャツばかり集めていたので、それで買ったのかもしれません。それと単純にデザインが気に入ったとかそんな感じじゃないですかね。

映画『ピースメーカー』のノベルティ。完全なるデッドストック状態で自宅にて発掘。タグには、ファッションアイテムとしてのラインとして1970年代に立ち上げられた〈スクリーンスターズ〉の表記が。
原田:たしか試写会でもらった記憶が…映画自体の内容はまったく覚えていませんが(笑)。当時はよくもらえたんですよね、プロモーション用として。タグは〈スクリーンスターズ〉とフルーツが併記されていて、ボディは丸胴仕様。見ての通り、袖を通すことはありませんでしたが、このデザインも今だと新鮮でアリなのかも。
ー 原田さんのTシャツ選びの基準は?
原田:う〜ん、プリントTに関してはデザインですよね。あとはその時々で、自分の中での流行りがありますし…改めて考えると、統一感というか基準というのはないかもしれません。だからこそ、こうやって引っ張り出してきた時に、これはいつ頃買ったとかを覚えているんでしょうね。あと今回、自分の収集対象の中にTシャツはあまり含まれていないというのも分かりました。Tシャツはコレクションとしてではなく、あくまで着るためのもの。
ー Tシャツは、デイリーウェアですもんね。
原田:なので、アメリカに行く時も、到着したら真っ先にKマートやウォルマートで〈フルーツオブザルーム〉のTシャツとパンツを手に入れる。まずそれから。向こうだとカラバリも豊富なので、好きな色を見つけたら全部2枚ずつくらい買っておくんです。ぼくの場合は派手好きなので、ブルーやグリーン、パープルとか。あとは2枚パックの白Tも、夏場はよく着ています。

ー 実際に着用してこそ分かる、〈フルーツオブザルーム〉の良さとは?
原田:それこそパックTなんかは、いわゆるオーソドックスなアメリカを感じて、そこが好きですね。Tシャツって時代によってシルエットや厚み、生地感の流行がありますが、フルーツは他ブランドに比べると、なんとも程よい塩梅。先ほど紹介した90年代のモノが個人的には好きなバランスなのですが、現行品もそれに近い感じですね。同じパックTでもブランドによっては下着感が強いものがあるじゃないですか? そういうのはアームホールがタイトで、汗かきの自分的には苦手で…。それもあってずっとXLサイズなど大きめだったり、デザインもちょっと面白いものを選ぶことが多いかな。とにかく派手なものを見つけると買っちゃう。あ、基準ありましたね(笑)
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