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次世代に寄り添うニューコレクション。BOY・奥冨直人によるアヴィレックスの新解釈。

次世代に寄り添うニューコレクション。BOY・奥冨直人によるアヴィレックスの新解釈。

1975年にアメリカで創業した〈アヴィレックス(AVIREX)〉。フライトジャケットを中心にミルスペックに準拠するアイテムを生産し、アメリカ軍に納入していたことでも知られています。今回、このブランドから次世代に向けたコレクション「FLYER’S CAMPAIGN」が発表されました。パイロットからインスピレーションを得たというこの新作は、操縦する側だけでなく搭乗者もイメージ。アーバンミリタリーの雰囲気を漂わせながら、“RECON” や “TACTICAL” といったワードからもアイデアを膨らませています。そんなコレクションを渋谷・宇田川町にある古着屋「BOY」の奥冨直人さんが着用。〈アヴィレックス〉の古着を買い付けたこともあると言う彼が、このブランドにまつわることから、自身のファッション感、お店のこと、そして現代を生きる若者たちへの想いを語ります。

  • Photo_Takuroh Toyama
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Muramatsu

食事をするような距離感で、生活に寄り添うことをしたい。

ー 再び「BOY」の話に戻りますが、コロナの影響によってお店に変化はありましたか?

奥冨: ここ1年で来店されるお客さんの層が変わってきたように思います。いままでは地方や海外から来られるお客さんが多かったのと、東京からも10代から50代くらいまで幅広い方々が来ていました。でも、今年に入ってからは10代の子たちが多くなってきて。お店をスタートしてもう12年になるんですけど、オープン当時ぼくは10代でお客さんも同年代のひとたちが多かったんです。それから年齢を重ねるたびにお客さんの年齢層も上がっていくような状況だったんですけど、ここ最近は高校生とかもよく来るようになったんですよ。すごく若いエネルギーを感じるというか。

「これはもう、ゴリっとした感じで(笑)。いかにも無骨な雰囲気の男がいてもいいんじゃないか、というぼくなりの提案です。足元にエアマックスを合わせて、ちょっとポップな方向におちゃらけるというか、どことなく少年ぽさを残しているのもポイントですね」

ー 1周回ったということですね。

奥冨: そうだと思います。音楽やファッションが生活と距離のあるひとも世の中にはいると思うんですけど、ぼくやここに来るお客さんにとってその2つの要素は日常を塗り替えるものだと思うんです。好みの服を着たり、好きな音楽を聴くことで気分が上がる。なんでも自粛が求められる時代において、ここに来る若いお客さんたちも、自分の身なりや聴く音楽によってモチベーションを上げているように思うんです。それがここに来る理由なのかなと。

ー 服を見るのはもちろん、奥冨さんとのコミュニケーションを望んで来ているんですか?

奥冨: それは感じます。オンラインで話すよりも、リアルなコミュニケーションを求めているような気がしますね。ここでしか生まれない特別な会話ってあると思うんですよ。そうした体験を求めているんじゃないかと。だからぼく自身もそれを提供したいと思うし、そうした若い子たちと話が合うことがあれば、お客さんがぼくの知らないことを話してくれたりもして、その両方を楽しく受け止めていますね。

ー 具体的にどんな会話をするんですか?

奥冨: 一番多いのは進路相談とかですね(笑)。先行き不安でどうしようとか、そうゆう暗い話ではなく、やりたいことに対してどうアプローチしていけばいいかといった内容が多いです。「とにかく遊べ」ってぼくは思ってるんですけど。

あとは新しいことを知りたいっていう欲求も感じますね。最先端の情報に対してぼく自身が明るいかというと、それは疑問なんですけど、現場感はあると思っていて、街でなにが起きているかというのは肌感覚で分かるんですよ。街をフラフラと歩いたり、友達と会ったり、クラブなどで遊んだりしながら自然とインプットしたものをこのお店でアウトプットしていて、ここで生まれた会話を今度はそのお客さんが外へと広げていくような循環が生まれたらいいなと思っています。

古着をはじめ、雑誌やフィギュア、民芸品、はたまたいつの年代のものか分からないポスターなど、さまざまなものが所狭しと並ぶ「BOY」の店内。

ー 若い世代のひとたちのファッションを眺めていて感じることはありますか?

奥冨: みんなと一緒なのがイヤっていうのは強く感じます。昔は雑誌によって “○○系” っていうのがたくさんあって、ファッションが系統化されていましたよね。それに属することで安心感を感じたり、トレンドの服を着たいという願望がもっと強かったと思うんです。だけどいまはその反対で、もっと個を高めるために服を着ている印象があります。だからどういう服が若い子たちに受け入れられそうかというのは感覚として分かるんですけど、同じ格好をしているかといえばそうじゃない。それがすごくおもしろいですよ。「あいつと被りたくない」っていうのはいいモチベーションだと思うので。

ー お店の仕入れなどに関して変化はありましたか?

奥冨: セレクトで変わったことといえば、メッセージ性を強く持たない服を仕入れるようになりました。お店の中にはいまイルカのTシャツが異常に多いんですけど、ちょっと癒しの要素というか、ふわふわとしたアイテムがあると落ち着くじゃないですか(笑)。だからエッジの効いた服の提案は減りましたね。オープン以来、一番日常的に着やすい服が多いと思います。

ー 生活に寄り添うような感覚が強くなってきたと。

奥冨: そうですね。これだけたくさんのメッセージがある時代なので、ぼくから提案するものを減らして、もっと気楽に着てほしいという想いがだんだん強くなってきたんです。だからお客さんに委ねるというか、目と目が合ったらその服を手にとってほしいと思っています。

ストレッチ性のあるリップストップナイロンを使用し、動きやすさも重視しながらデザインされたジャンプスーツ。椅子に座るときなど、膝を曲げた際のストレスを軽減する特殊構造を採用し、着心地も抜群なのが嬉しい。¥21,780

ー これからやりたいことはありますか?

奥冨: 去年、渋谷の街に本当にひとがいなくなってしまって。そこでちょっと実践したのが、渋谷を出て、下北や駒場、松陰神社のあたりなど、自分とゆかりのある町でポップアップをやったんです。それもおしゃれなギャラリーとかではなく、八百屋とか居酒屋の空きスペースなど、その町に住むひとたちの生活に寄り添った場所でやりました。普段よりもお客さんの反応がよくて、やっぱりそこで生活されている方が来てくれるんですよね。なので、様子を見ながらにはなりますが、東京のいろんな街でやりたいと思ってます。コロナが落ち着けば範囲を広げて地方とか、各地でポップアップができればなと。自分で足を動かして、ここに来ることができないお客さんに会いたいですね。ぼくから歩み寄れるように、渋谷を飛び出す準備はしておこうと思ってます。

ー いろんな場所に行くことによって、その土地土地の空気を感じられたらいいですね。

奥冨: やっぱり各地におもしろいひとがいるし、東京、渋谷だけで物事を考えないようにしています。ちょっと話を広げすぎかもですけど、ファッションもそれだけで成立するとは思ってないので。衣食住という言葉があるくらいだから、食事をするみたいな距離感で、いろんなひとの生活に寄り添うことをしたいと思っています。

INFORMATION

AVIREX 新宿

電話:03-5367-2013
キャンペーンページ

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