芯はあるけどひとつの場所に固執しない。(STUTS)
ー STUTSさんは先の話にもあった通り、MPCプレイヤーやビートメイカーとしてだけではなく、プロデューサーとしての才能もあり、時にラップもされたり、とにかく多才な印象があって。一方でDaichiくんも自身でビートを制作していたり、互いに音楽を制作する上での表現の幅が広いアーティストとして共通項があるなと感じているのですが、それぞれ影響を受けることも多いですか?
Daichi Yamamoto: 『Cage Birds』も『Breeze』もそうだったんですけど、ラップやボーカル部分の歌い方とかリリックに関してアイデアをもらうとき、STUTSさんが試しにラップしてくれたりするんですけど、その言葉選びが素敵だなってずっと思っていたんですよね。ぼくには思いつかないワードセンスというか。
STUTS: そう言ってもらえると嬉しいですけど、凄く恐縮しちゃいます(笑)。歌い方とか録音方法は多分プロデューサーとしてこれまでいろんな方々のラップや歌を聴いてきて、録音の方法とかを知れたりしたことで、いい影響を受けているのかなって思います。
Daichi Yamamoto: なるほど。

STUTS: Daichiくんとは、芯はあるけどひとつの場所に固執しないって部分で共感できるのかなって勝手に思っていて。一緒に何度も曲をつくってきたからこそ、そうした部分を強く感じるし、だからこそなんでも話せたり、相談できることもあります。
Daichi Yamamoto: プライベートの話もしたりしますしね。STUTSさんは、コミュニケーションを割と密にとっているアーティストの一人だと思います。2019年のAPPI(Jazzy Sportが毎年冬に主催するゲレンデのあるホテルを舞台にした屋内フェスの「APPI JAZZY SPORT」)のときもaru-2くんと同部屋で色々音楽談義もしつつ、仕事と関係のない話もしましたよね。
STUTS: そうだね。あのときはすごく楽しかったです。あとDaichiくんにはイギリスの話もよく聞いたりするよね。少し前だとコージー・ラディカル(イギリス出身の気鋭ラッパー)とか教えてもらったり。
Daichi Yamamoto: 確かに海外の話はよくするかもですね。
ー Daichiくんはロンドンへの留学経験もあって英語も堪能で、STUTSくんも海外へのフェスに出演された経験がありますよね。ビートライブなどであれば言葉の壁もないと思うので、ともに海外への進出も視野にあったりするのでしょうか?
STUTS: そういう機会があれば、ぜひ海外に行ってみたい想いはありますね。
Daichi Yamamoto: 海外で一緒にやってみたいアーティストとかはいます?
STUTS: 明確にはあまりないんだけど、やっぱり好きなアーティストとかよく聴く曲を歌っているひとたちとはやってみたいですね。Daichiくんは『WHITECUBE』の『Kill Me』でミック・ジェンキンス(シカゴを拠点に活動する新世代のラッパー)と一緒にやってたよね。
Daichi Yamamoto: そうですね。あの曲は、「Frank Renaissance」という日米協業のHIPHOPレーベルのプロモーターが架け橋になってくれたのがきっかけだったんですよ。ビートはQUNIMUNEさん(Daichi Yamamotoの代表曲『Let it Be feat. Kid Fresino』でもお馴染みの東京在住のプロデューサー)がつくってくれたんですけど、そのトラックをジェンキンスが気に入ってくれて。確かその時期にSTUTSさんとも話してましたよね。

STUTS: そうそう。あの話を聞いた時はびっくりしたよ。ちなみにDaichiくんは、ラップをする時に日本語と英語を使い分けていると思うけど、その感覚の違いとかはあったりするの?
Daichi Yamamoto: 最近思ったのは、日本語でも英語っぽく発音できる言葉ってあるんですよね。よく使うワードだと「足りない」と「Tell Me Why」みたいに、どっちにも振れる言葉でフロウするのが気持ちいいんです。
STUTS: なるほど。あと英語って言っても、イギリスとアメリカでまたイントネーションも違うだろうし、Daichiくんの発音はなんとなくイギリス的な感じがするよね。
Daichi Yamamoto: ほんまですか、でも確かにイギリスの方が少し打楽器っぽいんですよね。
STUTS: それこそ全曲英語の曲とかをつくったりはしないの?
Daichi Yamamoto: もう消しちゃいましたけど、昔YouTubeにあげてましたね。『93 ‘Til Infinity』のトラックをまんま使いした曲だったんですが、なんか自分のラップださいなって思っちゃって(笑)。でもまたいつかチャレンジしたいし、海外でもレコーディングやライブはしたいですね。
STUTS: ぼくも4年近く前にLAで開催された「Low End Theory」っていうフェスに呼んでいただいて、初めて海外でちゃんとライブをさせてもらったんですけど、そのときのオーディエンスの反応や、現地の空気感がすごく良くて。日本とは違って、アーティストからの反応もめちゃくちゃスピーディで、滞在中に何本もライブの依頼をもらえて、凄く刺激的な数日間を過ごせたんです。手応えってほどでもないんですけど、海外でのライブはコロナが落ち着いたらいつかやってみたいなって気持ちはありますね。
Daichi Yamamoto: それこそイギリスとかで一緒にライブとかできたら最高ですよね。
STUTS: いつかやろうよ! Daichiくんとなら絶対に楽しいし、日本でもまたバンドセットとかでやりたいね。楽しみです。
Daichi Yamamoto: ぼくも楽しみです! 今日はSTUTSさんと久々にゆっくり話せてよかったです。ありがとうございました!
