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ÉQUATION PERSONNELLE with L’ECHOPPEメジャーセブンスを仕立てる方程式。

ÉQUATION PERSONNELLE with L’ECHOPPE
メジャーセブンスを仕立てる方程式。

90年代初頭、当時の服好きを魅了した〈エカッション パーソネル〉。ベイクルーズの立ち上げにも参画した元デザイナーにして写真家の森万恭さんの超絶的なディテールワークが施された伝説的なブランドが、「レショップ」にて復活しました。今回はデザインを手がけた森さんを筆頭に、リバイバルの仕掛け人である「レショップ」の金子さん、そして森さんがつくる服のファンを公言する服飾研究家の遠山周平さんを交え、〈エカッション パーソネル〉の成り立ちや、繊細な仕事が尽くされたディテールなどについて語っていただきました。三者の口からこぼれる金言の数々は、ファッションの楽しさを思い起こさせてくれます。

  • Photo_Yuki Kawashima
  • Text_Yasuyuki Ushijima
  • Edit_Shun Koda

section 0 違う時代を生きる3人がリンクしたブランド。

ー まずは皆さんの関係性というか、出会いについて教えてください。

遠山: ぼくが森さんとはじめてお会いしたのは編集者やデザイナーとして活躍した吉田十紀人さんとの“小オヤジの会”という会食でしたね。

金子: お会いされたのは、20年くらい前の話ですか?

遠山: おそらく1997年から98年ぐらいだったと思いますね……。

ー その頃、金子さんはもうアパレル業界にいらっしゃっいましたか?

金子: そうですね。ちょうど「エディフィス」に異動したての頃だったと思います。

森: ぼくもベイクルーズに出戻りして、12~3年はデザイナーとして仕事してたんだけど、金子くんとはちょっと時期は重なってたよね。

金子: 自分はいち販売員だったので、直接絡みはありませんでしたが……。

森: でも何回か話したことあったよね。金子くんが24歳ぐらいで、結婚して子供もいて偉いなぁと思ったのは覚えてる。

金子: そんな話をしてましたか、お恥ずかしい……(笑)。

ー 当時から森さんはベイクルーズでデザインを担当されていたんですか?

森万恭 / 写真家、服飾・インテリアデザイナー 1977年、ベイクルーズの立ち上げに参画。翌年、独立し数社のアドバイザー、パターンメイキング、オリジナルシャツ製作等を手掛ける。85年ベイクルーズに復帰し、デザイナー職とし〈エトフ〉、〈エカッション パーソネル〉を立ち上げる。その後、「エディフィス」、「ジャーナルスタンダード」等の立ち上げに参加し、97年退社。98年には株式会社ワールドと契約を結び、自身のブランド〈ドレステリア〉を立ち上げる。2016年の契約解消後は、主に写真家として活動する。

森: その頃はまだベイクルーズ本部でも卸しのウエイトが大きかったから。企画の人に教えながら、自分はメンズのデザインをしていた、という感じですね。

ー 遠山さんはその頃から森さんの服を実際に見てましたか?

遠山周平 / 服飾評論家 1951年、東京生まれ。 雑誌編集者、新聞記者を経て服飾評論家に。 豊富な経験と知識を元に、“自ら買って、試して、書く”を信条とする。 著書に『洒脱自在 おとなとしてシックに服とつきあう本』(中央公論新社)など。

遠山: そうですね。森さんって人間的に面白く、奥深い人だからそれを知ると、どんどんその人間性に惹かれて、森さんシンパになっていくんですよね。そこから森さんのつくる服の良さもわかっていく感じでした。今、自分のワードローブを見ると、7~8割が森さんがつくった服なんですよ。それぐらい好きですね。スーツやジャケットなどのテーラードもいいし、今回のフレンチサープラスっぽいカジュアルのデザインも自分好みですね。森さんは今、本業が写真家なのでアパレルの展示会とかに一緒に行くんですが、そこでも業界の方々が森さんに「あの服、まだ愛用してます!」なんて声をかけているんですよ。

森: 本当にありがたいことですね(笑)。

遠山: 今でも“名品”と謳われる森さんがつくった服を着ているからこその話なんですけど、森さんはファッション業界を引退して、ここ何年も服をデザインしてなかったから、森さんがつくる新しいデザインの服が着たいという欲求は常にありました。そしたら今回、金子さんが〈エカッション パーソネル〉を復活させてくれたので、本当に喜んじゃいましたよ(笑)。

ー 「渡りに舟」みたいな。

遠山: ぼくと同じように「待ってました!」って思っている人は多いんじゃないですかね。

ー 金子さんは森さんがつくった服を実際にリアルタイムで見ていたんですか。

金子恵治 / L’ÉCHOPPE コンセプター 1973年生まれ。セレクトショップ「エディフィス」でバイヤーを務めた後に独立し、2015年にセレクトショップ「レショップ」を青山に立ち上げた。20年7月「レショップ渋谷店」をオープン。今年、ディレクションを手がけた〈アウトドアプロダクツ〉のオンリーショップ「The Recreation Store」がオープンした。

金子: はい、見ていました。それこそ、ぼくがベイクルーズに入る前も〈エカッション パーソネル〉をセレクトしているショップがあって、当時よく通っていた吉祥寺の「ウエスタン」というお店に置いてありました。そこで20代前半の時に知って、買ってました。その後にたまたまふらっと寄った「エディフィス」で見て、『ここのオリジナル』ということを後からいろいろ知っていくことになるんですけど。

森: そういういきさつがあったんですね。ぼくも東京生まれなので、「ウエスタン」は中学の時から通ってたなぁ(笑)。「ウエスタン」は東京の中でもすごく重要なショップで、デニムやジーンズ販売のルーツみたいなお店なんですよ。そこの社長が〈リーバイス〉と、〈リー〉に精通しているから昭和からデニムやジーンズの文化を育ててきたお店なんですよ。

ー 金子さんは「ウエスタン」が、そういう歴史的なお店ということを知りながら通ってたんですか?

金子: まったく知らなかったです(笑)。2階でジーンズが売っていて、1階では〈セントジェームス〉を取り扱っていて、〈エカッション パーソネル〉も置いてあるみたいな。10代の後半から通っていましたが、よくわからないけど、感覚的にすごく素敵なお店なんだなっていう感じで、オーセンティックなものを知るきっかけになったお店ですね。

ー 森さんが〈エカッション パーソネル〉を立ち上げた当初は、どういうコンセプトやテーマを持っていたんですか?

森: そもそもテーマなんかないんですよ(笑)。ベイクルーズの今の代表取締役会長の窪田(祐)さんと知り合って、二人でベイクルーズを立ち上げるんだけど、その頃の日本はサーフファッションが全盛。ドメスティックでいえば〈東洋エンタープライズ〉が主流でした。だけど、自分たちは輸入モノが好きで。だからアメリカのものを探して横須賀とかに行ったりして、そこで手に入れた服を週末のパーティで着る……みたいな。そういうカルチャーにいた人間が国産の服をつくること自体がおかしいことなんですよ。

森: 当時はセレクトショップという言葉がないから“インポートショップ”と言われていました。いま以上に舶来品がかっこいいと思われていた時代なのに、窪田さんがオリジナルをつくりたいといって。当時はぼくしかデザインする人がいなかったけど、生地屋さんも知らないから、工場に直接行って、みたいな感じでした。日暮里に量り売りの花柄の生地を買いに行ったり、当時はリバティプリントのB品の生地が流れてくるので、それを買って、〈レインスプーナー〉みたいなシャツをつくっていました。ぼくも工業用ミシンで縫って、服を10~20着ぐらいつくり、当時できた「BEAMS」とか「ミウラ&サンズ(現:シップス)」に営業にいって、それを拡散させてきたんです。だから、正直、服をつくるのにコンセプトも何もなくて、当時流行っていた〈レインスプーナー〉や〈セルジオタッキーニ〉みたいな服をつくりたいという思いだけでしたね。

遠山: たぶんこれ以上言うと誤解を生みそうですね(笑)。

森: そうですか。ではそこは割愛して(笑)。で、そこから立ち上げて1年ちょっとでぼくはベイクルーズを離れることになるんですが、8年後にまた戻ってくるんです。ベイクルーズの最初のお店はウィメンズなんですけど、窪田さんはメンズのお店をやりたい思いが強くて。そこで渋谷の路地裏に小さなメンズのお店ができるんだけど、その頃にちょうどぼくがベイクルーズに戻ってきたんです。つい最近、その話を遠山さんとしたときに、遠山さんとは当時知り合ってなかったんですけど、その小さなお店で〈エカッション パーソネル〉ネームの商品を見てもらっていたようです。だから、ブランドの立ち上げ年度は平成元年だったというのが、遠山さんによって判明しました。

遠山: ぼくは、当時『日刊ゲンダイ』のタブロイド版の新聞に、1週間に2回、気になるお店に飛び込みで行って、好きな用品を紹介するコラムを書いてました。ある日、渋谷の道玄坂に「麗郷」という台湾料理屋さんがあって、あの通りに小さいけど、すごくいいお店があったんです。そのお店からはニットウェアを紹介したんですけど、それが何を隠そう〈エカッション パーソネル〉だったんです。だけど、その当時は森さんがデザインされているのは全然知らなかったわけ。それが掲載されたのが平成元年の8月16日だったんです。

一同: (資料を手に取りながら)へぇ~。

遠山: ブランドの立ち上げ当時は、森さんが言うようにコンセプトはなかったのかもしれませんが、当時からこのお歳になるまで森さんのつくるプロダクトは全然ブレてなくて一貫してるんです。フレンチサープラスをベースにしたプロダクトを頑固につくり続けている人なんだなぁと思いますね。

森: ぼくは服よりも文化というか、その服の背景にあるものが好きなんです。例えば、アランセーターを着ていた人の生活や背景が気になったり。要するにそこの生活に密接に関係していて、必然的に残っているものにはオーラがあるんです。それが古着なりなんなりで、現代に受け継がれている。だからファッションでもインテリアでも写真でもなんでも、温故知新で古いものに敬意を表して、それを自分のフィルターを通してプロダクトにするのが好きなんです。だから、誤解を恐れずにいうならば、服が好きなわけじゃない。

遠山: 森さんは人々の生活やそのなかにあるカルチャーを見ているから、デザインするときにブレないし、他のことをやっても軸がしっかりしている。写真を撮るときや、インテリアをデザインするときもそうで、根っこにある人間の豊かさやカッコよさという世界観を持っているからこそ、いろいろなことができるのにブレないんだと思います。そういう部分がぼくには羨ましいし、そこに憧れるクリエイターも多いと思いますね。

森: とにかく“コピー”が嫌いなんですよ。例えばフランスの古着でもコピーはいやで。でも自分がつくったプロダクトを初めて見た人が「こういうのもあったんだ!」と驚かせたいんです。古着にはないディテールだけど、さも昔から存在していたような理にかなったディテールだと思わせたい。

森: だから、そういう意味では服づくりも古典落語と一緒。古典落語は横丁の熊さん(熊五郎)、八さん(八五郎)が繰り広げる、超日常の話ばかりなんです。有名な「芝浜」も酒飲みの漁師と奥さんの間にあったことで、どこにでもある話。それは創作なわけだけど、みんなが聞いても違和感がない。なんでそれに魅了されるかというと、話口調に神が宿るから。当たり前の話をヒューマニティとか愛情とか怒りを含めて、噺家がみんなに聞かせるから聞き手は感動するわけです。服も同じ。同じものをつくってるけど、自己満足でコピーするものには全然興味がなくて。 今回のリバイバルでも、いかにも昔からあったかのような顔をしているけど全然違うものをつくっているんです。特にアパレルでデザインをやっている人は「(昔の服には)こういうディテールもあったのか」と思っちゃうのかもしれない。それがぼくが考える温故知新。古きをたずねて、それらに敬意を表して自分のフィルターを通してリプロダクトすることなんです。要するに写真の撮り方も、インテリアデザインも全部一緒だと思います。だからコンセプトや一貫性じゃなくて、背景が常に“人間の温かみ”とか“文化によって必然的に生まれたもの”が非常に尊くて愛おしいんです。

ー なるほど。いいお話ですね。金子さんもそういったプロダクトに魅了されて今回のリバイバルを企画されたんですか?

金子: ここ1年ぐらい森さんとお話しさせていただいて、ご自宅に伺って昔の服を見せていただいたりして、やっとこういうお話が聞けて、ちょっと感動しています。自分が「エディフィス」にいた頃とか、つい最近までそんなことはつゆとも知らずにいました。だからぼくは「こんなディテールもあったのか」と思っていたうちの一人なんです。完全に森さんに騙されていた……わけではないですけど、そう思わされていた(笑)。だからこそ、最近になってそのお話を聞いて、ますますファンになりました。今回リバイバルをお願いして、一番良かったのは森さんの本質の部分に触れられたことですね。

遠山: ぼくは自分でコラムを書くぐらい「レショップ」というお店が好きで、その「レショップ」を牽引する金子さんが、わざわざ森さんのところに会いに行って。それまで森さんはファッションに関しては休眠状態で、『二度とデザインはしない』なんてことを言っていたんですが、それを目覚めさせ、やる気を出させてくれたのは金子さんたちの力なんですよね。金子さんから今回のリバイバルの話をもらったとき、森さんはすごく嬉しそうにしてたんですよね。「実はレショップの金子くんが自宅に来て、昔作った服を『いいですね! すごいですね!』といってくれた」と実に楽しそうにぼくに話してくれたんですよ。

森: 本当にそんな喜んでくれるのかとびっくりしちゃって(笑)。

遠山: 今回リバイバルされたプロダクトを見てびっくりしたのが、当時のアイテムをアーカイブという感じで作っているんだけど、素材とかを乗せ換えて本当に今の時代の顔になっていたんです。M-47のカーゴパンツとかも「えっ? グログラン?」という攻め方をするのも森さんらしいし、「レショップ」が入ることでまた一段階完成度が上がった感じがしました。

section 1 無駄なものが何もない服。

ー 前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。そもそもどういう経緯で〈エカッション パーソネル〉をリバイバルさせようと思ったんですか?

金子: ぼくが「エディフィス」にいた頃、同僚で“タケポン”というスタッフがいて、「エディフィス」は辞めてしまったんですけど、森さんがつくっていた時代の「ドレステリア(DRESSTERIOR)」のスタッフに転職したんです。ある日、タケポンから電話があって、彼は森さんのつくるチノパンが好きらしく、森さんが「ドレステリア」から離れてそれが完全に手に入らなくなったけど、「もう一度穿きたいなぁ」と話していたんです。ぼくもそのチノパンは持っているけど、サイズも小さくて穿けないし、自分ももう一度欲しいなと思っていたんです。実はタケポンは森さんと家族ぐるみで交流があるみたいで、「よかったら今度一緒に森さんのところに行かない?」と誘われて。そのときには自分の中では、「じゃあ、森さんにもう一度チノパンをつくってもらおう」と密かに企んでいて(笑)。

森: そんなこと考えてたんだね。

金子: カメラとかファッションとかいろいろな話をして、もうファッションをやることはないというお話もされてたんですけど、すごく遠回しにチノパンをつくりたいと伝えました。「レショップ」もスタッフは20代が中心で、お店に来てくれるお客様も19歳から幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。なんとなく直感的に、森さんのつくる服が、今の若い世代に合う気がしたし、ファッションを知っている方にも、何か刺激を感じられるものがあるんじゃないかと思っていました。いつもそういう直感で仕事をしているんですけど、今回も何かを感じました。その間にも森さんにプレスの古明地を紹介したりして、古明地は森さんの服を見た時にぼく以上に喜んでいるんですよ(笑)。それをすぐそばから見ていて「あぁ、やっぱりそうだよな」と思いながら話を進めていきました。

遠山: 若い世代にも伝えていきたい服ですよね。

金子: 本当にそう思います。それで、お話している中で森さんのつくる服が、世の中のたくさんの人に伝わっていたかというとそうではなかったと感じました。どこのショップも規模が大きくなって店舗数が増えると客層は広がるけど、昔の顧客さんは行かなくなる傾向があるような気がしていて。だから本当に洋服が好きな人には、森さんのつくる洋服が届いてないと思ったんです。

森: そうなんですよ(笑)。

金子: 森さんもそう思われていて、意見は一致していました。ぼくは「レショップ」の話もさせてもらって、本当に洋服が好きなお客さんが多いと。そういう人たちに向けて森さんの洋服を届けたいですとはっきりお伝えしました。完全に引退された雰囲気だったんですけど、森さんをアパレルの世界に引き戻すなら、これをお伝えしないと失礼に当たるんじゃないかと思っていましたね。

森: ぼくは自分からファッションに終止符を打ったわけですけど、それと同時にこれで心置きなく写真に打ち込めるな、と思って写真をやるようになったんです。そこから数年後に、金子くんから今回の復刻の話をいただいて、素直に嬉しかったんだけど、お題がB.D.シャツとかチノパンとかで。「なんだ、定番ばっかりか……」とは思いましたけど(笑)

金子: つまらないテーマばかり出しましたね(笑)。

森: 「本当に普通のB.D.シャツでいいの?」って聞いたんだけど、「それでいい」と言ってて。でも今さら普通のB.D.シャツをつくっても、そんな振り幅の少ないアイテムでこちらの良さは出せないので、言われたものをベースに逆提案をどんどんしていったんですよ。「こういう型のほうがいいんじゃないの?」みたいな。そんななかで、金子くんが当初予定していたものに肉付けして、今回リバイバルするプロダクトが完成しました。どうせつくるなら楽しくないとつまらないし、ワクワクしないと自分の動力源にならない。「これが完成したら、またみんなディテールを勘違いしちゃうだろうな」と悪巧みをするみたいに。だからすごく楽しかったですね。そういえば金子くんもはじめてデザインソースを聞いたといってたけど、これまで言ってなかったよね。

金子: 知らなかったですね。意外と当時「エディフィス」にいた人も知らないんじゃないですかね。

森: 人に言うことでもないし、言ったってわからないし面倒くさいんですよね(笑)。

一同: (笑)。

金子: 森さんのことってみんなそれぞれの勝手な解釈があって、ある人は「こだわりの強い人だ」と言ったり、ある人は「フレンチといえば森さん」みたいな人もいたり。いろいろな妄想が一人歩きしていて、ぼくもそのうちの一人だったんです。いろいろな方向から“森さん像”を聞いてきて、「エディフィス」は森さんがつくったお店だから、こうでなければならない、みたいな。ある種、神話めいたものがいまだに続いていて。だから森さんのお話を直接聞いて、不思議な感覚でしたね。森さんの根っこにある“古典落語”みたいなことにぼくらは翻弄されて、今まで20年ぐらい“エディフィスの本質とは……”というものを追いかけながら働いていましたね。

森: こういう話って、流れがあるからやっと話せて、ちゃんと伝わっていくけど、それをいきなり説明しようとしても無理なんですよ。語る機会もないし、ただファッションが好きな人にこんな話しても分からないだろうし。やはり正しい入り口のドアを一つ用意しておかないと、その次に来る人が入れないと思うんです。

ー これは森さんの本質が聞けて、実像がつかめるかもしれない、絶好の機会ですね。

金子: 森さんがつくっていた「ドレステリア」が好きな人はもちろん、当時の〈エカッション パーソネル〉が好きだった人にも是非読んでほしいですね(笑)。あとから答えを知るのも面白いですよね、答え合わせじゃないけど。この記事を読んで、「そうか、そういうことだったんだって」より愛着がわく人もいるだろうし。

遠山: 今回の服も本当に森さんの人柄が表れてますよね。どのアイテムも作業着がベースなんだけど、決して作業着には見えない。かといって、そこらにあるファッションアイテムとは一線を画している。なんとも絶妙な心地よさがあってそれがいい感じなんですよ。オシャレ過ぎないけどもワークっぽくもない。この塩梅はどこにあるのか、森さんから聞きたいですね。

森: じゃあ、こだわりを語ってもいいですか?

ー 是非聞かせてください!

森: 月並みなんですが、一番気を付けたのは、着やすさと動きやすさです。モデリングパターンで最も研究したのがその部分で。

ー 本当に服として基本的なところですよね。

森: だから無駄なデザインとかディテールは全くいらなくて。そもそもぼくはデザインとは何かをあまりわかってません。よく機能美とか言いますよね、それもよくわからない。要は作業着としても着られるし、街でおしゃれに見える。そして動きやすくて無駄なものが何もない。ただ、それだけなんですよ、すべてが。昔の仕事着や労働着のディテールは、今と昔の生活様式が違うから全部が全部、解明しているわけではないんですよ。もちろんぼくもわからないし、わからなくて必要ないものはいらない。逆に現代に必要な部分をうまく昇華させたほうが、服としての価値や完成度が上がると思うんです。そこがすごく大事。だから理由があるディテールをちゃんとつくっているつもりです。何度も言うけどファッションが好きなわけではなくて、つくることが好きなんですよ。

section 2 KMTKループ。架空の仕様。世界初のディテール。

ー 今回、〈エカッション パーソネル〉をリバイバルさせて、出来あがってきたアイテムを見て金子さんはどう思いましたか?

金子: 当初描いていた青写真とは全然違いましたね(笑)。もっとベーシックな森さんの普段着みたいなのを想定していました。こういう状況下なので、オンラインでミーティングをさせてもらっていて、「レショップ」からは5人ぐらいが参加していたんです。こちらのロードマップに沿いながら森さんからいろいろアイデアをいただいて、一同が「いいですね! そうしましょう!」みたいな雰囲気で進んでいきました。毎回、ぼくたちにとっては斬新なアイデアを出してくれるんですが、森さんは時折、ジョークも交えてくるんです。驚きと爆笑が繰り返される企画会議はいままで味わったことがなくて、とても新鮮でした(笑)。そのなかでも“KMTKループ”は大爆笑でしたね。

森: 某有名アイドルにかけて、その名前を付けたんですよ。その人はそんなに背が高くなくて、スタイリストが持って来る服もサイズが合いづらい。基本的にパンツにトップスはタックインしないのがスタイルなんだけど、たまに丈が長いトップスもあるんですよ。彼はそれをポケットに手を入れて、さりげなく丈感を調節しているんです。その感じを最初からB.D.シャツで再現したディテールが“KMTKループ”なんですよ。

一同: なるほど(笑)。

森: 今の時代のファッションからすれば、着丈やサイジングは長くて大きくなっているけど、そもそもずっとそれが続くわけじゃないですよね。小柄な人や女性がこれを着た時にどうしても丈が長い時に使えるんですよね。

ー 撮影前にこのディテールを拝見していて、これはどういう細工なんだろうと想像していたんですが、まさかそんなネーミングが付けられていたとは……(笑)。

森: そうなんです。少しニュアンスが付けられる機能なんですよ。

金子: バランスよく見えるんですよね。冷静に聞いてたら、なんだろうと思うディテールもあまりにも説得力があって、即採用になるんです。

ー B.D.シャツのフロントのスソの部分の合わせも、独特ですよね。

森: これは世界初のディテールです(笑)。

金子: これはみんな騙されたディテールです。「これは1900年初頭のシャツにあったディテールだな」とか思ってしまう佇まいですよね。実際、こんなディテールは今までなかったんですけど(笑)。

森: フロントにあるラウンドの合わせは、昔のシャツは袖が長くてダンディーに見せなきゃいけないので、タックインした時に生地を重ねて摩擦を多くして、シャツの裾がずり上がらないようにしていたんです。それに近いディテールですが、ぼくが30年以上前から使っていた手法なんです。それを時代ごとに改良していって、10年前ぐらいに完成させたもの。金子くんは普通のB.D.シャツを望んでいたんだけど、「レショップ」は服好きが集まるショップと聞いていたので、だったらこれを採用しようという感じで、やる気が沸々と湧いてきたんです。

遠山: 服づくりに火が点いた瞬間ですね(笑)。

ー 他のアイテムもディテールが気になるところがたくさんありますね。金子さんがB.D.シャツ以外で気になったものはありますか。

金子: 今日、ぼくが着ているオールインワンですね。森さんがつくったアーカイブのオールインワンを見させていただいて、絶対今回も復刻してほしいとお願いしたアイテムです。ウエスト部分を見るとセットアップで着ているようにも見えるんですが、完全にくっついているオールインワンなんです。

森: ツナギというのは、車の修理をしたりする人が着る作業着として、いろいろなところで見ますが、要するに上から着るオーバーサイズな作業着なんですよ。でもツナギというよりオールインワンという欧米的な発想でいくとすべてをひとつで、となります。ぼくは上下、同じ素材で着るのが好きなんです。あるときに上下別々で着ているように見えるオールインワンをつくろうと思って、今回のプロダクトの原型を作ったんですよ。これも世界初のディテールが散りばめられています。

遠山: オールインワンに、またしても世界初が……(笑)。

森: ツナギは重力でパンツ部分が下がってしまいます。でもベルトで調整すれば、腰でブラウジングできるんですけど、ちょっと不自然な形になってしまう。だからブラウジング分を横のタックに入れているんです。しかもフロントは逆の方向にタックを入れて、ゆがみ空間をつくることでゆとりをもたせているんです。ツナギのウィークポイントは屈伸することなんです。背丈を伸ばせば、重力で股上が深くなる。腰の部分で止まって屈伸するには、トップスの部分を伸ばさなくてはいけない。このタックはそれにも役立っているんですよ。最初からギャザーを入れてつなげることで、上下のブラウジングとか、ゆとりが出るようにつくられています。

森: アームホールにも月型のマチを取っているんですが、腕を上げた時の可動域を広げてくれるので、つり革につかまっても身頃が極力引っ張られない。動きやすさの集大成で、それらが全部一緒になったときに芸術家に見えるように仕上げたところが大事なんですよ。

遠山: だから商品名を“ペイントレ(画家)”にしてるんですね。そのネーミングからフランスのモンマルトルにある「洗濯船」というアパートに若い芸術家が集まって、20世紀のはじめにキュビズムを生み出した画家たちがいたんだけど、そういう人たちが着るツナギをイメージしてるんじゃないかな、って思いました。

ー 遠山さんは今回のリバイバルで気になったアイテムはありますか。

遠山: ぼくが欲しいと思ったのは、グログランのカーゴパンツとオールインワンですね。実はオールインワンは広告用に森さんの撮影で試着させてもらったんですけど、心地よくて脱ぎたくなくなっちゃうぐらい(笑)。カーゴパンツもアメリカ的なカーゴではないんですよ。ポケットの辺りのフィット感もすごくきれい。

金子: 森さんは普段からカーゴパンツをよく穿かれていて、お会いした時にも何度か穿かれていることがありました。その姿がめちゃくちゃカッコよくて、是非、そのカーゴパンツも商品化をお願いしますと依頼しました。みんなこの手のものをつくりますけど、森さんがつくると全然違うんですよ。ちなみにB.D.シャツは〈コモリ〉のデザイナーの小森さんから「森さんは世界一のB.D.シャツをつくる」と聞いていたので、実現してもらいました。

ー B.D.シャツは何をもって世界一なんですか?

金子: 自分も「エディフィス」の頃から、コーデュロイのB.D.シャツを着ていましたが、とにかく着心地がいいんですよね。

森: B.Dシャツにはいろいろ秘密があるんですよ。要するに、料理人がなんでこういう味になるのかを細かく説明することがすごく大変なのと一緒で、細かい秘訣がいっぱいあるんです。

金子: 襟先も少し開いているかなとか、少し襟が高いなとか、あのブランドよりも少し身幅が大きいかな……とか、漠然とした表現しかできないんですよ。でもそういうことだけでもないようで。

森: これはパターンを引く人にしかわからないと思います。パターンを引く人の思考がどうなっているかわかる人も少ないですよね。デザイナーでもパターンを引ける人は少ないので。だからデザインする人が型紙を引けると、いろんな部分に気づきがあって細工ができていくんです。

金子: 正直言うと、パターンナーさんが大変そうです(笑)。もちろん工場の方たちも相当大変だったみたいです。

森: そうなんだ(笑)。

遠山: このB.D.シャツには森さんらしさが凝縮されていますね。

金子: ぼくもそう思います。最初に着ていただきたいのはB.D.シャツですね。

section 3 日本の服は背中が隙だらけ。

ー 今回のリバイバルされたアイテムを見させていただきましたが、一見するとシンプルなのに、着てみてそのすごみがわかる、試着室で驚きがあるアイテムですよね。細部をまじまじと見ていて、私自身もどれが昔からあったディテールで、どこが新しいディテールなのかあやふやになりました。

森: そう言ってもらえて嬉しいですね。もうひとつ、こだわりを言ってもいいですか?

金子: もちろんです。

森: 他人に言うのはどうかと思ったんですけど、今日は楽しくなっちゃったので話します(笑)。シャツの袖のパターンは線の繋がり上、どうしても袖山の中心からカフス付け部分までの距離が足りなくなってしまうんですけど、その距離を長くする工夫をしています。この考え方はもちろん、ジャケットなどにも盛り込んでいて、それにより通常の立ち姿が綺麗に見えます。そういった目に見えない細やかさをとにかく詰め込んでいることも知ってほしいですね。

遠山: 森さんがつくるジャケットは、後姿が本当にきれいなんですよ。普通のジャケットよりも背の身頃を多く取っていて、しかもウエストで絞っているから立ち姿が本当にカッコイイんです。ぼくはイタリアンクラシコのスーツが好きなんですが、欠点として後姿があまりカッコよくないことが挙げられます。でも森さんがつくる、三つボタンの段返りは前も後ろもキレイなんですよ。

森: “デキる男は背中で語る”ということです(笑)。普段、後姿は鏡でしか見れないから、人が評価したものを聞くしかないんです。それぐらい、日本の服は背中が隙だらけ。パンツのヒップの部分も同じことが言えます。

金子: 話を聞くと気づきばかりです(笑)。

森: 普段、そういうことしか考えてないですからね

金子: ディテールもそうなんですが、グログランでカーゴパンツをつくるのも新鮮でした。

遠山: 確かに。

森: あとは色にもこだわりました。カーゴパンツはセージグリーンとかのカラーが多くなりますが、チャコールはないので、いいですよ。

遠山: 森さんはチャコール好きですよね。

森: チャコール好きですね~(笑)。グレーとチャコールが大好きなんですよ。

金子: これから出てくるスエットやカットソーにも、チャコールのアイテムがあります。その名もスーパーチャコール。この名前だけでこだわりが伝わりますよね。

ー 服のデザインから少し距離を置いていたのが信じられないほど、哲学というかご自身の軸がしっかりとされてらっしゃいますね。

森: ぼくは絵型を描くのが大嫌いで。4年も服から離れていたので、服の特長を人に伝える時点で、細かい絵を描いてパタンナーに伝えなければなりません。それが面倒くさくて、イヤだなぁと思っていたんですよ。でもAmazonでトレース台を買って絵型を描いたら、すごくラクで(笑)。パターンを引いている人は、自分の知っていることをすべて伝えて、右腕のような存在だったんですけど、そのパターンナーに「森さんの4年間はブランクではなくて、充電期間だったんですね」と言われて、テンションが上がりました。パタンナーも、こういう細かい絵型が来ると嬉しいんじゃないですかね。

ー 4年間の休止を経て、森さんは今、創作意欲がかなり湧いてきている状態ですね。

金子: ぼくらがその意欲を受け止めきれないでいる状況ですが、なんとかカタチにしていきたいですね。ぼくらがお願いをすれば、森さんは5倍ぐらいにして返してくれるので、どうやってこちらの体制をどう整えるか模索中です(笑)

森: この「レショップ」に来る服好きの人たちがリバイバルした〈エカッション パーソネル〉をどう見てくれるのか楽しみではありますね。

ー ジャケットにもこだわりがありそうですね。

森: そうですね。これはフロントがラウンドしていて前下がりを付けない仕様になっています。これがフランス式なんですよ。

ー なるほど。

森: この袖のルーツはぼくが小さい頃に見た「旅のお供の日本食堂」というお弁当屋さんが着ていた白の制服です。

金子: これがジョークなのか、本気なのかわからない所以です(笑)。

森: 夏の新幹線の車掌さんがいつもリネンの等分二枚袖のジャケットを着ていましたが、どちらかというとワークジャケットっぽいディテールがポイントなんです。ラペルを立てて着ることもできて、設定は建築家か日本の料理学校の校長。

一同: (笑)。

森: でも背中から見ると全然違うので、そこで差別化を図っているんですよ。これをセットアップで着るとかっこいいですよね。服は着る人が昇華しないと何の意味もないものですから。

金子: このリネンは良かったですよね。

森: このリネンを見つけた時はすごく感動しましたね。リネンは不思議な素材で通気性は良いし、保温力もあるので冬に着てもいいんですよ。中国にはリネンの毛布もあるぐらい。以前つくったときは、3シーズン着ていましたね。

金子: あまり気を使わなくてもいいのがリネンの良さでもありますね。適当でいいというか。

遠山: この柔らかなシワ感もいいですよね。

森: クタクタにしてガンガン着てほしいですね。服は4年間買ってませんでしたが、今回つくった服であと10年ぐらいは持ちそうです(笑)。

金子: 森さんは昔から生地をつくりこまずに、世の中にあるものを使いますよね。

森: 昔は生地もつくっていたんですよ。それで生地惚れしていったんです。ただあるとき、独りよがりでどんどん上代が高くなっていったことに気づきました。逆に言えば、自分が服を買う時に生地に着目して買っているかというとそうではない。やはりデザインとか色とかで選んでいる……そう思った時に、生地をつくり込むのをやめました。テーラードは海外の生地を買っていましたが、カジュアルなものはよっぽどのことがなければ、つくりこまずに既存のモノを選ぶようにしていました。要するに、冷蔵庫の中にあるものでおいしいものを作る奥さんみたいな感じですよね。その方が価値が高いと思います。

遠山: 〈エカッション パーソネル〉の時代にキャバリーツイルのPコートを見たことがあって。Pコートは普通、メルトンやウールですけど、森さんのは違っていて、確かコットンとウールのツイルだったと思うんですけど……。

森: 遠山さん、よく知ってますね(笑)。

遠山: だってファンだもの(笑)。ウールに麻を混ぜたり、そういうことをよくやってましたよね。そこで着込んでいくうちに出てくる味を大切にしていた気がします。

金子: 森さんは以前から生地屋さんの生地を使っているけど、そうは見えないんですよ。チョイスの仕方や編集方法はまさにお手本。何でもつくればいいということではないし、簡単にオリジナリティを出す方法もあるけど、決してそうではないところがいいんですよ。

森: いい生地がいい服になるわけではないんですよ。

金子: 本当にそうですね。

遠山: つくり込む時代を通過したからこそ辿り着いた普遍の境地ですよね。

森: 服を選ぶときはいい生地じゃなくて、いいカタチだったり、これは長く着るなと思うものですからね。

section 4 メジャーセブンスを仕立てる方程式。

ー はやく第2弾のスエットやカットソーが見たいですが、今後の展開はどうなっていきそうですか?

森: スエットも世界初のディテールです(笑)。でも言われてみれば……というディテールでスエットにはそれがなかっただけで、それがしっかり機能しているし、視覚的にもバランスの取れたものになっているので楽しみにしておいてほしいですね

金子: いやぁ、ワクワクしますよね。

森: そのワクワクが大事なんですよ。なんでもワクワクしないとダメなんですよね。

ー 今更なんですが……〈エカッション パーソネル〉の由来を教えてください。

森: その質問いまかいまかと待ちわびてました。本来なら読みはPERSONAL EQUATION(パーソナル エカッション)=個人の方程式 となるんですけど、それをフランス読みにして語呂を良くしただけなんです。要するに“個人主義”なんですよ。

遠山: 森さんの服づくりのルーツはフランスにあるのかなと思ってたんですが、実はそうじゃないのかなと気づいたことがあって。これは戦後にフランスのファッションがどうやって日本に入ってきたかを勉強していたときに読んだ本なんですけど、この流れの中に森さんはいないんですよ。一番最初にCardin(カルダン)というデザイナーが登場し、レノマやサンローラン・リブゴーシュが続いたんだけど、その辺りに高田賢三さんがパリに居て「デラックス・平凡パンチ」の付録の小雑誌でレポートしていたんです。「こんな服がパリでは流行ってます」という感じで。そこで紹介されたのが“サンジェルマンルック”というスタイル。

森: 本当にカッコイイですよね、サンジェルマンルック。

遠山: これがパリのストリートの人たちがどんな服を着ているのかをはじめて紹介した本ですね。そのあとに、「(エミスフェール)HEMISPHERES」とか「ハリス(Harriss)」というショップが登場して、英国っぽい「オールド イングランド(OLD ENGLAND)」が出てきて、その流れでB.C.B.G.(ベーセーベージェー=パリの上流階級的な、シックで趣味のいいファッションスタイル)が出てきたり、FDGE(エフデジェ=フランス版ヤッピー)みたいなスタイルが出てくるんですよ。

遠山: 森さんはそういうメジャーな流れではないんですよね。森さんがよく言うのは“メジャーなんだけどセブンスが入っている”ということなんです。だからちょっとヒネられているんですよ。

森: シークレットコンセプトは“メジャーセブンス”なんです。だから写真もファッションもインテリアも、メジャーではなくてセブンスが入ることで心地よくなるんです。だけど、マイナーセブンスじゃダメなんですよ。

遠山: フランス風俗史をはしょって説明しましたけれど、根底にはそういう流れがあるんですね、森さんのつくる服は。

ー これまで話を聞いてきて、納得できた部分も多かったですけど、“メジャーセブンス”と聞いていろいろと腑に落ちた感じがありますね。

森: フランスのファッションって生活から遠くないところにあるんです。イタリアのファッションはモードに近いし、もちろんフランスもモードに近いところはあるんですけど。先ほど出てきた『B.C.B.G.』や『FDGE』も生活に近いところから出てきている。そのなかで自分が経験してきたのは60年代のサンジェルマンデュプレのファッションなんです。それがすごくカッコよかった。だからいまでもそういうスタイルをしたいんです。そういう思いを込めたのが〈エカッション パーソネル〉です。

INFORMATION

ÉQUATION PERSONNELLE

発売:発売中
場所:レショップ青山店
住所:東京都港区南青山3-17-3 1F
電話:03-5413-4714
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