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FEATURE / PREMIUM

Garage's The Outdoor Journal

# 001
HUGE COMPLEX
in MIE PREF.

ヴィソンという町であり国。
訪れたものを圧倒する
あらゆる文化が集結した
三ツ星な複合施設。

コロナ禍になってからこっち、とにかくアウトドア的なあれやこれやが流行っているわけですが、
それらをフイナム的にヒップな視点で切り取っていくのが
本連載「Garage’s(ガレージーズ)」。決してハイプな視点ではないのであしからず。
ナビゲーターには、スタイリストでありながらそれにとどまらない幅広いアウトドアワークを手がけ、
近年活躍の場をとみに広げている平健一さんを迎えます。
初回は三重にできたとんでもない施設に遊びに行ってきました。

Photo_ Takuma Utoo
Text_ Keisuke Kimura
Edit_ Ryo Komuta

第1章 VISONについて

東京ドーム24個分という大きさを誇る
複合施設「ヴィソン(VISON)」。
複合施設というよりは“ひとつの町”という感じ。
それほどに巨大なのです。

この写真を見ても分かるかと思いますが、とにかく広大!
敷地内にはホテルがあり、レストランがあって、ショップもあればギャラリーもある。
あと、温泉と畑もあるし、エデュケーション用の施設もあったりします。

けれど、ただ広いだけの施設ではないんです。
「ヴィソン」が注目される理由は、テナントひとつひとつのクオリティ。
ミシュランシェフが監修するレストランや、
全国にも数店舗しか出店していないカリスマショップが集まっているんです。
大型のショッピングセンターとはわけが違います。

「ヴィソン」は大きく分けて9つのエリアで構成されています。
ひとつひとつのエリアにコンセプトがあり、
その小さな集合体が「ヴィソン」を形成しています。
テナントの数は70以上(テナントにカウントできない見どころも多数あり)。

7月にオープンはしたものの、本当の意味での完成はまだまだ先。
将来、この施設内で自動運転のクルマが走り、
ドローンが飛び交い、ここでしか使えない地域通貨を発行し、
完全なスマートシティになる予定なのです。

  • 01

    HOTEL

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    HOTEL

    城塞のように佇む
    巨大な宿。

    「ヴィソン」を訪れると、南の山の斜面にど迫力で佇む建物があります。それが宿泊施設「ホテル ヴィソン」。“野に遊び、野に学べ”というコンセプトの通り、6棟のヴィラと155室の客室は、どこも木のぬくもりが感じられ、部屋ほどの大きさがあるプライベートテラスから周囲の大自然をダイレクトに感じることができます。ホテル棟の隣には、三重大学とロート製薬が開発した、72種類の薬草湯が楽しめる温泉もあり。

  • 02

    STORES

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    STORES

    土地のものも、
    瀟洒なものも。

    ショップの数は、大小含めて40以上。三重の食材や工芸品が売られているお店から、〈ミナ ペルホネン〉や「くるみの木 暮らしの参考室」といった、全国に熱狂的なファンを持つショップも出店しています。カリスマ陶芸家の内田鋼一さんが監修したミュージアム&ギャラリー「KATACHI museum」もぜひ訪れて欲しい場所のひとつ。しかも、一つひとつのお店がとにかく大きいんです。しっかり見て回るなら、大げさではなく、1日じゃあ時間が足りない。

  • 03

    MARCHE

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    MARCHE

    採れたて野菜と魚介類、
    そして松坂牛。

    ここには、日本最大級のマルシェ(産直市場)もあります。マルシェのエリアを監修したのは、フランス・パリでミシュラン1つ星を獲得したことがある手島竜司さん。地元の野菜や果物はもちろん、伊勢志摩から直送される伊勢えびやあわびも販売しているし、三重と言えば、な松坂牛専門店もあり。マルシェに隣接するようにしてBBQコンロがあり、マルシェで買った食材を、その場で焼いて食べることもできちゃいます。

  • 04

    RESTAURANT

    04

    RESTAURANT

    都内にあったら、
    どこも予約困難店レベル。

    カジュアルな立ち飲みから格式高いレストランまで、「ヴィソン」には幅広いジャンルのレストランが揃います。しかも、“超”が付く一流シェフが監修するレストランも少なくない。なかでも「サンセバスチャン通り」と名付けられたエリアにあるレストランは、本場スペインのサンセバスチャンにも店舗を構えるお店が出店しています。シエスタの時間に、ピンチョスをつまみにワインをひっかけて、散策を再開するなんて最高じゃあないですか。

  • 04

    RESTAURANT

    04

    RESTAURANT

    都内にあったら、
    どこも予約困難店レベル。

    カジュアルな立ち飲みから格式高いレストランまで、「ヴィソン」には幅広いジャンルのレストランが揃います。しかも、“超”が付く一流シェフが監修するレストランも少なくない。なかでも「サンセバスチャン通り」と名付けられたエリアにあるレストランは、本場スペインのサンセバスチャンにも店舗を構えるお店が出店しています。シエスタの時間に、ピンチョスをつまみにワインをひっかけて、散策を再開するなんて最高じゃあないですか。

第2章 Orangeの革新性

「ヴィソン」のテナントは、どこもミニマルで、無駄がなく、洗練されたお店ばかり。
そのなかで唯一、ゴチャゴチャで、ワイルドで、とてもじゃないけど見やすいとは言えないショップがあります。
アウトドアショップの「オレンジ(Orange)」です。そしてここが、今回の取材のメイン。

和歌山県かつらぎ町に本店を構える「オレンジ」はいま、キャンパーたちの聖地になりつつあります。
人口1万7000人の町に、年間何十万人もの人が「オレンジ」目当てで訪れるのです。
そこでしか買えないものがたくさんあり、希少なガレージブランドのアイテムも、そこでは何故か、販売されている。
そんなカリスマアウトドアショップが「ヴィソン」にどんなお店を作ったのか、
代表の池田道夫さんに話しを聞きました。

オレンジがキャンパーを
熱狂させる理由。

Interview by Michio Ikeda.

オレンジ代表池田道夫さん

Profile

1971年生まれ。20代の頃に和歌山県かつらぎ町にサーフボードショップをオープン。そして2000年、「オレンジ」の1号店をサーフボードショップの跡地にオープンさせる。現在は「ヴィソン」を含め全国6店舗にまで拡大。ヴィンテージのアウトドアギアも多数コレクションしており、その数は業界随一と言われる。

ーまずはオープン、おめでとうございます。

池田:いやー、たいへんでしたね(笑)。

ー出店に関しては、誰かからオファーがあったんでしょうか?

池田:三重県に「アクアイグニス」という複合温泉施設があって、実は「ヴィソン」の運営もそこがやっているんですけど、その「アクアイグニス」の社長さんからお話をいただいたんです。当初は出店するなんて考えていなかったんですけどね。

ーなぜ、出店に至ったんですか?

池田:社長さんから「アクアイグニス」に一度、遊びにきてくれと言われて訪ねたんです。そしたら、パティシエの辻口博啓さんとか和食の笠原将弘さんがプロデュースする店があったり、温泉も宿も有名なクリエイターさんたちが手がけていて、とにかくどこを切り取っても感度が高くて。「アクアイグニス」がある場所はもともと寂れた場所だったんですけど、「アクアイグニス」のおかげで、その町に毎年100万人が訪れるようになったと。「オレンジ」の本店があるかつらぎ町も、アウトドアで町興しをしたいと思っているし、そういう繋がりも感じて出店を決めました。

他のセレクトショップでは見ることができないラインナップ
他のセレクトショップでは見ることができないラインナップ
他のセレクトショップでは見ることができないラインナップ

ー「オレンジ」の名前もここ2、3年でもう、全国区ですね。

池田:ありがとうございます。ただ、全然ブレイクしたとは思ってないです。まだまだですね。

ー(オープン当日も)大行列ができていましたが、ここまで人気になった理由は、なんなのでしょうか?

池田:とにかく、何より大事にしているのは、来てくれたお客さんに「また来たい」と思ってもらうことなんです。商品を一生懸命売るということはせずに、お客さんをいかに喜ばせられるかに情熱をかけています。たくさんお客さんが来てくれるのも、その積み重ねなんじゃないかと思います。店内のレイアウトを決めるときも、とにかくお客さんがワクワクしてくれるような店づくりを目指していますしね。

ーとにかく商品が多くて、いい意味でごちゃごちゃしてます。

池田:宝探しみたいで面白いでしょ(笑)。それは意識している部分ではあります。

ー他店舗との違いはありますか?

池田:「ヴィソン」はスマートインターチェンジが直結している日本初の施設なんです。年間800万人がくる予定らしくて。だから「オレンジ」目当てじゃない人もたくさん来ると思うので、そういう人にも喜んでもらえる店にしたつもりです。
入口がふたつあるんですけど、メインの入口は間口を広げて、ライフスタイル系の雑貨が多いエリア。そこから奥に進めば進むほど、コアなアウトドア用品になっていくという感じです。逆に、別の入口からくると、ハードなテントや椅子なんかがいきなり待ち構えていて、奥へ行けば行くほどライフスタイルに寄っていくという。コアなキャンパーも初心者の方も、楽しんでもらえると思います。

ートピックでいえば、日本初となる〈ペンドルトン〉のショップインショップが入っていますよね。

池田:そうですね。あと、ペット用品が好きなので、〈ペンドルトン〉のアイテムもペット用のベッドとかも置いています。大きいクッションとかも。ここは店舗の面積も広いから、こういう大きなアイテムも置けちゃうんですよね。

ーいまのキャンプブームは、どう見ていますか?

池田:急に落ちることはないと思うんです。だけど、ここまでの熱ではなくなる日が来る。なので、人がたくさん来てくれているいまだからこそ、お客さん一人ひとりを大切にしなきゃとは思っています。お客さんがありがとう、楽しかったって思って帰ってくれたらOKだし、そうすることでコアなファンの方が、辛い時期が来たとしても、お店に来てくれると思っています。

あと、ぼくたちはいろんなSを大事にしてるんです。“S”mileだったり、“S”uperだったり、“S”urpriseだったり。それを全部集めていったら、最終的に「“S”old Out」になってるよって、いつも言うてるんです(笑)。

第3章 平健一が
太鼓判を押したギア。

アウトドアスタイリストとして雑誌や広告で活躍し、
自身でアウトドアショップ
「平屋」も運営する平健一さん。
これまで、何千何万というギアを見てきて、
あらゆるショップを巡った平さんは、
何故こんなにも
「オレンジ」に惹かれているのでしょうか。

平さんが思う「オレンジ」のすごさってなんですか?

平:まずはモノの多さですよね。
ここまでの物量って、ほかの店舗だとありえない。
店に入った瞬間、いつも物量に圧倒されます。
あと、ここに来ると、必ず掘り出しものが見つかるんです。

新しい発見が必ずある。
だから、いつも宝探しみたいな気分になる。
店を出るときに、何かしら買っちゃってるんですよ(笑)。

ほかのショップでは買えないギアが、たくさん置いてある印象もあります。

平:いまのキャンプブームで、どこのメーカーも本当に在庫がないんです。
それなのに、ここまでアイテムが揃うのは、代表の池田さんがギアを知り尽くしてるからだし、
メーカーの人たちに信頼されているからだと思います。

〈ゼインアーツ〉のテントなんてどこも買えないのに、販売されてましたしね(取材時)。

平:〈ゼインアーツ〉はいまやとても有名ですが、まだブランドが立ち上がったばかりのとき、
代表の池田さんが〈ゼインアーツ〉の方が引くくらいの数をオーダーしたらしいんです。
それをすぐ完売させちゃったらしいんです。
〈ゼインアーツ〉以外のメーカーともそういう積み重ねがあるから、
「オレンジ」にはアイテムが集まると思うんです。

なるほど。ちなみに、平さんがギアを選ぶ基準はなんですか?

平:やっぱり見た目。自分が持っていて気分が上がるものです。
重さとかもあまり気にしないですかね。
次にタフさ。やっぱりアウトドアという環境で使うので、頑丈さは大事ですよね。

それでは、実際に平さんが「オレンジ」で見つけたアイテムの紹介をお願いします!

ORANGE × OMNI

「このバーナーはとにかくあったかいです。実際に灯油を入れて使うので、火力が全然違う。冬キャンプにマストです。しかも天板の上で、お湯を沸かしたり軽い料理もできます。そしてこのカラーは『オレンジ』の別注です」¥59,800

MIKAN

「〈ミカン〉は『オレンジ』のプライベートブランドなんですけど、これ1台で焚き火台、グリル、薪ストーブ、風防、トライポッドと、5通りの使い方ができるんです。こんなに汎用性が高い焚き火台って、ほかにないと思うんです」¥17,900

BAREBONES

「これもいま大人気ですよね。いちばんの特徴は、なんといっても価格です。切れ味がよくて、タフで、デザインもいいのに、1万円アンダーですからね。コスパは抜群だと思います。見つけたら、間違いなく買いです」¥7,700

THERMOS

「350mlの缶がすっぽり入って温度をキープしてくれるので、これにビールの缶を入れておけば、ずっと冷えたままなんです。ちなみに500mlのものもあります。かゆいところに手が届く小物は、キャンプの質を上げてくれるわけですね」¥2,750

GRIP SWANY × Orange

「1度作ったら即完で、そこからまた追加生産された大人気のグローブです。〈グリップスワニー〉といえばイエローですけど『オレンジ』の別注はレッド。牛革だから本当に頑丈だし、厚みもちょうどよくて初心者の方にもおすすめです」¥3,850

4w1h

「ホットサンドって普通はパンを2枚使いますけど、これは1枚でホットサンドが作れます。このサイズが本当にちょうどいい。アイデア勝ちですよね。燕三条で作られているので、品質もばっちり」¥4,950

Peregrine Furniture

「ペレグリンさんのものは結構好きで、テーブルなんかも持っています。どのアイテムもデザインが秀逸。ハンギングチェーンはテントやタープに張れば色々引っ掛けられるし、意外と車内や家でも使えるんです」¥3,960

第4章 VISONで
気になる場所、乗り物。

本当に、1日じゃ
すべてを回りきることができないんです、
広すぎて。
しっかり見るなら最低1泊2日は必要です。
今回は、東京ドーム20個分くらいのなかから、
気になる場所を4つ、セレクトしてみました。

  • HOTEL VISON

    遠くからわざわざ「ヴィソン」に来たのなら、「ホテル ヴィソン」で滞在するのをすすめたい。
    なかでも、6棟あるヴィラのひとつ「東風吹(こちがそよとふく)」が圧巻なのです。
    ここには、茶人である千宗屋が監修した茶室つきの部屋があって、本格的というよりホンモノの茶室があるのです。
    ワビサビがあふれています。ヴィラは全室、完全プライベートの露店風呂付き。

  • BBQ

    たしかに「VISON」には、おいしいレストランがたくさんあります。
    けれどいちばん目を引いたのは、マルシェエリアにあるBBQスポット。
    新鮮な食材を、自分で焼いて食べられます。
    食材を捌くのが面倒? 下処理が完璧に施されたやつがお皿に乗って売られているから無問題。
    BBQコンロの利用は300円。

  • 電動スクーター

    「ヴィソン」内はなんたって広いんです。
    クルマ移動はもちろん可能なのだけど、ここに来たなら乗ってほしいのが電動スクーター。
    いちばん大きな駐車場の脇にステーションがあります。簡単な登録をするだけでOKで、レンタル料は無料。
    時間も短縮できるし、疲労度は雲泥の差。
    ちなみに取材時はすべて徒歩。
    万歩計は1万5000歩。それでもすべてを回りきれないって、やっぱハンパないです。

  • NOUNIYELL

    「ヴィソン」の中心から少し離れた場所にあるレストラン「ノウニエール」。
    「これからの農業にエールを与える」をコンセプトに、マヨネーズの「キユーピー」が運営しています。
    料理の監修は山形の名店「アル・ケッチャーノ」のシェフ、奥田政行さん。
    レストランの裏手のオーガニック農園が広がっていて、安心安全でフレッシュな野菜がいただけます。
    ちなみに奥田さんは、野菜の気持ちを知るために、土に埋まって過ごしたこともある奇才です。

最後に

少し上に行けば大阪だし、
右隣には愛知がある。
三重は“地方”で、「ヴィソン」は“田舎”。
だけどそこには、
日本のトップクリエイターたちの粋が詰まった、
超最先端がありました。
どこを切り取っても、星三つ。

INFORMATION

VISON

住所:三重県多気郡多気町ヴィソン672番1
電話:0598-39-3190
https://vison.jp
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