24年ぶりのピッティ・ウオモ。
—1993年に「ピッティ・ウオモ」に招待されて以来の参加となりますが、率直なお気持ちはいかがですか?
「ピッティ・ウオモ」がデザイナーを招待して開催したショーの最初のゲストが私で、たしか会場としてレオポルタ駅を使ったのも私が初めてでした。あれから20年以上経ったと思うと私も年をとったんだなと思います(笑)。今回、久々にまた声をかけていただいて、とても嬉しかったですし、何よりワクワクしました。〈PS バイ ポール・スミス〉がたくさんの人に見てもらえる良い機会になったと思います。
—今回で3シーズン目になりますが、16AWのスタートから2回、コレクションを発表した感触はいかがですか?
これまで〈ポール・スミス〉は全部で7つのレーベルがあったのですが、昨年からメンズとウィメンズの各ラインを「ポール・スミス」と「PS バイ ポール・スミス」の2つに統合して再スタートしました。これは決してネガティブな編成ではなく、シンプルで明快にしたことで、よりカスタマーにブランドの世界観を伝えやすくなったような気がします。〈PS バイ ポール・スミス〉に関しては、3シーズンを経てやっと「ピッティ・ウオモ」で発表できるまでになったというところでしょうか。ローンチするまでの道のりは簡単ではありませんでしたが、とにかくまだはじまったばかり。たくさんの可能性を秘めたレーベルですね。
見れば分かる、その違い。
—2つのレーベルの違いをどう捉えていますか?
それぞれの服を見れば、違いに気づくはずです。上質な生地を使ってクラシカルなスタイルを貫いているメインコレクション(ポール・スミス)に対して、〈PS バイ ポール・スミス〉は利便性やスポーツテイストの要素、つまりぼくのライフスタイルをより色濃く反映したコレクションになります。メインよりリーズナブルなプライスに設定しているのも魅力のひとつだと思っています。
—なるほど。2017AWは、サイクリングをインスピレーションソースに、機能素材やビビッドなカラーリング、ニット素材を用いたスニーカーなど、とても現代的でコンフォータブルな印象を受けました。これは、シーズンを重ねるごとにポールさんご自身のライフスタイルの打ち出しが強くなっているというということですか?
まさにその通りで、サイクリングからのインスピレーションはごく一部ですが、元来〈ポール・スミス〉のコレクションは楽天的でハッピーで、どのアイテムにも随所にカラフルな要素を落とし込んでいます。私の人格そのものと言っていいでしょう。今回のコレクションでとくに強調したいのが、スポーツウェアのラインになります。私はいまでもロンドンを拠点にしながら、毎週のように旅に出掛けては趣味である自転車に乗ったり写真を撮ったり、常に新しい何かを探しています。今回は、そういう旅や自転車といったアクティブシーンで使えるプロダクトをつくりたくて、コンセプトを“機能的で持ち運びやすくてパッキングしやすいもの”にしました。例えば、ウォータープルーフジャケットやレインコートもコンパクトにまとめられて小さなバッグに入れて持ち運べるようにしています。また、自転車に乗ることを想定して、伸縮性のある素材を使ったり、リフレクターを取り入れた視認性の高いアイテムが揃っていますよ。どれも実際にフィールドテストしているので、使いやすさは私が保証します(笑)。
2017AW COLLECTION LOOK VISUAL(一部)
ポール・スミス自身が切り取る時代性とライフスタイル。
—やはり自身のライフスタイルから生まれたプロダクトは説得力が違いますね! 最後に、今後〈PS バイ ポール・スミス〉を通して、何を伝えていきたいですか?
ブランドをはじめてからこれまで、いろんな国を旅して、人種、宗教、年代も異なる人たちに会いました。そこには時代の移り変わりによるライフスタイルの変化が当然あって、それこそファッション的なトレンドも趣味趣向もどんどん変わっていく。ここ最近の傾向を見ていると、人々のプライオリティが変わって来ていると思います。特に若い人たちは、服やアクセサリーといった着飾ることよりも、スポーツや健康、旅行といった“経験”に対してお金を使うようになっている。それこそが、いまのモダンなライフスタイルだと思うので、〈PS バイ ポール・スミス〉としては、それにフィットするコレクションを展開していきたいと思っています。逆に言えば、〈PS バイ ポール・スミス〉を見てもらえれば、いまの時代性を感じ取ることができるはずです。楽しみにしていてくださいね。