SPECIAL

「フイナム」が様々なブランドやヒトと
コラボレーションしたスペシャルサイトです。

CLOSE
ポール・スミスのすべてが詰まった展覧会。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

ポール・スミスのすべてが詰まった展覧会。

世界中で高い人気を誇る英国ブランド〈ポール・スミス〉。2013年11月、ロンドンのデザイン・ミュージアムで開幕し、大好評を得た展覧会「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」がヨーロッパ各地を巡回し、いよいよ日本にやってきました。わずか3メートル四方の店舗だった1号店の完全復元や映像インスタレーション、ポールさんにインスピレーションを与えてくれるお気に入りの物が並ぶオフィスの再現展示などを通じて、デザイナー、ポール・スミスのユニークな世界観とファッションだけにとどまらない多彩なクリエイションの軌跡を、本展の仕掛け人である、デザイン・ミュージアムの館長デヤン・スジックさんの話と合わせて迫っていきます。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Edit_Jun Nakada
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

はじめに。

ー 

2013年11月にロンドンのデザイン・ミュージアムで開幕した展覧会、「ポール・スミス展 HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」が、2016年6月から10月まで、京都、東京、名古屋の3都市で開催。ここでは第1弾である京都の模様をお届けします。

ポールさんってどんな人?

ー 

1946年、イギリスに生まれたポール・スミスは、16歳でノッティンガムにある服飾の問屋で働きはじめます。その後、アートスクールに通う学生と親しくなったことをきっかけに、建築やデザイン、ファッション、芸術にも親しむようになりました。アートスクールの教師であり、のちに人生のパートナーとなるポーリーン・デニアの励ましもあり、彼は1970年にノッティンガムの裏通りに小さなお店を開きました。それがポールのデザイナーとしてのスタートでした。そして今や、約70の国と地域で展開する世界的なブランドへ成長を遂げました。では早速、そのブランドの歩みをレポートしていきます。

ポール・スミス 1号店(The First Shop)

ー 

1970年、ノッティンガムのバイヤード・レーン6番地に「Paul Smith Vetements Pour l’ Homme(ポール・スミスの紳士服)」というショップが誕生しました。そこはたった3m×3mの広さで窓もなく、ポールさんは他の仕事で生計を立てながら、週に2日間だけショップをオープンしました。しかし、このたった一部屋からポールさんのファッション・デザイナーとしての第一歩が踏み出されたのです。

ポールさんの頭の中(Inside Paul’s Head)

ー 

ポールさんは、画像やイメージ、言葉や数字などのさまざまなアイデアが頭の中に入ってくるとき、それを頭に残しておくために、カメラで撮影したり、ノートに書き留めたりしています。そのときに彼の頭に浮かんでくる数え切れないほどのイメージを、映像インスタレーションという形式で表現しています。

ポールさんのオフィス(Paul’s Office)

ー 

ロンドン・コヴェントガーデンにあるオフィスはとにかく物で溢れています。唯一整理されているものは、部屋の中央にあるデザインミーティング用の大きな机だけで、椅子にも物が積み重なり、座る隙間さえありません。散らばっている本や書類、自転車やカメラなど、その多くはポールさんが世界中を旅して集めたものです。

ホテルのベッドルーム(The Hotel Bedroom)

ー 

パリにある、とあるホテルのベッドルームが、ポールさんとっての初めてのショールーム。最初のコレクションは、シャツ6枚、セーター2枚、スーツ2着。たったこれだけのものがベッドの上に広げられただけの展示でした。そして、最終日の終わりの時間になってやっと、一人の客から初めての注文を受けたそうです。これがポールさんにとってのビジネスの始まりでした。

デザインスタジオ(The Design Studio)

ー 

ポール・スミス社のプリント柄は有名ですが、なかでも人気のあるストライプ柄は、すべてこのデザインスタジオで生み出されています。厚紙に色糸をゆっくりと巻きつけ、ストライプ柄を少しずつ作っていくという手法で、柄の色味が決められていきます。そしてその色味が、服やアクセサリーなどに取り入れられていくのです。

プロモーション(Promotions)

ー 

11歳の頃から、写真を撮り続けているポールさんにとって、写真は趣味のひとつであり、言わばポールさんの視覚の日記であるともいえます。シーズンごとの広告キャンペーンのために撮影したこともあります。一方、デビッド・ベイリー、ジュリアン・ブロード、マリオ・テスティーノなど、何年にもわたり、多くの有名カメラマンたちが〈ポール・スミス〉の広告キャンペーンの撮影を行ってきました。

ポールさんのアートウォール(Paul’s Art Wall)

ー 

ポールさんは、10代の頃から絵画や写真を集めています。コレクションには、アンディ・ウォーホール、デビッド・ホックニーやバンクシーなど、有名なアーティストのものもあれば、友達や家族から贈られたもの、一般のファンから贈られたものまで、幅広く揃っています。その中から厳選した約500点を展示しています。

コレクション(Collections)

ー 

ポールさんの作る服には伝統と現代性が共存し、”ひねりのあるクラシック”のアイデアに基づいています。グレーのスーツの裏地に明るい色のライニングを施したものや、ネクタイの裏地にこだわったものなどがその特徴です。このセクションは7つのテーマが設けられており、過去のコレクションから、2016年の春夏コレクションを含む、さまざまなウェアのラインナップが展示されてます。

コラボレーション(Collaborations)

ー 

ポールさんは、多くのジャンルとコラボレーションをしてきましたが、初期の代表例がローバー社(当時)のミニです。前述のストライプ柄のひとつがデザインされた車がこれです。このミニには、2015年秋冬に発表されたストライプ柄が日本での展示用に新たに装飾されています。その他、カメラ、オートバイ、スノーボードなど、さまざまなコラボレーション作品も展示されています。

ショップ(Shops)

ー 

ポール・スミス社では、すべてのショップを社内のデザインチームが1軒1軒デザインしています。ポールが1979年にロンドンに初めてショップを開いた頃、そこには洋服だけでなく、斬新な色合いの家電や雑貨も置かれていました。今もその流れを汲み、古本、アート、収集品の隣に綺麗に仕立てられた服が飾られているところもあります。それぞれのショップが個性を打ち出せるよう、ユニークなデザインのアプローチがおこなわれているのです。このコーナーでは、世界のショップの紹介に合わせて、ショップに対するポールの思いや考え方を紹介しています。

デザイン・ミュージアム館長、デヤンさんが語るポール・スミスのこと。

ー 

大学を卒業してスーツを買うことになって、たまたま入ったお店でポールさんが働いていたんです。でもポールさんについてはその時はまったく知りませんでした。それから2年後、ロンドンに新しいショップがオープンするという噂を聞いて、しかも野菜マーケットがあったところを改造してショップをやるというから、面白半分で行ってみました。まあそれがポールさんのお店だったんですけど、奥からすごく背の高い髪の毛の長い人が現れて話しかけてくれて、それが初めての出会いでした。詳しくはカタログに載っているから、あとで読んでみてくさださい(笑)。

でね、ポール・スミスのロゴって手書きのサインじゃないですか。そのサインが自筆なのかっていうのを聞くのに、結構勇気がいったので時間がかかりましたけど、ある日勇気を振り絞って聞いたところ、”違うよ”と言われました。あれは自筆じゃなくて、他の人が書いたということだったんですが、不思議なことに時間が経つにつれて彼の自筆のサインもあれに似てきたようです。

ちょうど僕が30歳のとき。当時『ブループリント』っていう雑誌で仕事をしていて、新進気鋭のファッションデザイナーを特集することになり、そのうちの一人がポールさんでした。他にはキャサリン・ハムネットやマーガレット・ハウエル、スコット・クローラがいましたね。で、その時に、ポールさんが僕に”日本へ一緒に行こうよ! と言ってくれて、それで初めて日本に来ました。京都も訪れましたよ。たしかそのときにポールさんが私のことを川久保玲さんに紹介してくれました。1986年のことです。

実はポールさん自身、ファッションやデザインに関しては、すべて独学なんです。デザインやアートの学校に通ったわけでもない。今日ではアートカレッジに行かずにデザイナーになるっていうのはほとんど不可能に近いと思います。ただ彼は第二次世界大戦が終わった後に生まれている世代で、例えばいろんな配給があった時代。そういう環境で育った人ってすごく面白い方が多いんですね。ブランドが誕生して40数年。一見とてもリラックスしていてチャーミングな方なんですけど、常に集中していろんなものを見て、理解して、何か新しいことを探していると思います。

「ポール・スミス展 HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」の仕掛け人として。

ー 

企画をしたときから世界中を巡回することを決めていました。巡回をすることでミュージアムがいろいろな方々にコミュニケートできるんじゃないかなと思ったからです。やっぱり美術館をやっていると、自分が手掛けて準備して展示したものが、終わりを迎えて、解体をしなければいけない。もうなくなったーというのが一番悲しい瞬間なんです。でも、この展覧会は、京都、東京、名古屋と巡り、来年韓国ソウルでも開催するのですが、そういう形でいろいろな都市を巡回するというのは嬉しいことですね。こういった展示は、たとえデジタルの時代であったとしても将来性があると思うんです。実際に自分の目で展覧会を見るという行為は、社会的に共有された経験なわけで、インターネットで得られる情報では絶対に味わうことのできない瞬間があると思います。

実はこの京都国立近代美術館に来るのは初めてなのですが、この展覧会をするのにこれ以上の恰好の場はないなと思いました。この会場はとにかくスペースが広い。だから息をする余裕があるし、ゆっくりと作品と向きあえるのがいいと思います。展示の内容に関しては、色に関してはグラフィックデザインを出す段階からすんなり決まっていたんです。逆に決まらなかったのがタイトルでした。私は「PAUL SMITH、OTHER STORIES」でもよかった。ポールさん自身も「PAUL SMITH、NOT A FASHION DESIGNER」という考えがあったみたいで、なかなか綺麗にまとまらなくて。じゃあシンプルなのはどう? ということで「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」に決まりました。ポールさんが今でも土曜日はショップに立っていて、お客さんが来られたら「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」と自己紹介することから始まるので、それに決まりました。ただ、他のスタッフからは気が気じゃないので早く家に帰ってください! 言われているらしいですけど(笑)。

ー 

「ポール・スミス展 HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」
会期:2016年6月4日(土)〜7月18日(月・祝)
会場:京都国立近代美術館
東京会場
会期:2016年7月27日(水)〜8月23日(火)
会場:上野の森美術館
名古屋会場
会期:2016年9月11日(日)〜10月16日(日)
会場:松坂屋美術館

 

http://paulsmith2016.jp
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Page Top