VIDEO
STORY
2012年の夏、埼玉県狭山市にある中学校のプールに400匹の金魚が放たれた。犯人は4人の女子中学生。「キレイだと思って」と供述した4人の15歳の少女たちがプールに金魚を放った本当の理由とは・・・!?実際に起きた事件を元に、少女たちの心情を斬新な視点で切り取ったスピード感あふれるショートフィルム。エネルギッシュな音楽と刺激的なモチーフの連続で、見る者の想像を裏切り続ける25分間。
長久允(ながひさまこと)/ 映画監督・CMプランナー
惜しまれながら解散したバンド「NATURE DANGER GANG」のファン。いつか彼らみたいに服を脱いだりしたいと思っていた。今回喜んで脱いだ。文中表記:長久
關(せき)
惜しまれながら解散したバンド「NATURE DANGER GANG」のリーダー。ライブ中に服を脱ぎがち。ヤンキーの役で映画に出演。文中表記:せき
ユキちゃん
惜しまれながら解散したバンド「NATURE DANGER GANG」のメンバー。ライブ中にセーラー服を着たり、その上から自分で縛ったり、そして脱いだりしがち。アイドルの役で映画に出演。文中表記:ユキ
日本映画業界から嫌われている気がする。
せき :映画業界から無視されてるらしいですね。
長久 :なんでだろう、ホント。世界一とったけど日本映画業界から何も言われなくて。ムカつくんだと思う。なんか裏の力とか使ったんだろって。チャラくやりやがってって。
せき :あんなおちゃらけたかんじの授賞式でね(笑)。インデペンデントでドキュメンタリー撮ってるぞって人たちからすると、お前金とか出してもらってるんだろって。
長久 :もともと3年前くらいにWEB投票でスタートして、一番票を集めた人が実際に撮れる、って仕組みだったんだけどね。
ー僕と長久さんは広告代理店の先輩・後輩関係に当たるんですけど、「WEB投票やってるから拡散してほしい!」って連絡がきて。本来そんなことしたがらない人だから本気なんだなと。めっちゃ拡散しましたよ(笑)。
長久 :人生で出会った全ての知り合いに投票してもらうみたいな、絶対やりたくない恥ずかしいことをしました(笑)。
ーそれだけ強い感情があったということですよね。
長久 :そうだね。普段は、CMとかをいっぱいつくってるんですけど、求められることに応えて、正しい表現をするっていう広告的な作業にフラストレーションがずっとあって。専門学校ではずっと映画を撮っていたし、自分の思うようにやってみたかったんです。
ー『そうして私たちはプールに金魚を、』は、ネイチャーデンジャーギャング(以下:ネイチャー)の『生きてる。』って曲のアンサーフィルムだそうですね。
せき :マジすか!?
ユキ :そうなの?
長久 :そうなの。ちょうどスーパーの店頭ビデオばっかりつくっているときに、ライブでネイチャー観て、「本当に生きよう!」って思った。ちゃんとやんなきゃって。だからモチベーションとしてのアンサーフィルム。これマジなやつ。
VIDEO
ユキ :めっちゃいい話だ。
せき :音楽すごいな(笑)。音楽の力…いや、おちん◯んの力?(笑)。
長久 :曲そのものよりも、裸でサーフボード乗ってる様子かもね。それ見ながら、おれも、やんなきゃダメだ! って(笑)。
いらない要素とか、ヤフトピに描かれないような部分を全部やりたいなって、
ー賞を狙う意識はありましたか? 少しでも。
長久 :もちろんない。好きな人に出てもらって、好きなストーリーで、好きなことだけやりたいなって。正直ツイてました、賞取れたのは。
ーあのニュースを取り上げようと思った経緯を教えてください。
長久 :広告の仕事で、「バズらせる」企画を延々と考えていて、いかにヤフトピの一行に入るか。要素を分析して、それをどう組み合わせるか。みたいなことをやっていたんです。その頃に、「中学生がプールに金魚を放った」っていうニュースを見て、この子たちのことを一行で表現できるわけがない、くだらねーなと思った。だから、映画では無駄なカットをとにかくいっぱい描きました。ヤンキーのシーンとか、お兄ちゃんのニコ生のシーンとか全くいらないけど、ヤフトピに描かれない部分を全部やりたいなって、なんか使命感を覚えたんですよ。
ーなるほど。社会を切り取るぞ、みたいな気持ちもなかったわけですね。
長久 :そうだね。自分が楽しくやれるように。出てくれた女の子たちが、「私たち普段絶対こんなこと言わないですよ!」って言ってきたんですけど、うるせー!って(笑)。わからなくていいからこれをこのスピードでしゃべって、って撮ってましたね。それが「リアルだ。」って言われるから、逆にすごいなって。
せき :海外で賞をとってるってことは、みんなわかったってことですもんね。
長久 :海外から評価されるとなると、「祭り」とか「ジャパニーズ女子中学生」とかそういうモチーフかなと思っていたんですけど、ぜんぜんそんなことなくて。「埼玉のローカル感」らしいです、決め手は。
せき :田舎の固定された感覚って世界共通なんすかね。
長久 :そうそう、地方都市の気持ちはいっしょだって。みんなロスに出て行けないし、ニューヨークに出て行けないし、パリに行けない。そういう人が9割くらいなんだって。
ユキ :埼玉ってずっとそこにいる人も、都会へ行ったやつもいる、だからこそモヤモヤするみたいな。
長久 :モヤモヤ感あるよね。サンダンスの地方のおばあちゃんが、「これは私の物語だ…。」みたいに言いだして(笑)。
ユキ :すごい!
長久 :ほんとかよ!って(笑)。でも、「私の物語だ。」って言ってくれる人がいっぱいいたんですよ。思ってもみなかったんですけど。
せき :全部「あえてやった。」って言った方がいいですよ。天才みたいなかんじで。確実にあれは伝わると思った。すべてわかっていた。みたいに。
長久 :今の世界情勢でいうと…トランプがいま支持されているのは…とか(笑)。
ユキ :あははは、すごいやだ(笑)。
長久 :本当にラッキー!みたいな。けどおもしろかった。ツイてんなーって思った。
せき :ツキでとれるものなんすね。このインタビューで、また嫌われますよ(笑)。
仕事としてつくるものとは線を引いて、本当に自分の主観でいいと思うものを守れるんだよね。
ストーリーはすっと決まったんですか?
長久 :うん、実際のニュース通りに。思いつくままに脚本書いていっただけ。
せき :勢いがあったんでしょうね。
長久 :一回きちんと構成し直したんだけど、ぜんぜんおもしろくなくて。すぐに一番最初のプロットに戻したんですよ。
ー本能的に、感覚的にやっていったんですね。
長久 :映画づくりの固定観念がなくて、それが新鮮に映ってラッキーだったのかも。
ー映像のギミックもいろいろ使ってますよね。
長久 :持ち前のサービス精神で…(笑)。スーパーの店頭ビデオって、お客さんを立ち止まらせなくちゃいけないから、10秒ごとに何か起こさないといけないんですよ。そういう技術が生きてる。それが本能的にしみこんでいた、というか。
ーCMらしい細やかな技巧、随所に感じました。
長久 :年間何十本も撮ってたから、それはあると思う。仕事がんばってたから(笑)。
ー会社で働きながら、このエモーショナルで直観的な感覚を持ち続けられたのはすごいなって思いますよ。
長久 :そうかもね。会社ではそんなに評価されないし、隅っこにいる(笑)。上司からしたら扱いづらいじゃない?
せき :あーおれも上司だったらやだな。めんどくさそう。実際にめんどくさいかどうかは置いといて、めんどくさそうってなりそう(笑)。
長久 :映画とかPVでは1円もお金が入らないから、仕事としてつくるものとは線を引いて、本当に自分の主観でいいと思うものを守れるんだよね。
ーそこを守らないと、やる意味がなくなりますもんね。
長久 :人に従うことは普段散々やってるから、同じこと外でやってもしょうがないんだよ。
よくするためにはもう解散するしかない。そしたら、あとのライブはよくなる。
ーせきさんとユキちゃんは、ネイチャーの活動と働くのを並行していたんですか?
せき :そうそう、年間150本ライブしたときも、ちゃんと週6くらいラーメン屋で働いてました。
ユキ :そうですね。ネイチャーの書籍を出すために、私はいま小説を書いてるんですけど、ちょうど「絶対無理だった」って部分に差し掛かってます。
せき :おれは余裕だと思ってた。
ユキ :うん。せきちゃんは無理じゃないっていうけど、幼馴染の野村は無理だっただろうなって話をね、いまちょうど書いているところ。
せき :おれは、「ネイチャーの活動をがんばらなくちゃいけない。」って捉えることがもうおかしいと思ってるから。
長久 :あーそうだね。好きだからやってるんだもん、ってことだよね。
せき :そう。つらいことなんかしてなくない?
ユキ :してない。めちゃめちゃ楽しかった。生活はどんどん崩れていきましたけど。一昨年だったかな。水曜、金曜、土曜日はときどき二本。みたいなスケジュールで。
ー凄まじいですね。休止に至るきっかけみたいなものはあったんですか?
せき :このままだと楽しいだけで、ずっとやっていっても同じだなって。
長久 :そうかな。僕はやってほしかったけどね。
ユキ :出口がなかったんですよ。去年はいろいろやらせてもらえたんですよ。映画もそうだし、映像メディアの「lute」でPV何本も出したりとか。一個爆発すればよかったけど、結局爆発させようともしなかったし、ちゃんとやれなかった。そんなモチベーションで、他人任せのままずっとやっていくんだったら、楽しいだけだよねって。
せき :だいぶダラけてきて。よくするためにはもう解散するしかない。そしたら、あとのライブはよくなる。で、実際に解散することを伝えてからよくなりましたもん。
長久 :もっといろいろできた気がするんだけどな。僕もいっしょにがんばりたかったなーって。勝手に思ってる。僕ラッキーで賞とれて、それだけだから。ネイチャーのほうが尊いのに、なんかどうしたらいいのかな。
ユキ :急にみんなモチャモチャしちゃった(笑)。
結局気合でしかないからね、ものつくるのって。個人のエモさしかないと思う。
ー長久さんは、これからどう働くんですか?
長久 :広告より、監督とか脚本とかができたらな、って。
せき :社内の評価とかも変わるんですか?やっぱり。
長久 :評価も変わるね。「エモーショナルなムービーが得意って聞いたんですけど、食品メーカーの心温まるWEBムービーを・・・」みたいな相談が(笑)。
一同 :あははは!
長久 :そういう方向のエモーショナルじゃない! って(笑)。
せき :いいな。なんか仕事ください。おねがいしますよ!仕事をください!(笑)。
長久 :もちろん。せきさん、いま世界で一番いいと思う映像ディレクターだから。本当にいいんですよ。ネイチャーのミュージック・ビデオ。
せき :まじすか? めっちゃ褒めてくれるじゃないすか!『桜おじさん』が初めてつくった映像ですね。『どぱ』とかも。
ユキ :本当にいい映像作品だと思う。何回でも見られる。次、あの部分見ちゃおうかな、みたいな。
せき :気合がね。すげー時間かかったもん。寝ずに一ヶ月とか(笑)。
長久 :結局気合でしかないからね、ものつくるのって。個人のエモさしかないと思う。
ーせきさんのモチベーションって何ですか?
せき :家で酒飲みながら曲とか映像つくってるのが一番楽しい。それかクラブとかライブハウスへ行く。あとうまいもの食うとか、買い物行くとか…うわめちゃくちゃあるじゃん!全部楽しんでるなおれ!(笑)。
長久 :めちゃくちゃ生きてるね(笑)。
せき :家で曲つくってるのが一番ラクじゃないすかね。金かかんないし。合理的!
ー人前に出て全裸になるのと曲をつくるの、ぜんぜん違いませんか? 作業として。
せき :スムーズにやってますけど、うーん、すごいなあとは思いますね(笑)。やばくないですか?自分で曲作って、人集めて、やー!っつって裸になって歌ってるの、意味わかんないよね。冷静に考えたら。
ユキ :レコーディングをいっしょにやったりしてると、なんか、不安になるときがあるんですよ。なんでこの人全部やれるんだろう、なんなんだろう…って(笑)。
せき :でもすごく暗いとは思うよ。思ってるのは俺だけかもしれないけど。母親には、暗いって言われる。
長久 :暗さに対するポジティブさを感じるけど。
ユキ :理解が深いよ。暗い面とか、だらしない面に対しての理解があるから、説教されたときにみんな納得するっていう。
家庭とか学校とかに現実味を感じなくて。作ってるシナリオのほうがライブ感があるなって。
ー長久さんは、映画とか漫画とか、物語のほうが現実味があって、現実のほうがフィクションっぽいって以前話してたじゃないですか。今も変わらないですか?
長久 :変わらないね。
ユキ :やばい人じゃないですか。
長久 :昔からそう。家庭とか学校とかに現実味を感じなくて。作ってるシナリオのほうがライブ感があるなって。でもなんかネイチャーのライブみて、そういう人たちなのかなって思ったけどね、人生を大事にしてたら裸にはなれないじゃないですか。
せき&ユキ :あははは!
せき :僕は遊びの延長線上ですよ。小学校の友達とかに知られたりもするんですけど、変わんないねって言われる。ライブやったら、おもしろいことおきますから。なにかしら。今日のあれみた?滑り方すごかったね!とか言って。
ユキ :自分たちの遊び場にしちゃったからね。
サイコパスっぽいクセに、すごくエモいものつくる。一番怖いわ。
長久 :僕は親が共働きで、エスカレーター校で優等生的に育ってきたんですよ。日常をずっと演じているから、なんかそっちのほうがフィクションな感じがして、家でこう書いてたりするほうが、子供の頃からおもしろかった。大人になって、こうやって解放するんだなってわかってよかった。
せき :いいですね!このエピソードは好かれそう!
なが :そう思って話してるんですけどね(笑)。
一同 :あははは!
せき :これ入れといてくださいね。もう一発嫌われることができる。今日すごいっすよ。嫌われポイントが。
長久 :いいのいいの。子供の頃、タワーマンションに住んでたんだけど、窓が大きくて、夜になると鏡みたいになるじゃない、そこでずーっとパントマイムの練習とかしてた。
ユキ :うわー(笑)。
長久 :で、小学校ではいいこにしているっていう。
せき :めちゃくちゃつらいじゃないですか
長久 :今考えるとつらかったね。
ーそれ映像化したらよさそうですね。
せき :いいじゃないですか!映像にしましょう!
長久 :えーいいかなあ。自分好きすぎないですか?
せき :大丈夫ですよ!そもそも長久さん自分好きじゃないんですか?
長久 :まあ好きっすよ。好きっていうか、他人の存在がなんかわかんないから。子供が生まれて、あー他人にも心ってのがちゃんとあるんだなって思えた。
せき :サイコパスっぽいくせに、すごくエモいものつくる。一番怖いわ。
ー人望はありますよね。映画つくるのに協力してくれたり、受賞したら自分のことのように喜んでる人がいる。
長久 :ちっちゃい頃とか、親がいなかったから、友達の家に遊びに行くこととかあって、愛想良くないとごはんもらえないじゃないですか。だからすごく気をつかってたのはありますね(笑)。
ーせつない話だ。
ユキ :鍵っ子憧れたな。私は学童保育に通ってたんですけど、ずっとひとりでいて、『らんま1/2』を読んだりとか、崖で『もののけ姫』ごっこをやったりとか。おかしい子供だったんですよ。「おはじきがおままごとであそんでもらえないのはかわいそう」とか思ってて。
長久 :おー、おはじき主観。
ユキ :バービー人形とかリカちゃん人形とかは、顔があるから、人っぽいから遊んでもらえて、くまのぬいぐるみとかも人っぽさがあるからおままごとに参加できるじゃないですか。おはじきにはそれがないから参加させてもらえない。かわいそうだから、おはじきでおままごとずっとやってました。その、おはじきでおままごとをしてあげる自分にも大満足してて。
長久 :あーなるほどなあ。優しい、想像力のある私、みたいな。
それが悲しいとか寂しいとかっていう言葉ではまだ形容できないけど、
ーネイチャーが活動休止になって、その後は率直にどうなんでしょうか?
せき :楽しいですよ。ネイチャーやってるときは遊びに行くとかぜんぜんできなくて。
ユキ :できなかった。再結成したくないの? って聞かれると、したいにはしたいけど、いまじゃなくていいっていうのはみんなわかってる。
長久 :恋愛みたいですね。
せき :バンドというか飲みサーですからね。早稲田の飲みサーみたいなチャラさ。
長久 :あははは。ユキちゃんの小説は?
ユキ :書いたり、寝たり、高校の同級生と遊んだり。ネイチャーやってる間は時間がなくて。昔の友達ともう一回友達やり直すみたいなことをやってます。楽しいけど、日常的すぎる、っていうのもあって。それが悲しいとか寂しいとかっていう言葉ではまだ形容できないけど、相反するものが自分のなかでふわふわしてる。
せき :無茶苦茶語るじゃん
ゆき :しちゃった♡
長久 :「しちゃった♡」だけ抜き出したい。
考えた物語が、どういう形であれ出ればいい
ー長久さんはいま制作している映像とかあるんですか?
長久 :決まってたやつは頓挫したりとか。しっかりやりたいなって思うやつに割く時間がなくて、ちょっとイライラしている。
せき :でもそこでイライラしてたほうがいいものつくれる気がする。
長久 :うん、イライラ貯めて、がんばる。
ー今後の展望について教えてください。
長久 :僕は正直、映画だけが好きってわけでもないから、って、こういうと嫌われちゃうけど(笑)。
せき :今日満点っすわ。嫌われるポイント。でも賞とってるからな。
長久 :ひとりで考えた物語が、どういう形であれ出ればいいから、興行に結びついてなくたっていいし、『lute』で無料公開だって僕としてはいい。だから映画でもドラマでもウェブ・ムービーでもMVでも漫画でもいいから、物語を出し続けたい。
ー映像ってフォーマットにこだわらないんですね。
長久 :技能としては持っているから、それをとりあえずやるっていう。
せき :とりあえずつくったらグランプリがきた、と(笑)。
長久 :そうそう、サンダンスのほうからきた(笑)。
せき :とどめさしたな。
長久 :よく見つけるなー審美眼あるなーって。人からわかるかどうかじゃなくて、自分が好きかどうかでつくってたから、本当に評価なんてされないと思ってたんですよ。サンダンスすごい。
せき :それがベストオブベストじゃないですか。
長久 :一発しかないと思ってたからね、超全力でやった。これが認めてもらえて、もっとつくっていいんだーって思えたのが一番うれしいな。映画ってひとりじゃできないから。
ゆき :現場で感動しましたもん。ここにいる人たちが長久さんのやりたいことを叶えてあげるんだ!って。
大人として普通は失われるべきことをやってるから、めちゃくちゃ輝いて見える。
長久 :「絶対いいから!」って言って主演の女の子たちをネイチャーのライブに連れてったんですよ。そしたらね、「ぜんぜんおもしろくない」って言ってて(笑)。それが興味深いなと。ネイチャーは、大人として普通は失われるべきことを持ち続けているから、めちゃくちゃ輝いて見えるんだと思ったんですよ。彼女たちにとって、エモーショナルであるってのは普通のことで、まだ失っていない。大人がそれをやってるのを見ても「え?」ってなるだけ。特別なものじゃないんですよ。ただヤバいおじさんが暴れてるっていう。
せき :本当そうですよ。失った人からの支持でやってこれてる。
ユキ :なんでそんなことできるんだ?って言われながらね。失ってないからやれる。
長久 :失った人たちに向かってやったほうがいい、って思った。十代相手にするよりも。『君の◯は。』みたいなつまんない映画つくりたくない。日本の映画楽しくないし。
ー最後に、映画についての思いを教えてください。
長久 :僕、本当に映画好きだと思うよ。『そうして私たちはプールに金魚を、』には、古い映画のオマージュがめちゃくちゃ入ってて、映画好きな人のほうが楽しいと思う。『アートシアターギルド』っていう大島渚さんの初期とか、『台風クラブ』とか。あのへんのモチーフはたくさん。『しとやかな獣』って映画の夕日のシーンとかも。
せき :最後いいなあ。媚びてる?(笑)。
長久 :映画が好きな気持ちは本当!(笑)。その純粋な気持ちだけ汲んでもらえればいい。目立ちたいとかじゃなくて。
※長久監督たっての希望で、せきさんの正装(ライブ中は高確率でパンツ一丁になる)に着替えていただきました。