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アメリカンストリートブランドのことはWISMに聞け。

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アメリカンストリートブランドのことはWISMに聞け。

ファッションシーン全体が“ストリート”というキーワードに傾倒する中、いち早くこの流れを掴んでいたショップといえるのが「WISM」だ。そんな昨今のムーブメントの発端ともいえるアメリカンストリートブランドのこと、そして彼らが目指すショップ像まで、同店のブレーンである市之瀬、堀家の両氏に話を伺った。

  • photo_Kazunobu Yamada
  • Edit_Kenichiro Tatewaki
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ー『アンプラグド』のアメリカ特集号(2016年3月24日発売号)を制作していく中でいろんな方のお話を伺っていて感じたのは、世界中のファッションシーンにおけるアメリカブランド、その中でもとりわけインディペンデントなスタンスを貫いているストリートブランドの影響力がかなり高いなと。そういったブランドが多いショップといえば「WISM」が真っ先に思い浮かびまして、お話を伺う機会を設けさせていただきました。

市之瀬:ありがとうございます。

ー現在「WISM」で取り扱っているアメリカブランドは、全部でいくつあるんですか?

市之瀬:扱っている規模にはそれぞれ差はありますけど、ブランド数だけでいえば30くらいですかね。特にアメリカにこだわっているわけではないのですが、実際に自分で目にして気になったブランドはたしかにアメリカ寄りのものが多かったです。

ー具体的にはどんなブランドが?

市之瀬:今までアメリカのファッションといえばニューヨークが中心だったと思うんですけど、今は明らかにLAのブランドの方が売れていますね。〈ブレインデッド〉が代表的な例で、あとは〈プレジャーズ〉とか。ちょっと強めなグラフィックが入っているブランドが全体的に売れている印象です。逆に、作り込んでいるブランドは少し動きが悪いですね。本当に、少し前とは状況が逆転しました。

〈ブレインデッド〉スウェット ¥17,000+TAX

〈プレジャーズ〉コーチジャケット ¥12,000+TAX、キャップ ¥5,800+TAX

〈プレジャーズ〉Tシャツ 各¥5,000+TAX

ー名前が挙がったブランドを筆頭に、近ごろは国内外問わず様々なブランドがグラフィック物をリリースしていますよね。

市之瀬:多分、「ドーバーストリートマーケット」が若いアーティストをフックしているのが大きい気がしますね。アメリカブランドではないですけど、〈ゴーシャ・ラブチンスキー〉なんかいい例ですし。それを若い子たちがSNSで知って、一気に広がる。

ーその状況の中で特定のブランドに惹かれるというのは、どこに魅力を感じているんですか?

市之瀬:そうなんですよ、どこのブランドもやってる(笑)。結構難しいところで、プリントはダサいけど、ボディがいいから買おうなんてことは今時絶対にないと思うんです。それならむしろ、ボディは悪いかもしれないけど、プリントがよかったらいいんじゃないかっていう。要は見え面が重要で、そういう意味では、そのブランドのバックグラウンドだったり(業界内での)評判だったりは気にせずに、シンプルにかっこいいと思うものを買い付けていますね。あとはお店としての話になっちゃいますけど、全体のバランス。売れるブランドばかり集めてもテイストが被っちゃって、本来なら売れるはずものも結局売れなくなっちゃうんです。

ー実際に現地でも〈ブレインデッド〉や〈プレジャーズ〉は人気なんですか?

市之瀬:〈ブレインデッド〉は少しずつ知られる存在になってますが、メジャーではない。知らない人の方が全然多いと思います。

ー 

堀家:〈プレジャーズ〉をやっている人は、元々〈パブリッシュ〉というブランドのディレクターをやっていたのですが、「自分たちのやりたいことをやろう」ってことで数人でチームをつくって〈プレジャーズ〉を始めたんです。

ー〈パブリッシュ〉は今もやりつつ?

堀家:そうです。日本だとなかなかないじゃないですか?大きな資本のブランドに関わりながら、かつ自分のブランドを好き勝手にやるって。あっちは結構それがスタンダードになりつつある。しかも両方のブランドで同じ工場を平気で使ったりしているからおもしろい(笑)。

ー 

市之瀬:だから、セカンドビジネスとして運営しているブランドの方が往々にしてうまくいってますよ。それは多分メインのブランドでちゃんとした稼ぎがあって、その上で売り上げを気にせずに自分たちの好きなものを作る。それが結果的に支持されるんでしょうね。

ー今注目しているブランドはありますか?

市之瀬:狙っているブランドはありますよ。具体名はまだ言えないです、今言うと角が立つんで(笑)。

ー買い付けで現地を色々回ったからこそ感じたことはありますか?

市之瀬:今狙っているブランドと同じ話になっちゃうんで詳しくは言えないですけど、LAとニューヨークは完全に別物。そこを拠点にしている人たちのテンションが服にそのまま現れているんです。西はやっぱり適当で(笑)、「在り物のボディにプリントのっけちゃえ!」みたいな。そういうブランドが作っているのは大体Tシャツにキャップ、コーチジャケットとかですね。東も今はそういうノリがあるんですけど、ちゃんと作り込むというか。「どこどこのブランドにいました」みたいな人が増えていますね。

ー「WISM」のカラーを考えると、西海岸の方が合っている印象がありますが。

市之瀬:どうなんですかね、あまり意識したことはないんですけど、今の日本のお客さんは西ノリなんじゃないですか?

ー西海岸をベースにしたブランドは世界的に見てもヒットしてますもんね。〈オフホワイト〉とか、正確には西海岸出身ではないですけど、セレブファッションという意味ではカニエの〈イージー〉もそうですし。

市之瀬:確かに売れてますね。でも、僕も見てはみたんですけど、話しててもちょっとうちが求めてるものとは違う気がしました。

ーというと?

市之瀬:生産はヨーロッパで行ったり、セレブが着て人気が出たり、そういう色々な条件が重なって価格や人気が高くなるのは理解できるんです。ただ、ちょっと富の象徴に見えるというか、例えばウン十万もするジャケットをストリートで汚れとかを気にせずに着るのって難しいじゃないですか。ストリートはもっとリアルだし、1万そこそこのコーチジャケットで気の効いたプリントが載っている方が正義だと思ってます。まぁ、これは単に価値観の違いですね。

ーここまで名前が挙がったブランドの作り手は、どんな人たちなんですか?

市之瀬:自分たちが関わろうとしているやつらは、ファッションセレブ感は全くありません。雑です(笑)。もちろんいい意味で。かっこつけていないというか。

ー 

堀家:〈プレジャーズ〉のデザイナーはいつ会っても「ビール飲むか?」みたいな感じ(笑)。ノリが僕らと変わらないですね。やっぱり人対人だから、その人の人柄に惚れて買い付けるということはよくありますし。高いから、かっこいいプリントが入ってるから良いというわけではなく、ストリートって自由だからこそカテゴライズできないわけで、単純に自分たちはそこを追求していったらいいんじゃないかと。同時に、具体的な指標がないからチャンスでもある。

ーなるほど。

堀家:だから西だけじゃなく、東の方もこれから盛り上がってきそうな気配はありましたよ。ファッションで一攫千金を狙っている人が増えてきていて、次の秋冬に全く違う業界から転職してブランドを始めたデザイナーもいました。元銀行員かなんかで、脱サラしてシャツブランドを立ち上げている人もいました。

ー 

市之瀬:元々おじいちゃんがシャツ工場で働いていたらしく。

ー 

堀家:しかも一緒にやってるやつも、たしか元映画監督っていう(笑)。計3人でメイドインニューヨークのシャツを作るみたいな。いかにもニューヨークっぽくておもしろいですよね。こういうブランドをフックアップすることこそ、僕らの使命だと思ってます。

ーちなみに、一度の出張で何ブランドくらい見て回るんですか?

市之瀬:展示会に行くだけ、というのも含めれば100は超えますね。

ー 

堀家:でも中には、プレスルームに行ったら誰もいなくて、電話したら日にち間違えられてたとか、「来い来い」って言うからわざわざLAまで行ったのに、着いたらサンプルができてなくてただ喋るだけとか、そんなのも多いです。日本じゃ考えられないですよね(笑)。

ー 

市之瀬:向こうではよくある話。LAまで来て会ったのにスタバでお茶飲むだけとか(笑)。すげえなって思います。それで後日オーダーシートがメールで送られてきて、サンプル見ずにオーダーするっていう。「これでオーダーするんだ」みたいな。

ーすごい話ですね(笑)。

市之瀬:だからサイズ感とか全然わからないんです。他のところはそれではオーダーしないと思うんですよ。普通はこわいじゃないですか。

ーそういう流れでオーダーしたブランドを教えていただけますか?

市之瀬:〈ONLY NY〉なんて全部そうですよ。結構な型数を扱ってますけど、サンプル見たことなんか一度もないですもん(笑)。〈ブレインデッド〉もそう。

ーとなると、届いてみてイメージと全然違かったなんてことも?

堀家:ありますね。でも逆もあるんですよ。想像よりかっこよくて「もっとオーダーすればよかった」と思うことも結構あるんです。とにかくそういう面がラフで、納品されたら穴が開いてたこともありますね。日本はそういうところにシビアだから、程度によってはB品で返品になっちゃうんです。でもブランドからしたら全然許容範囲らしく、「お前ら細かいなー」と思われちゃう。その辺りのやりとりも結構大変です(笑)。ちなみにこれは〈ローン・ウルフ〉というブランドの話。

ーどういうブランドなんですか?

堀家:サーフブランドですね。ローカル向けに小規模でやっているところなんですけど。

ー 

市之瀬:コテコテなサーフ系ではないよね。

ー 

堀家:みんなモノトーンのファッションで、ボトムスはスキニーのブラックデニム履いてるみたいな。「かっこいいじゃん」と思って話していたら奥に連れていってもらえたんですよ。そしたら、やけにちゃんとした音響機器が揃ってて。

ー 

市之瀬:多分そっちが本業なんです。音楽を作っているのかプロデューサーとして働いているのかはわからないんですけど、趣味としてサーフィンやりつつ、余った場所をお店にしてスウェットとTシャツだけを売っている。かなり緩いです(笑)。ボーカルとギター、ドラム部屋みたいに小部屋があって、その時はそれぞれに一人ずつ入って、音を一つにまとめてレコーディングしていたんですけど、服の説明よりそっちの説明ばっかりで。服については、「ま、欲しかったらオーダーしてってよ」くらい(笑)。

ー 

堀家:「うちのブランドをよろしく頼む!」じゃなくて、「うーん、買うの?いいよ。できたら送っておくよ」みたいな感じです。

ーユルユルですね。他に印象に残っているブランドは?

堀家:〈ベースMFG〉っていうキャップだけのブランドとか?

〈ベースMFG〉 キャップ 各¥5,800+TAX

ー 

堀家:今LAで勢いのあるブランドのキャップは、大体ここが作ってます。〈ブレインデッド〉のも。工場とかも見せてもらったんですけど、何となくLAの上野、いやもうちょっと遠くて八王子のようなイメージでした。あとは〈ファンメール〉、〈ウィリー・キャバリア〉とか?

〈ファンメール〉 シャツ ¥33,500+TAX

ー 

堀家:〈ファンメール〉はもっとニュートラルというか、クリーンなイメージ。素材使いがおもしろいんです。日本では夏物のイメージが強いヘンプを、秋冬でも使っていたりとか。本来はミリタリーでも使われているほど丈夫な素材で、そういう物作りに対してストイックなところがいい。

〈ウィリー・キャバリア〉ジャケット ¥61,000+TAX、パンツ ¥38,000+TAX

ー 

堀家:〈ウィリー・キャバリア〉はもっと強い感じ。オリジナリティがあって、すごく自分が好きなことをやっていると思うんですよ。デザイナー本人もすごいおもしろいやつで、ゴツくて入れ墨もたくさん入ってて。もともと〈RRL〉のデザインをやっていて、独立してSOHOにお店を出し、そのあと自分のブランドを始めたみたいです。

ー 

市之瀬:そんな感じで結構色々置いてますね。でも、とりあえず入れてみたブランドもあるので、ここから精査するというか。今は招待枠が40人いて、ここから1軍に絞る感じ(笑)。あとはFAで大物引っ張ってきますから。

ーどこなのか非常に気になりますね。

ー 

市之瀬:それは店頭に並んでからのお楽しみということで(笑)。でも結局その辺りのブランドって内輪で流行るというか、周りの友達が着ているのを見て「それどこの?」っていうのが繰り返されて広がっていくんですよね。今の日本の若い子たちもそうだと思うんですけど、自分の周りで完結させるというか。例えばデザイナーが一人いたら、その友達に音楽やってるやつがいて、またその友達にアーティストがいて、お互いを信用し合ってるからそれだけでひとつの世界観ができ上がっちゃう。僕らの世代って上への憧れが強すぎちゃってそういうのがなかったんで、純粋にうらやましい。そこに惹かれるというのもありますね。だから、精査された上でそういう新しいブランドもちゃんと残ってて、尚且つそのタイミングでうちのお店がそのカルチャーの真ん中にいることが一番の理想ですね。

WISM 渋谷店

住所:東京都渋谷区神宮前5-17-20
時間:11:30〜20:00(月、火、木、日)、11:30〜20:30(水、金、土、祝前日)
電話:03-6418-5034
http://wism-tyo.jp/
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