もがきながら演じた、歪な愛のかたち。

ー この映画は青春活劇ロードムービーという側面ももちろんありますが、見終わった後に“愛“について深く考えさせられました。主人公の大輝は悪いこともいっぱいして、もちろん加害者ではあるんだけど、一方で生まれてすぐに母親に捨てられ愛を知らぬまま育った被害者でもある。愛情のベクトルさえ変われば、実はすごく優しい子なんじゃないかなと思いました。そういう難しい役どころを演じるにあたって参考にした人物などはいますか?
まず大輝という人物と対峙することから始めました。彼の奥底にある「本当はこうしたい」という部分を知ることが重要だなと思って、台本に描かれていない幼少期のことなどを想像しながら、「あの出来事は嬉しかったな」とか「あれは心のそこから許せなかった」とかストーリーを肉付けしていって。あとは見た目的な部分でいうと、実際に非行やドラッグをやめられない青年を動画サイトなどで見て、「ここはこうやって発声して怒るんだ」とかそういうところを研究していました。
ー 実際に撮影が始まって、思い描いていた大輝から変わっていったことなどありますか?
慣れていくというか、自分と大輝が一体化していく感覚が明確にわかって、最後の方なんかは殴るのが辛いとも思わなかったし、歩き方も自然とがに股になっていましたね。
ー 大輝が入っていく感覚があったんですね。
そうですね。すごく貴重な体験でした。


ー 今回の作品、豊田さんの目のお芝居がすごく印象的でした。ドラッグをやっているときの目の奥に光がない感じや、逆に喧嘩した後の目の奥に少しだけ希望の光が灯る感じ。とても映画初出演とは思えませんでした。
まさに今回の目標が目のお芝居だったのですごく嬉しいです。言葉でわからなくても目で語れるものって多いじゃないですか。それさえあれば画がもつというか、なのでそういう役者になりたいなと思っています。
ー 今回はかなり狂気的な役でしたが、役作りは難しかったですか?
圧倒的な強さみたいなものへの憧れが昔からあったので、そういう意味では今回それを体験できて楽しかったですね。ただやはりお芝居もまだ慣れていないですし、撮影中は毎日しがみついて演じている感じでした。
ー これからさまざまな役をやっていくと思いますが、私生活に役が影響してきそうですね。
そうかもしれないですね。むしろ引きずるくらいになるまで、とことん役を全うしたいなと思っています。
