INTERVIEW WITH RYOYU KOBAYASHI 数値で感じる、スキージャンプのとんでもない世界。
「普段は平気ですが、転んだ後の1本目は怖いですね。高さは平気だと思われがちですが、純粋に高いのは怖い。以前、バンジージャンプに挑戦したんですが、もう怖かった…。死ぬんじゃないかと」
飛距離点に飛行と着地の美しさからなる飛型点を足したポイントで勝敗が決まるスキージャンプ競技だが、飛んでいるひとから見た視界は想像を絶する。テレビでは見慣れた競技も、改めて数値で考えるととんでもないスポーツだと分かる。例えば、ラージヒルのスタートゲートの高さは138メートル。30階前後の高さのビルに相当する。そこから約100メートル滑走して加速し、台を飛び出すときのスピードは時速90キロメートル程、つまり高速道路を体ひとつで走行しているようなもの。そして、飛び出すときの高さは85メートルで、18階建てのビルに相当するそうだ。ちなみに、「通天閣」の展望台が91メートル。ジャンプして、着地するまでの飛行時間は4秒くらい。けっこう長い。YouTubeに選手目線で撮影した動画があるので、見ると追体験しやすいかもしれない。
スキージャンプといえば、冬季五輪の人気種目だ。日本はこれまで有名選手を多数輩出してきたこともあり、“お家芸” とよく言うが、競技内容について調べてみると発見が多い。例えば、何が勝敗を決する重要な要素なのだろう。
「リズムやバランス、タイミングといった全体的な流れですね。でも、踏切の時点で、これはいったなとかダメだなというのは分かります。跳躍力とか身体能力はあまり関係ないと思います。でもメンタルはめちゃくちゃ重要。どう整えるか、ですか? やっぱり経験が大きいですかね」

体調はもちろん、天候、フォーム、毎年のように行われるルール改正など、さまざまな要素に左右される競技。スランプに陥ったときはどう立て直すのだろう。
「いくら飛んでも、結果の出ない時期がありました。2016-17年シーズンは、ワールドカップで1ポイントも取れず、葛西(紀明)さんにも、『だせえ』って言われたくらい。同じことをやり続けても飛べなかったから、これじゃ成長しないと感じたので、いろいろと試しました。ひとからのアドバイスを聞きつつ、ひとのジャンプを観察したり。そういうイメージトレーニングがバチッとハマって、飛べるようになったんです。いまでも、正直なところ練習量はぼくより上のひとはたくさんいて、練習量で追いつくことはできないので、遠くに飛ぶためにはどうしたらいいのか、さまざまな方向から考えて取り組むようにしています」