役者というフィルターを取り払って、写真家として見てほしい。
ー 写真を撮るようになったのは、お父さんのカメラを見つけたのがきっかけなんですよね。
安藤:父が小さい頃の俺を撮っていたカメラを見つけて、はじめはそれを使って撮っていました。
ー そこからどうしてハマったんですか?
安藤:子供の頃にポラロイドで撮影をして、その瞬間やその場の雰囲気が浮き出てくるということに感動したんです。それがすごく好きで、自分には心地よかったというか。
ー 切り取られた瞬間の雰囲気が好きというのは、いまでも変わってないですよね。
安藤:変わってないですね。いまでも撮りながら「もっと撮りたい」って思うんですよ。映像もそうですけど。もっとオファーが来ないかなって思うから自分で営業もします。出版社に直接足を運ぶんですけど、どうしても役者として見られてしまって。もちろんそれは仕方がないことではあるんだけど、そのフィルターを取り払って、写真家、作家として見てほしいって思うんです。
ー いろんなインタビューを読んでいると、安藤さんはすごくストイックというか、チャレンジすることに物怖じしないし、反動的、衝動的に動いているように見えるんです。役者としてのキャリアを抜きにして、ひとりの写真家として見てほしいというのも、すごくチャレンジングなことですよね。
安藤:アイデアを思いついたら、俺はすぐに行動に移して形にしたいタイプなんです。それで出版社へ企画を持って行ったとしても、最初はいい反応を示してくれたのに、あとになって結局ダメっていうパターンも多くて。それで担当者とぶつかることもあるんです。本当にその企画をやりたいから。すごく正直な人間なんです。


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ー 安藤さんの写真を見ると美しさのなかに毒々しさがあって、隙を感じなくて。本当にストイックだと思うんです。
安藤:「集英社」でとある作家さんの本の表紙を撮らせてもらったことがあるんですけど、担当の方に「こんな写真を撮るんだ」ってびっくりされました。「美しいし、死生観も感じるし、それに血とか暴力みたいなものも見える」って言ってくれて。それはやっぱり、自分が思ったり経験してきたことから生まれた世界観なんです。
ー その経験してきたことのなかには、役者としての経験も含まれるんですか?
安藤:もう俺のなかのものが全部出てますね。芝居も映画も、すべての経験を写真っていう好きなことにぶつけていて。20年近く自分の好きな写真を撮っていて、仕事としてやっていきたい気持ちがあったけど、二足の草鞋を履くのってどうなんだろうっていうことに捕らわれていた時期もあったんです。
だけど、これまでとんでもない監督たちと仕事をして、巨匠と呼ばれるいろんなカメラマンたちに撮られて、それって誰にでもできる経験じゃないし、そこから吸収できるものがたくさんあったから。だったら絶対に俺には俺にしか撮れない写真があると思ったし、自分もその世界で戦っていけると思ったんですよ。全然違う職業ではないし、自分はクリエイティブの仕事しか興味ないから、撮る側もいけるなって。
それで3年くらい前に「東京コレクション」の主催者に自分の写真を見せたんです。そしたらすごく気に入ってくれて、そこから2年くらいバックステージを撮っていました。その写真を見た『GQ』の編集者からもフォトグラファーとして仕事の依頼が来たり。その前はアシスタントとしていろんなフォトグラファーの手伝いをしていたこともあって。
ー さまざまな経験が自信に繋がっているわけですね。
安藤:撮りたいって思う気持ちと、撮れる自信をしっかり行動に移して形にすべきだと思いましたね。だって、好きだから。
