平面的な言葉を立体的にする仕事だから、心が動かないと絶対に無理。
ー 昨年、短編映画の監督をやられて、映像にもチャレンジされていますよね。役者、写真、映像の3つの要素が繋がることで、相互的な働きが生まれるのではないでしょうか。
安藤:そうですね。写真はひとりでもできるし、演技も身体があればできることなんですけど、映画はいろんなスタッフや関係性があって、社会性がないとできないので。それまで俺は友達がいないって思ってたから、映画はつくれないと思ってたんです。
だけど、去年そういう機会をもらって、どうしようかなと考えて。すると、撮影監督に田島(一成)さんだったり、スタイリストに長瀬哲郎だったり、ヘアにShinYaとか、『KILL BILL』の美術監督をやった佐々木(尚)くんだったり、音楽もKMやBrodinski & Modulawがつくってくれたり。いろんなひとが関わってくれて、俺って友達がいるんだって思えて(笑)。みんなプロフェッショナルとしてすごい世界を見てきたひとたちなんだけど、自分の世界観のなかでこのひとたちを大事にしたいなと。短編一本で終わるのではなくて、いまは長編の企画を考えています。


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ー その都度やりたいことを見つけて果敢にチャレンジしているのが伝わってきます。
安藤:これまで俳優として海外の映画祭へ行ったけど、今度は撮る立場として同じことをやりたい。だから立つべき場所は変わらなくて。ずっとやり続けたいし、もっと深くやりたいですね。
ー 確実に表現の幅が広がってますよね。
安藤:昔は映画かドラマしかなかったけど、いまは「ネットフリックス」もあるし、いろんな媒体があって役者も活動の幅が広がったと思います。そこにプラスして、自分は写真や映画っていうクリエイティブの選択肢が増えて。それは絶対にいいことなんですよ。役者をやってきて、もっとできることがあるんじゃないかってずっと思っていたから。
ー そういう意味で、プライベートで写真を撮り続けてきたというのは、ご自身にとって大きな支えであり、自分自身を拡張する大きなきっかけでもあったわけですよね。
安藤:大きいですね。


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ー 『キッズ・リターン』で俳優としてデビューして、賞を総ナメしたところからご自身のキャリアがスタートしましたよね。その後にいろんな映画やドラマに出演されて、急にそのキャリアを捨ててカメラマンのアシスタントをして。ある意味、下から上を眺めるような形になって、そこでの経験がご自身の振り幅に繋がっているのかなと思うんです。
安藤:その視野はすごく大事だったし、本当に昔は無知だったと思う。自分のマネージャーに対してさえリスペクトの気持ちが欠けていたから。だけど、ちゃんと事務所があって、そこに信用があって仕事がくるんだっていうことが分かったし、いろいろ失敗して痛い目にあって学べたことは自分にとってすごくいい経験でしたね。だから、いろんなひとにいますごく感謝しています。
オファーしてくれるプロデューサーにも本当にありがとうってなるし。それはテレビドラマも同じで、コンプライアンスが厳しい時代にスポンサーがついて、できないことが多いなかで知恵を絞ってやってるから。みんな本気だからこそ手を抜かずにやろうって思える。昔は「テレビドラマなんて」って思っていた時期もありましたけど、いまはオファーを受けたら感謝したいし、その分いい演技をしたい。同じクルーから1年後とかに再びオファーが来たりすると、すごく嬉しいですしね。
ー どんな作品かというのも大事だと思うんですけど、やっぱり “人” という要素もオファーを受けるにあたって大きな要素になるんですか?
安藤:ひとに直接お願いをされたり、自分が出演した映画が好きだと言われて、そのひとのためになるようにがんばろうとする気持ちってすごく大事だと思うんです。その想いを受けるのもひとだし、それを返そうとするのもひとだから。
ー 今回の撮影でカメラマンと1対1の環境をつくりたいと仰っていたのも、いまのお話とちょっと似ているのかなと思いました。人とまっすぐ対峙することが大事という意味で。
安藤:自分が役者っていうのもあるかもしれないけど、仕事をするときはそのひとのことを想いながら、リスペクトしないといけないですよね。台本に書かれた平面的な言葉を立体的にする仕事だから、心が動かないと絶対に無理なんですよ。

ー では最後に、これから表現者としてどうなっていきたいか、近い将来の目標と、遠い未来の目標を教えてください。
安藤:役者としてはキャリアを積み重ねてきて、信用を築けていると思うんです。だけどさっきも話した通り、写真家としてはそのキャリアを抜きにして見てほしい。映画監督も同じで、写真は写真、映画は映画の信用を役者のように積み上げていきたいです。絶対にできるって思ってるから、そこは貪欲に求めていきたいですね。
ー 遠い未来の目標はどうですか?
安藤:写真を撮ること、長編映画をつくること、それを続けることが目標です。他のことに興味がないから、それをずっとやり続けたい。
ー やっぱり楽しいからですか?
安藤:楽しいですね。他のことはやりたいって思わないから。役者は役者で本当に緊張するけど、クランクアップしたときの開放感や心地よさを感じられるんですよ。それに素晴らしい才能を持つカメラマンや監督に出会えるきっかけでもあるし。だから、本当にすごく、楽しいですよ。
