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GENUINE HOUYHNHNM GENUINE HOUYHNHNM

    (  Prologue  )
  • ネットやスマホの進化に伴い、
    インスタント化するショッピング。
    それなりのクオリティのモノが安く手に入る一方でいま、
    こだわりのあるひとは価値あるモノに目を向けています。
    実際、大手百貨店のバイヤーは、
    これまで値ごろなモノを選んでいた大人たちが店頭に足を運び、 デザインやつくりのいいモノを求めると話します。

    価値あるモノには理由があり、
    値段も高いわけですが、 手にした時の喜び、
    そこから得られる経験は何ものにも代えがたいはず。
    この連載は “GENUINE(本物)” と “HOUYHNHNM” の
    頭文字を組み合わせた「GH」というタイトルのもと、
    モノにあふれる時代のなかで
    本当に買うべきものを探ります。

(  Prologue  )

#02 時と想いを刻む
機械式時計。
Have a Mechanical Watch.

#02 時と想いを刻む
機械式時計。
Have a Mechanical Watch.

ファッションのなかでも趣味性の高いモノといえば機械式時計です。
携帯が普及した現代において、必ずしもつける必要はなく、
そこに驚くような機能もありません。
でも服にこだわるひとならいい機械式時計を持ちたいと思うはず。
時間を確かめるシンプルなツールだからこそ長く愛用でき、つけるひとのストーリーがそこに刻まれるから。
買うときにはそれなりの覚悟が必要かもしれませんが、
自分に合うものが見つかれば背伸びをしたって後悔しないと思います。
まずはその世界の一端を覗いてみませんか。

8 WATCHES, 8 STORIES

銘品を手に入れようと思えば、
職人仕事が息づく機械式時計はまたとないジャンル。
ここ1年で発表された新作のなかから
極めつきの8本を選びました。
フイナムが自信をもっておすすめする、
2022年のベストウォッチです。

Cartier TANK LOUIS CARTIER

ルイ・カルティエがこよなく愛した一本にして、アール・デコの先駆けと称された「タンクルイ カルティエ」。メゾンのアイデンティティであるコレクション「タンク」の原点といわれるこのモデルに日本限定のカラーが登場した。イエローゴールドのアルディロンバックルで脇を固めた、グリーンで染めたダイアルとアリゲータースキンストラップ――アール・デコにオリエンタルなムードが加わって高貴さすら漂う一本に仕上がった。限定50本。

DESCRIPTION
CASE : YELLOW GOLD, 33.7×25.5mm
THICKNESS : 6.6mm
POWER RESERVE : 38 HOURS
PRICE : ¥1,782,000

INFORMATION
CARTIER CUSTOMER SERVICE CENTER
TEL : 0120-301-757
WEB SITE

OMEGA DE VILLE PRESTIGE

“An OMEGA so slim it hugs your wrist”(手首を抱きしめるようなスリムなオメガ)――というコピーを引っさげて1967年に登場した「デ・ヴィル」。ケースバックに向かって絞り込まれていくシェイプに象徴されるエレガント極まりないこのヘリテージを引き継ぎ、新たに登場したのが「デ・ヴィル プレステージ」だ。マスター クロノメーター認定を受けたムーブメントを搭載しつつ、40ミリ径のメンズモデルではじめて厚さ10ミリを切った。ムーブメントを収めるためのスペースはドーム型のダイアルを採ることで確保した。PVDセドナ™ ゴールドカラーの針、ローマ数字とカボションカットのインデックスで構成されるサンブラッシュ仕上げのPVDブラックダイアルもたまらない。

DESCRIPTION
CASE : STAINLESS STEEL, 40mm
THICKNESS : 9.93mm
POWER RESERVE : 55 HOURS
WATERPROOFNESS : 30m
PRICE : ¥561,000

INFORMATION
OMEGA CUSTOMER CENTER
TEL : 03-5952-4400
WEB SITE

IWC BIG PILOT’S WATCH
43 TOP GUN

「パイロット・ウォッチ・コレクション」に新たな「トップガン・モデル」が登場した。その名は「ビッグ・パイロット・ウォッチ43・トップガン」。見どころは「トップガン・ビッグ・パイロット」初の43ミリ径のケースだ。往年のパイロットウォッチを彷彿とさせる堂々たるフォルム。その存在感を際立たせるのが、「トップガン」のロゴが刻印されたケースバックと酸化ジルコニア・セラミックだ。米「パントン」社と共につくり上げたブラックセラミックは「IWCジェット・ブラック」と名づけられた。「トップガン(米海軍戦闘機兵器学校)」とのコラボレーションにより2007年に登場し、たちまちブランドの顔となったコレクションにあって、ひとつの到達点といっていい。

DESCRIPTION
CASE : CERAMIC, 43.8mm
THICKNESS : 13.9mm
POWER RESERVE : 60 HOURS
WATERPROOFNESS : 100m
PRICE : ¥1,380,500

INFORMATION
IWC
TEL : 0120-05-1868
WEB SITE

JAEGER-LECOULTRE REVERSO TRIBUTE
DUOFACE CALENDAR

1931年に誕生した自他共に認めるアイコン「レベルソ」に新作が登場した。「レベルソ・トリビュート・デュオ・カレンダー」がそれだ。最大の見どころはブランドを代表する複雑機構、トリプルカレンダーとデュオコンセプトのマリアージュだ。デュオコンセプトは表裏2つのダイアルで第2時間帯表示を可能とした機構のことをいう。フロントはグレイン仕上げのシルバーダイアルにポリッシュ仕上げの時分針&インデックス、バックはサンレイ仕上げのグレーダイアルに一新されたアワーマーカーで構成される。“レベルソ” するのが楽しくなるコントラストだ。ケースはステンレススティールと18Kピンクゴールドの2種。

DESCRIPTION
CASE : 18K PINK GOLD, 49.4×29.9mm
THICKNESS : 10.9mm
POWER RESERVE : 42 HOURS
WATERPROOFNESS : 30m
PRICE : ¥3,872,000

INFORMATION
JAEGER-LECOULTRE
TEL : 0120-79-1833
WEB SITE

HERMÈS HEURE H

プロダクトデザイナーのフィリップ・ムケが1996年にデザインした「Hウォッチ」が四半世紀の時を超えて、ボディにまとった漆黒のような深化を遂げた。ケースにはチタン含有率99%のグレード5チタン、キャリバーには「エルメス・マニュファクチュール」の機械式自動巻ムーブメント「H1912」が採用された。見逃せないのがブラックを基調としたトーン・オン・トーンだろう。ブラッシュ仕上げやサテン仕上げといった職人技を惜しげもなく注ぎ込んだボディからはまさに “漆黒” の色気が漂ってくる。その時計は一からスイスにある「エルメス・オルロジェ」のアトリエでつくられている。

DESCRIPTION
CASE : GRADE 5 TITANIUM, 30.5×30.5mm
POWER RESERVE : 50 HOURS
PRICE : ¥905,300

INFORMATION
HERMÈS JAPON
TEL : 03-3569-3300
WEB SITE

TAG HEUER AQUARACER
PROFESSIONAL 200

「タグ・ホイヤー カレラ」や「モナコ」に並ぶマスターピース、それが 1978年に誕生したダイバーズウォッチ(Ref.844)にはじまる「アクアレーサー」だ。2022年に登場した「アクアレーサー プロフェッショナル200」はおよそ半世紀前に確立されたデザインコード――逆回転防止ベゼル、ねじ込み式リューズ、発光インデックス、サファイアクリスタル、ダブルセーフティクラスプ、200メートルを超える防水性――を踏襲しつつも進化の目盛りを進めた。よりコンパクトな40ミリ径のステンレススティール製ケース、メタル仕様のインサート、ポリッシュ仕上げのリンク…。ラグジュアリーツールウォッチを謳うのももっともな仕上がりである。ケースバックに刻まれたのはコンパス。冒険心を忘れない男のメタファーだ。

DESCRIPTION
CASE : STAINLESS STEEL, 40mm
POWER RESERVE : 38 HOURS
WATERPROOFNESS : 200m
PRICE : ¥346,500

INFORMATION
LVMH WATCH JEWELRY JAPAN TAG HEUER
TEL : 03-5635-7054
WEB SITE

TUDOR PELAGOS 39

「ペラゴス 39」は〈チューダー〉が誇るダイバーズウォッチのヘリテージを文字通りモダンにブラッシュアップしたモデルである。サンレイサテン仕上げのベゼル&ダイアルをまとった39ミリ径ケース――その佇まいをひと言で表現するならば、“洗練” がしっくりくる。もちろんダイバーズウォッチとしてのスペックは申し分がない。グレード2チタニウム製ケース、発光製セラミック混合物を駆使したモノブロック アワーマーカー、クイックアジャストクラスプ、ダイバーズエクステンションパーツ…。ペラゴスはギリシャ語で “大海” の意。週末、“ペラゴス”に身を委ねる男に相応しい一本だ。

DESCRIPTION
CASE : GRADE 2 TITANIUM, 39mm
POWER RESERVE : 70 HOURS
WATERPROOFNESS : 200m
PRICE : ¥537,900

INFORMATION
ROLEX JAPAN / TUDOR
TEL : 0120-929-570
WEB SITE

Grand Seiko SBGW291

「44GS 現代デザイン」のレギュラーモデルがリリースされた。目利きを唸らせたのはクラシック回帰にとどめを刺す「44GS」史上最小となるケース径(36.5ミリ)だ。グレートーンでまとめたカラーパレットと相まって、凛とした佇まいがある。1967年に誕生した「44GS」は 歪みのないザラツ研磨に顕著な日本固有の美意識をプロダクトに昇華した〈グランドセイコー〉独自のデザイン文法、“セイコースタイル” を確立したモデル。つまり “凛とした佇まい” は本来備わっていたもので、「44GS 現代デザイン」はこれを研ぎ澄ましたということなのだ。ケースバックにあしらわれた獅子の紋章が映える。

DESCRIPTION
CASE : STAINLESS STEEL, 36.5mm
THICKNESS : 11.6mm
POWER RESERVE : 72 HOURS
WATERPROOFNESS : 10bar
PRICE : ¥605,000

INFORMATION
SEIKO WATCH CUSTOMER SERVICE CENTER
TEL : 0120-061-012
WEB SITE

INTERVIEW

ファッションの世界を飛び出し、
アスリートからエッセンシャルワーカーまで、
さまざまな分野で闘う人々を
デザインの力で支えている相澤陽介さん。
そのキャリアは輝かしいものですが、
彼の手元を彩る時計は、
決してその成功のシンボルとして
そこにあるわけではありません。
彼は時計をどんな基準で選び、
そこにどんなロマンを見出したのでしょうか?

相澤陽介
1977年埼玉生まれ。デザイナーの父のもとに生まれ、自身もテキスタイルデザインなどを学び、2006年に〈ホワイトマウンテニアリング〉をスタート。個人では国内外のブランドや企業のディレクションなどを手掛け、現在はユニフォームデザインも担当した「北海道コンサドーレ札幌」の取締役にも就任している。
Instagram:@yosukeaizawa

ー相澤さんの時計観を伺うにあたってまずお聞きしたいのですが、ご自身の時計の原体験はいつごろ、どんなモデルだったんですか?

相澤:一番最初は〈スウォッチ〉ですかね。高1ぐらいの時の。『Boon』とかの雑誌が盛り上がっていて、〈カシオ〉の「データバンク」か〈スウォッチ〉か、みたいな流れがあって。両方とも買った気がします。あとは「Gショック」もそうかな。

ー当時はトイウォッチブームのようなムードがありましたもんね。

相澤:そうですね。お金もそんなに無かったし、高校生のお小遣いで買えるもの、って言うとやっぱりそういうものになりました。

ーはじめて自分の腕に時計をつけた時の感覚って、覚えていますか?

相澤:シンプルに大人になったような気がしました。みんな高校生くらいになったら時計をする、みたいな時代だったんですよね。その後、大学生の時には頑張って(オメガの)「シーマスター」を買って、それは結構長いことつけてたのかな。

―そこから時間が経って、いまでは手元に一部だけでもこれだけの時計がある訳ですが、本格的に自身のスタイルや仕事で時計の必要性を感じたターニングポイントはありますか?

相澤:そうだなぁ…。まだぼくが前の会社で働いてる時に親父が亡くなって、この「スピードマスター」を遺品として受け継いだ時かな。高級時計はあまり好きじゃなかった親父だったけど面白い時計を持っていて、最後はそれだけが残っていました。それで、「あぁ、こういう時計っていいなぁ」とおぼろげに思って。それが25、26歳くらいでした。当時はお金もないから自分ではなかなか買えなかったんですけど、「時計っていいな」と思いはじめたのはそれくらいかもしれないですね。

OMEGA
Speedmaster
相澤さん自身が最も長い時間を共にしている「スピードマスター」は、亡くなったお父さんの数少ない形見のひとつ。「いまはもうほとんどつける機会もなくなりましたけど、手放すことはないですね」

―やっぱり感情移入するきっかけとしては大きかったんですね。

相澤:それからいまぐらいの感じになる頃には海外の仕事が増えていて、いろんなことをする中で出会うブランドのひとだったりデザイナーのひとたちだったりが、みんなそれぞれ個性的な時計をつけていて、そこにすごく目が行くようになったんです。それで自分でもいいものを買おうかなと思って、ちょうど復刻が出たばかりの(ジャガー・ルクルトの)「ポラリス」を買ってみたんです。そうしたら仕事で会ったひとに、「それは新しいやつ?」とか「ぼくもルクルト好きなんだよね」っていう風に聞かれて会話のきっかけにもなったりして。ぼくの中ではサッカーの会話と時計の会話に同じような感覚があるんです。コミュニケーションのひとつのきっかけとして、男のひとが持っていて分かりやすいものなんだな、って。

ZENITH
Model Unknown
60sの〈ゼニス〉はモデル名不詳。イタリア中北部の街、チェゼーナに仕事で訪れた際に、現地のアンティークショップで購入した1本。「すぐに止まっちゃって、1年くらいかけてオーバーホールしました(笑)」

OMEGA
Speedmaster MARK II
グレーのダイヤルに蛍光オレンジのインデックスと秒針を取り入れた、レトロモダンなデザイン。「これは〈ハンティングワールド〉の仕事をしていた時に、イタリアの代表の方から頂いたものです」

―ストリートのユースのTシャツやキャップなんかと近いのかもしれないですね。ただのステータスシンボルとしてじゃなく、そうやってもう少し深く個性が反映された時計の方が相手にとっても面白いでしょうし。

相澤:ステータスは全然気にしないです。ぼくはいい時計もめちゃくちゃ雑に扱うし(笑)、鞄の中にそのままポンと放り込んじゃうようなタイプ。セカンドハンドで売ろうっていう気はゼロです。それに、投資案件みたいな感じがあんまり好きじゃないんですよね。例えば〈ロレックス〉だったら、どうしてもいまって「買えるか? 買えないのか?」みたいな話になっちゃうじゃないですか。それよりも、そこにストーリーがあるかとか、そういう目線で見ちゃいます。

―新品の「パテック フィリップ」が運よく買えて、そのまま売るだけでものすごい利益が出るとか、そういう話題になりがちですよね。

相澤:理解はできるけど、それってなんか寂しいなと。ぼくがデザイナーの目線というものあると思うんですが、やはりプロダクトのストーリーを大事にしたいですね。「ノーチラス」は素晴らしい時計だし、いつかは欲しいという気持ちもありますが、いまじゃない。それが何故かっていうといまの「ノーチラス」の立ち位置が自分のポジショニングと合ってないように思うからで、〈オーデマ ピゲ〉の時計も買ってみたけどなんとなくつけ難くて「なんかいまこれ全然似合わないなあ」みたいに思って距離を置いたりもしています。

―確かグレーのダイヤルの「ロイヤル オーク」でしたよね?

相澤:そうです。そのうちもっと歳を取ってきて、50代、60代とかになったらまたしようかな、みたいな。そういう自分に対しての先行投資みたいなところはあると思います。クルマは走った分だけ価値が下がるけど、時計は消耗品じゃないですから。ぼくはネックレスとかピアスとかのアクセサリーをあまりつけないので、単純に唯一のアクセサリーが時計だって思っているところもありますね。だから自分のファッションとか、家とかクルマとか、そういうものとリンクさせたいなって。

Patek Philippe
Gondolo
より装飾的な現行モデルとはフォルムが異なる「ゴンドーロ」。「シンプルなレクタングルの時計を探していた時に見つけました。黒いスーツの時は大体いつもこれです」

―今日、見せてもらった私物だけでもテイストの幅の広さを感じますが、相澤さんが時計選びで一番重視するのはどんな部分ですか?

相澤:自分にフィットしているかどうかですね。それはひとがつけている時計にも思うことで、スタイルと時計が離れているのって違和感があって、腕だけ一人歩きみたいになるのは嫌だなと思っています。あとはなるべくそのブランドやモデルの背景を調べて共感できる内容があるかどうかですね。値段の高い安いとか希少価値で図ることはほとんどないです。

―とはいえ、単純に高級であることに嫌悪感があるわけではないですよね?

相澤:セカンドハンドで値段があまりにも上がっているものとかには興味がないかもしれないですね。アートも時計も投資対象としてのマネーゲームになってしまっている現在では難しいですが、遠からずものをつくっている人間として適正な価値というのは重要だと思っています。アンティークって呼ばれるようなもの以外は、なるべくそのブランドのお店で買いたいです。可能な限り正規店で買うっていうルールが自分の中にあります。

―なるほど。機械式時計のような複雑なものの真価をちゃん見極めて選ぶのが素人にはすごく難しいのも事実としてあるとは思うので、ブランド名やフェイムに頼りたくなる気持ちも分からなくはないですけどね。

相澤:中身についてはぼくもそこまで詳しくないですよ。例えばムーブメントとか、そこにロマンがあるのも分かるけど、クルマで言えばエンスーみたいにエンジンがどうだ、とかっていうことより、デザインやフォルムだったりストーリーの成り立ちっていう方がぼくは好きです。想像できるから、時計って面白いじゃないですか。「このひとってこういうひとなのかな」って。ぼくはスノーボードも好きだし、テニスも好きなんですけど、その時も機械式時計の高いものをしてたら、「あんまり考えてないひとなんだな」って思われちゃうだろうし。やっぱりそのひとにフィットしてるかどうかが大事だし、ずっとつけていると時計は自分に似てきちゃうと思うんですよね。

Swatch
ONCE AGAIN
CASIO
G-SHOCK (写真2枚目) アクティブ&アスレチックシーンの定番がこの2本。「時間が見やすいし、短パンにTシャツかポロシャツっていう時の腕周りに合います」という〈スウォッチ〉はテニス用で、タフな「Gショック」はスノーボード用。

OMEGA × Swatch
MOONSWATCH
未だ話題の、ウォッチメーカー同士によるコラボレーション。「ずっと〈オメガ〉も〈スウォッチ〉も愛用してたから、これは持っておきたいなと。『サターン』と『マーキュリー』の2本を買いました」

―いま現在で、気になってる時計や、いつかつけてみたいモデルはありますか?

相澤:うーん…いまは無いかなぁ。強いて言えば単純にドイツ時計っていうのはつけたことが無いから、〈ランゲ&ゾーネ〉の「ツァイトヴェルク」とかは欲しいなと思うけど、いまはまだ多分似合わないなと思ってます。あれはSUVに乗ってたら似合わない時計だよな、とか、自分が60歳くらいになったら似合うかな、なんて思っています。そういう全部のフィット感みたいなところは気にしています。

―でも、これだけ時計をお持ちだと当然つけ分けると思いますが、その日の時計はどんな基準で選ぶんですか? 行かれる場所ですか? それともご自身の服装とのマッチングが優先ですか?

相澤:ぼくは大体同じ様な格好が多いのですが、実は素材やシルエットなど自分にしか分からないだろうけど、その日の気分で少し変えているんです。その時に時計も一緒に選んだりしています。あとは会うひとに合わせたり、その時に乗るクルマかな? 「今日は山にドライブしよう」という時と仕事で重要な案件がある時、サッカーを観に行く時とか状況によって変えるのが好きですね。

―いまはクルマは何に乗られているんですか?

相澤:一番乗っているのは(ポルシェの)「964」です。今日持ってきた中だったら、(ブレゲの)「トランスアトランティック」がそれには一番合うかなぁ。ハンドルを握る時に馴染まないから大きいサイズの時計はあんまり好きじゃないんです。(ケース径は)40ミリくらいまでがちょうどいい。

Breguet
Type XX (Transatlantique) 「フランス海軍航空部隊」のために設計されたというルーツを持つパイロットウォッチ。6時位置のデイト表示がアイコニック。「ジャケットを着る機会が増えたので、こういう歴史のある時計がつけたいなと」

―他にご自身のクルマと時計の組み合わせで気に入っているものはありますか?

相澤:もう一台新しい(ランドローバーの)「ディフェンダー」があるんですけど、それに乗る時は〈グランドセイコー〉とかがいいかなぁ。

Grand Seiko
Evolution 9 Collection “SBGE283”

パワーリザーブ表示がアクセントになった、〈グランドセイコー〉のスポーティなGMTモデル。長野県塩尻の事業所内にあるマニュファクチュールで生産されたもの。「そういうローカリズムみたいな部分にすごく共感しています」

―スイスウォッチがやっぱり多くて、先ほどお話に出た〈ランゲ&ゾーネ〉のようなドイツ時計も視野に入っている中で、国産時計にも食指が動くんですね。

相澤:最初の話と同じで、やっぱり若い頃に買えるのって「データバンク」だったり「Gショック」だったり、そういうものじゃないですか。それにぼくは日本車も好きで、軽井沢のアトリエに置いてあるのは「スバル」で、以前は〈レクサス〉にも乗っていました。日本のものづくりっていうのはやっぱりアジアでトップだと思っているし、自分のイメージで時計をつくってみたいなと思って〈セイコー〉さんとのお仕事もはじまって。それに、例えば〈ロレックス〉ってめちゃくちゃひとと被るじゃないですか? みんなが〈ロレックス〉をしてる中で、〈グランドセイコー〉とかをつけていたら面白いんじゃないかな、って。まあ完全に自己満足ですよ。

White Mountaineering × SEIKO
× GIUGIARO DESIGN

FIRST MODEL(LEFT) SECOND MODEL(RIGHT) THIRD MODEL(CENTER) 全3回に渡る〈ホワイトマウンテニアリング〉と〈セイコー〉によるコラボシリーズはオールブラックのデザインが特徴的。「もともとジウジアーロのデザインが好きで、それが復刻されるというタイミングでお声がけいただきました」

―目利きぶりとあまのじゃく感が両方あって面白いですね(笑)。

相澤:(笑)。やっぱり時計って、そのひとの成り立ちみたいなものが出てくるじゃないですか。どうしても高額なものが多くなるからある意味で批判の対象にもなりやすいものだけど、そこをちゃんと個性でバランスが取れていると、一番格好いいなと思います。なんでその時計を買ったのかって、ぼくは大体覚えていて。その時にしていた仕事とか、訪れた街とか。そういう思い出が残るものが、やっぱり好きですね。

Photo_Kazuma Yamano (Ⅰ), Tohru Yuasa (Ⅱ)
Text_Kei Takegawa (Ⅰ), Rui Konno (Ⅱ)
Web & Design_BONITO / Rhino inc.
Edit_Ryo Muramatsu
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