自分たちがかっこいいと思うもの、好きなものは変わらない。
ー決してひと通りが多くない場所でスタートして、どのように「ネペンテス」を博多に根付かせていったのでしょうか。
松本:〈ニードルズ〉や〈エンジニアド ガーメンツ〉、〈サウス2 ウエスト8〉を筆頭に、「ネペンテス」にはさまざまなブランドが存在しています。そうした中で、ぼくたちは常にセレクトショップであるという気持ちを抱きながら営業を続けてきました。東京や大阪もそうかもしれませんが、各店で自分たちが提案したいスタイルを打ち出してきたんです。どういったアイテムを仕入れるかはもちろんですが、その上でレイヤードの仕方や着方の部分で「ネペンテス」らしい特徴をだしてきたつもりです。
ーそれがお客さんに徐々に浸透していったわけですね。
松本:はじめはブランドのファンの方々がお店に来てくれました。当時は〈エンジニアド ガーメンツ〉がとくに人気だったので。そこからすこしづつ、地道にお客さまとコミュニケーションをしながら「ネペンテス」のファンを増やしていったんです。
ー地域とのコミュニケーションもあるんですか?
松本:飲食店で顔見知りのひとに優しくしてくれたりとか、そういうコミュニケーションが結構あるんですよ。そういう交流も自分たちは意識してます。近くのお店にランチを食べにいったりとか、仕事が終わったあとみんなで食事にいったりとか。そうやって地域と繋がることで、深い関係性が生まれます。
ーそれは一朝一夕にできるものではないですよね。
松本:そうですね。はじめの頃はお店の知名度もなかったので、地域の方々には不思議な目で見られていたと思います。だかこそ続けることが大事だと思ってがんばってきましたね。
ー変化がたくさんあった中で、逆に変化しなかったことはありますか?
松本: かっこいいと思っているもの、好きなものは変わらないですね。だからこそ、自分たちが提案するスタイルもブレずに説得力をもってお客さまに伝えることができたんじゃないかと。お客さまの中には「むかし買った服がいまでも着られる」とよろこんでくださる方がいるんです。年月が経っても定期的にここに足を運んでくれるというのは、そういうことなのかなと思ってますね。
ーひとりでそれをするのは簡単ですが、このお店には個性的なスタッフの方々が揃っています。チームとしての連携も大事になってきますよね。
松本:そうですね。当然ですが、「ネペンテス」が好きで集まってきたスタッフが揃っています。一方で年齢の幅も広いんです。それはアドバンテージであると思うんですが、一歩間違えたら、大きな不利益にもなりかねない。なので、スタッフとのコミュニケーションを取ることをとくに意識しています。服はもちろんですけど、音楽や映画なども含めて、好きなものをみんなでシェアしあったりするんです。それを起点に議論を交わすことで、なにが良くてなにがダメなのか、そういう共通認識をスタッフと一緒に築き上げています。
ーみんな個性があるのに、不思議と統一感を感じるのはそういうことなんですね。
松本:シーズン毎にコレクションを見ながらみんなで話し合うこともしていて。それによって仕入れも変わるし、お店が提案するスタイルも変わってきます。統一感が生まれるのは、そうやってみんなでお店をつくっているからだと思ってます。それは「NEPENTHES HAKATA」ならではの強みでもありますね。アイテムに魅力があるのはもちろんですが、それ以上にひとを信頼して買ってくれている部分もあって。お店をやる上では、ある意味当たり前のことなのかもしれませんが、お客さまと濃い関係性を築き上げている自負がありますね。