PROFILE
1977年生まれ。原宿の老舗古着屋「ベルベルジン」のディレクター兼ヴィンテージデニムアドバイザー。ヴィンテージデニムの権威として知られ〈ニューマニュアル(New Manual)〉や〈ヤヌーク(YANUK)〉の商品開発にも携わる。その膨大な知識をもとに501®︎XXに特化した著書『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』のほか『教養としてのデニム ⽇本⼈が⾒出したヴィンテージの価値』も刊行するなど、多岐に渡って活躍中。
1冊の本がきっかけではじまった、リーバイス®︎との蜜月関係。
—藤原さんと〈リーバイス®︎〉の交流は、いつ頃からはじまったのでしょうか?
ぼくが2015年に上梓した『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』をつくる時に協力してもらったのがきっかけで、〈リーバイス®︎〉本社の内田さんやデザイナーのポールさんとの交流がはじまりました。
実はその頃の〈リーバイス®︎〉はアーカイブルーム用の資料に関してはアメリカ国内で収集することに力を入れていたこともあって、各年代のオリジナルピースがほとんど保管されていなかったそうです。それが、この本を出したことがきっかけになって「本に載っている年代のデニムを譲ってくれ」と相談されるようになり「フェイクα」の在庫から見繕ったり、所有している方々に「里帰りさせましょう」と声を掛けたりして、たくさんの本数をアーカイブルームに納めさせてもらうことからお付き合いがはじまりました。
—好きが嵩じてつくった本がきっかけになって、本家本元からも認められて一緒に仕事するようになるのは夢がありますね。
〈リーバイス®︎〉の501®︎の150周年記念のイベントに出席した際にぼくもアーカイブルームに入らせてもらいましたが、巨大な金庫のなかに棚がつくってあって、その中にはものすごいスペシャルヴィンテージが大量に保管してあるんです。
90年代にぼくが『Boon VINTAGE リーバイスの歴史が変わる』という雑誌を見て「物凄いものなのに、なんでこんなに小さく載せてるんだ」と憤っていた1870年代製のブラウンダックのプルオーバーシャツの実物から大戦モデルのデッドストックまで貴重なヴィンテージを取り出して見せてもらったり、夢のような時間でしたね。本社スタッフでも限られた人間しか入れない場所ですし、日本人で立ち入ることが出来た人はそうそういませんので光栄な話です。
—ヴィンテージブームは日本からはじまったこともあって日本のブランドのほうが深掘りしていると勝手に思っていましたが、そんなことは無いんですね。
いまの〈リーバイス®︎〉は想像がつかないほど物凄いコストや時間、情熱をかけてヴィンテージの研究に取り組んでいますよ。501®︎XXの復刻を目指すブランドは数多くありますが、膨大な量のアーカイブを自社で保有して研究をしているのは〈リーバイス®︎〉の強みのひとつです。そのうえでぼくもずっとヴィンテージを扱ってきた経験がありますので、お互いに共通の世界観のもとでうまくキャッチボールができるようになったのかな、と。
ぼくらはヴィンテージを扱っている以上、基本的に〈リーバイス®︎〉に対しては「こんなに素晴らしいものを生み出してくれてありがとう」という感謝の気持ちしかないんです。本を出したのは本当にデニムが好きでずっと追求してきたモノに対する恩返しをしたいという思いもありましたから、ぼくが知っていることなら何でも伝えたいし、いくらでも協力をしたい。そうやってヴィンテージにおける理解が深まることで〈リーバイス®︎〉の発展に繋がればいいな、と思っています。