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現代のリアル、ノアの約束。
And On The 8th Day….

現代のリアル、ノアの約束。

アダムとイブの原罪から幾星霜、いまだリンゴを握りしめて離さない現代の人々。人間の欲というのは本当に恐ろしいけれど、そこに異を唱えるのもまた、知恵ある者の営みであるはず。〈ノア(NOAH)〉はいくつもの問題を抱えるファッションの世界にあって、いつだって大量消費の世の中や利己的な企業姿勢に疑問を投げかけてきました。ストリートカルチャーの魅力やハイプゲームの明暗を誰よりもよく知る彼らが、いまの社会に想うこととは。

根底にはパンクロックの精神があって、どんなことに対しても自分らしくありたい。

―素敵な理由だね。ふたりが環境意識やCSRの伴わないものづくりで違和感を感じた中で、顕著なものがあったら聞きたいんだけど。

ブレンドン: どこもそうだと思うよ。40年間そういうものを見続けてきたことが、自分をこういう選択に導いたんだと思う。いまの社会ってなんでも過剰な上にちょっと気怠げな感じでさ、つくられるプロダクトは便利さばかりが追求されてて、その多くはチープだし使い捨てられてる。どこもかしこも生産過剰で、物が多すぎる。歳を重ねていろんなことを知って物事の仕組みがわかってくると、いかに現状がヤバいかがわかってくる。責任ある経営がなされてないのが普通になってるんだ。例えば排ガスだとか、業界規模の人権侵害だとか、いま世界が抱えてる多くの問題もそれが大きな原因だと思う。その代償を支払わされるのはいつも世界の貧困層だし、そんなの間違ってるよ。一度実態を知ったらそんな無責任な選択はもうできないよね。そりゃあ経営の難しさはグッと上がるし、利益はもちろん減るけど、地球や人に対しての害も減らせるから。

―ミース・ファン・デル・ローエじゃないけど、「Less is More」だよね。デザインだけじゃなく、社会や生活も。

ブレンドン: ぼくらの根底にはパンクロックの精神があってさ、どんなことに対しても本当の自分らしくありたいんだ。ファッション業界は効率を求めてみんな一斉に、同じことをやるっていうような習慣があるけど、ぼくらはそれが気に入らなかったから好きなことを好きなときにやってきたし、買ったら一生使えて、その人らしく楽しんでもらえるような高品質な物づくりをしてる。大事なのってそういうことだよ。それでも多くの企業はモノを売りつけるためにみんなをひとまとめにして似せようとしてくるし、それで次の年にはまた新しいものを売るためにまた違うことを言うんだ。

―それで言うと、CSRだとかサステナビリティだとかって言葉を耳にする機会は格段に増えたけど、それが実の伴わない、コマーシャライズのための謳い文句になってるような気もするよ。

エステル: 本当にひどい。まるで洗脳よね。

ブレンドン: そういうのってリアルじゃないし、そもそも実現しないからね。だから僕らは企業と消費者の関係性の大切さについて発信してる。目指してるのはより良いものづくりと、利益を減らすことも受け入れることだね。企業って成長して、拡大し続けることも可能だけど、それでも大丈夫だって思ってる人が山ほどいるのが本当に問題で。クレイジーだと思うし、そんなのただの拝金主義だよね。責任ある決断や運営をしてたら成長には限りがあって、ずっと続くものじゃないと僕らは思ってる。でも、そんな大企業みたいな大金なんて要る? みんな、成功だとか、本当の豊かさに対する考えを再構築しなきゃいけないんじゃないかな。そのためには社会全体の認識から変えなきゃならない。もう、本当に手に負えないところまで来ちゃってるから。

―でもさ、ファッションって儚いからこそ魅力的に映る部分も確かにあると思うんだよね。短命な分、輝くアイテムとかブランドとか。その上で、〈ノア〉がクールで企業としても持続可能でいられてるのは、どこに秘訣があるの?

ブレンドン: 〈ノア〉はトレンドを追ってないし、つくってるものだってシンプルだし、伝統を重んじたクラシックなものが多いんだ。でも、それをどうやって世に提示するのか、そこから何を語りかけていくかに、ぼくらにとってのクールさのカギと関心はあるんだよ。ほとんどのアイテムはぼくが10代の頃から着てたようなものだし、みんなにもトレンドじゃなく自分らしさでアイテムを選ぶように勧めてる。そうすればぼくらがやってることにも目が向くと思うし、〈ノア〉の服を楽しんでもらえると思ってるよ。

エステル: そうそう。新鮮さって組み合わせによっても生まれるもので、新しく買った服でも昔からの手持ちの服とどう合わせるかが大切なんだと思うわ。

ブレンドン: これは複雑な問題だけど、企業が、特にファッション業界が消費者心理をより高度に把握できるようになって大衆を操作できるようになったから、多くの場合、企業の思い通りに人はものを買うんだ。「これがクールなんだ」って何度も刷り込まれて、人は周りに受け入れられたい生き物だからさ、そのために買ってしまう。本当に自分が気に入ったものなのか、自分らしいのか、自己表現ができるのかなんて二の次で。ぼくらは自分たちがおもしろいと思えることに忠実にやっていて、いい服をつくって、責任ある事業をやってる。そこにみんなが共感してくれるとしたら、それってすごいことだよね。ぼくらは何億ドルも広告費を使ったりしないのにさ。もしそうなれば、メディアが扇動するいまの世の中で、ひとつの突破口になると思うよ。

―多くの人はふたりと直接会って話を聞くことは難しいかもしれないけど、その考え方がもっと伝わったらいいなとすごく思うよ。

ブレンドン: でも、ぼくらも自分たちのやってることが万人に向くものじゃないってことはわかってるし、人それぞれ興味も考えも違うからね。少なくとも〈ノア〉で買い物してくれる人にとってはリアルでありたいし、それがもっと多くの人に響いてくれたらとは思うけど、違ったら違ったで、それもアリだよ。その人にとって現実味が無いなら、必死になって買って欲しいとは思わないしね。

INFORMATION

NOAH CLUBHOUSE

住所:東京都渋谷区神宮前4-26-29
電話:03-5413-5030
時間:11:30〜20:00
Instagram:@noahclubhouse
noah-clubhousetimes.jp

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