CLOSE
FEATURE | TIE UP
スタイリストとの対話で紐解く香川で生まれたブランド、パース プロジェクト。
What is PERS PROJECTS?

スタイリストとの対話で紐解く香川で生まれたブランド、パース プロジェクト。

“神は細部に宿る”という言葉が大袈裟でも何でもなく、素直に受け取れるブランドが香川県にあります。その名も〈パース プロジェクト〉。生産のほぼ全てを県内を中心としたエリアで完結させるそのアイテムは、シンプルなデザインの中にディテールへの細やかな気配りが内包されています。今回はデザイナー 伊藤裕之さんとスタイリストの八木智也さんとの対話を通して、ローカルでモノづくりをすることの意味と意義を見つめます。

PROFILE

伊藤裕之

某ファクトリーブランドのデザイナーとして活躍し、2022年に〈PERS PROJECTS〉を立ち上げる。PERSはPERSPECTIVE「見通し、遠近法、完成予想図」とPERSONALITY「個性」を合わせた造語。着る人の思考、感性、生活様式を際立たせ個性を拡張するプロジェクト。無駄なものをすべてそぎ落としたミニマルなデザインと、上質な素材が織りなすデザインは、奇をてらう事無く着るたびに奥行きや深さを感じられる服をつくり出していく。

PROFILE

八木智也

1981年東京生まれ。文化服装学院卒業後、2004年にNYに移住。2006年よりスタイリスト竹中祐司氏に師事。2010年に独立と同時に帰国。現在はメンズのスタイリングを主軸に、雑誌、映像を問わず理想のファッションヴィジュアルを求めるべく日々奮闘中。

服それぞれの適切なウエイト。

香川県で誕生し、香川県でつくられる〈パース プロジェクト(PERS PROJECTS)〉。端正につくり込まれたそのアイテムへのこだわりは、伊藤さんのこれまで経歴無くしては語り尽くせません。まずはそのキャリアから振り返ります。

伊藤: 大阪府の芸術大学の染織学科を卒業した後、香川県のセレクトショップに入社しました。そこで主に国内外のバイイングを担当していて、古着のピックやブランドの買い付けなどを行っていました。でもそれだけじゃ幅を見せられないなと感じて、オリジナルブランドを立ち上げることになったんです。それをお願いしたのが、香川県内にある縫製工場。モノづくりをしていく内にどんどん細かい部分にもこだわりたい意欲みたいなものが湧いてきたんですよね。生地をつくりたいとか、こういう仕様にしたいだとか。自分にこっちの方が向いてるなという気がして、セレクトショップを退社後、その縫製工場にブランドをやりたいですとお願いをしに行ったら、二つ返事で快諾していただいたんです。そこでファクトリーブランドを立ち上げてデザイナーとして勤めていました。それから2022年に独立して、〈パース プロジェクト〉を立ち上げました。

長きにわたって香川県で服づくりをしてきた伊藤さんと相対するのは、スタイリストとしてのキャリアをニューヨークでスタートさせた八木智也さん。そんな八木さんはラックにかかった〈パース プロジェクト〉の服を手に取りながら話し始めます。

八木: シンプルなデザインも良いですし、着てみると軽い素材が多くて、ストレスのない服が多いですね。このリネンシャツとかすごく軽くて着心地が良いですね。

「リネンシャツと相性のいいブラウンのサンダルを合わせつつ、他のアイテムはダークトーンでまとめました。フェードがかったブラックなので、シャツのナチュラルな風合いともマッチしますね」

ヴィンテージさながらの色落ち具合とダメージが表現されたカットソー。チャコールグレーのようなスミクロは、焼けた肌に着ても暑苦しさを与えない。カットソーの他にも、スミクロのアイテムはスエットとサーマルTシャツが展開される。軽やかなタイプライター生地で仕立てられたパンツは、裾にドローコードを備えてシルエットに変化を与えることができる。「縛らずにしておいてもアクセントになっていいですよね」と八木さん。

軽く柔らかな生地を用いたリネンシャツは、50’sを想起させるオープンカラーのボックスシルエットでデザイン。身幅を大きく取っているため、ガバッと羽織ることができる。

伊藤: ありがとうございます。このリネンシャツは軽さを意識してつくっていたので、そこに気づいていただけて嬉しいです。自分自身、ストレスなく着たいと思ってますし、着心地はかなり気をつけていますね。服それぞれに適切なウエイトというものがある気がしてるんです。

八木: 適切なウエイトですか?

伊藤: はい。リネンって硬くて重いものも多いですし、それが悪いわけじゃないんですが、シャツに関しては軽く羽織りたい。軽くて柔らかい風合いを楽しんでもらえる生地を選びました。このリネンシャツは3シーズン目なんですけど、毎回アップデートさせていて理想系に近い一枚ができたなって思いますね。

八木: ほんと軽いです。100%リネンのシャツと、ポリエステルとか化繊が入ってる服だと長く使っていくとやっぱり見た目にも違いが出てくるものなんですか?

伊藤: そうですね、リネン100%の方がシワの入り方とか味わい深いものになると思います。

八木: やっぱりそうなんですね。若い頃はデザインのみで選んでワンシーズンで飽きちゃうみたいなことも多かったんですけど、大人になってから飽きずに長く付き合える服っていいなって思えるようになりました。時代によってTシャツとかもヘビーウエイトで硬い方が良かったり、逆に柔らかい方が良いとされることがあったり、移り変わっていくところもファッションの面白さですよね。

伊藤: そうですね、そういうところは柔軟に対応していきたいですね。

八木: 同じパターンでも柔らかい生地と硬い生地だと見え方って全然変わりますよね。〈パース プロジェクト〉はシルエットか、生地選びだとどちらが先なんですか?

伊藤: どちらの場合もあるんですけど、僕の場合はデザインやシルエットを先に考えて、生地を選ぶことが多いですね。

八木: そうなんですね。でもデザインに合う生地を探すのって結構大変ですよね?

伊藤: 大変です(笑)。でも僕の場合は、デザインに合わせた生地を選ぶ方が、最終的な仕上がりがいいように感じますね。

八木: なるほど。

伊藤: あくまでも自分はってところなんですけど、すごい素材を使ってるってことに捉われすぎるとそこに満足してしまって、シルエットの部分を疎かにしてしまうんじゃないかって思うんですよね。

八木: ファッションって着てる人の自己満足の部分が強いと思うんですけど、相手にどう見られたいかって思わせる要素もあるじゃないですか。例えば、赤い服を着てたとしたら、この人って派手好きなんだって思われたり、シャツを着てたら、しっかりしてそうに思われたり、シルエット一つでかなり印象変わりますもんね。

INFORMATION

PERS PROJECTS

オフィシャルサイト
Instagram:@pers_projects

このエントリーをはてなブックマークに追加