PROFILE
塩塚モエカ(Vo, Gt)、河西ゆりか(Ba, Cho)、フクダヒロア(Dr, Cho)によるオルタナティブ・ロック・バンド。インディーで活動を続け、2020年よりF.C.L.S.(ソニー・ミュージックレーベルズ)に所属。これまでに4枚のフルアルバムを発表している。2023年にはテレビアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」のエンディングテーマを担当。さらには現在放映中のテレビアニメ『推しの子』第2期のエンディングテーマも担当。2024年は初のアジアツアーも敢行し、国内に留まらない人気を獲得している。
表現したいことを模索したり、進化できるようにがんばっている。
ー先日、20周年を迎えたリキッドルームでのライブに行かせてもらいました。おふたりともクールに演奏するというよりは、楽しみながらライブをしている様子が印象的だったんですが、なにか意識していたことはあったんですか?
河西: リキッドルームの周年に出させてもらうのは、今年で3回目だったんです。そこではいつも自分たちの好きな曲をセットリストに入れていて、割と自由な気持ちで臨んでいるんです。ツアーだと新譜の曲を積極的に入れたり、フェスだったらはじめてのお客さんもたくさんいるから、自分たちの代表曲を入れたりしていて。だけどあの日はお祝いだったので、みんなで楽しむのがいちばんというのがひとつの目的だったんです。
ー普段のライブでは演出なども含めて緊張感のある演奏をされているイメージがあったので、違う一面も見れたような気がしました。音もすごく良くて。
塩塚: ツアーだといろんな規模の会場があって、その中でベストを尽くすんですけど、私たちはライブハウス出身なので、やっぱりリキッドルームみたいなところでやるライブは楽しいですね。
ー羊文学を取り巻く環境がここ数年で大きく変わってきたように感じるのですが、当事者としてどんなことを思っていますか?
塩塚: インスタのフォロワーが増えたって感じはしますね(笑)。あとは海外でライブができたのもうれしかったです。
河西: 海外は自分が行ったことのないところへ行けるのが楽しいですね。初めての場所なのにたくさんのお客さんが駆けつけてくれて、しかもみんな一緒に歌ってくれるんですよ。
ー昨年はテレビアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」のエンディングテーマを担当して、最近では『推しの子』第2期のエンディングテーマも手がけましたよね。そうしてメジャーのバンドとしての活動も増えてきたと思うんです。それでも音楽性が大きく変わることなく、自分たちのやりたいことをやっている印象があって。
塩塚: 周りのミュージシャンは難しいことに応えられる器用な方たちが多いんですけど、私たちはあまり難しいことができないんです。だから細部までこだわってつくられた音楽を聴いて、単純にすごいなって思います。自分たちも、もっとできるようにならないとなって思ってて。でも、できる範囲の中で表現したいことを模索したりとか、バンドとして進化できるようにがんばってはいるんですけど。
河西: だけど、メロディはいつもこだわっているし、曲を作るたびに進化していると思う。
ーそれは新曲の『Burning』もそうですか?
河西: 『Burning』もそうですし、過去にタイアップでつくった曲もそうですね。メロディでみんなに聴いてもらえる部分が、私はすごく進化していると思ってます。
塩塚: メンバーにそんなこと言ってもらえるなんて、どうもありがとうございます(笑)。
ー日本の音楽シーンに対して思うことはありますか? 羊文学のように3ピースで、なおかつストレートなロックサウンドのバンドって、むかしはもっとたくさんいたけど、いまは限られると思うんです。
河西: こんなにシンプルで3つの楽器しか鳴らしていないバンドって、たしかに日本のメジャーシーンでは珍しいかもしれないですね。
塩塚: ラッキーだなって思います。繰り返しになっちゃうけど、私たちは本当にこれしかできないから。GEMNさんがつくった『推しの子』のオープニングを聴いたときに、私は「これだ!」って思ったんですよ。原作の世界をしっかり表現しているし、90秒の中にAメロ、Bメロ、サビってあるんじゃなくて、そういう概念も超越した曲をつくってて。私は90秒という枠の中に閉じ込められているような気がしちゃって、それに苦戦したりもしたんですけど。
だから本当にもっと細かなことができたらいいなって思います。チャートも見ているし、いろんな音楽を聴いていて、miletさんが好きだなとか、tuki.さんの声も素敵だなって思ったり、あとはズトマヨ(ずっと真夜中でいいのに)さんも聴いていたり。YOASOBIさんも『Biri-Biri』が私は好きなんですけど、私にはつくれない曲だから。いまはできることを自分たちなりにやっているという感じです。