FEATURE
誰も聴いたことのない音を求めて。紫 今が音楽に込める想い。
Grew up with Music

誰も聴いたことのない音を求めて。紫 今が音楽に込める想い。

TikTokやYouTubeを中心としたデジタルメディアを最大限に活用し、いま最も注目を浴びるアーティストとして熱い視線が注がれる紫 今。今年の8月にはApple Musicの「Up Next Japan」にも選出され、勢いに乗ります。そうした事実が裏付けるように、彼女の本当の魅力は本質である音楽にあります。流麗で軽快なメロディと圧倒的な歌唱力、風刺的な歌詞、そしてさまざまなアイデアが詰め込まれたトラック。豊かな表現力によって放たれる彼女の音楽性と、世情を読む鋭い視点はどのように生まれたのか? 自身の歴史を振り返りながら、紫 今がいま考えていること、そしてこれからについて語ります。

音楽を通していろんなひとたちと討論ができた。

ーYouTubeでカバー曲の動画を上げる一方で、オリジナルの曲も同時につくっていたんですか?

紫 今: 弾き語りの曲はつくっていましたね。だけど、モヤモヤした気持ちを抱えていたんです。ギターで曲をつくる中で、ここでドラムのビートが入って、ここではピアノが流れて、ストリングスはここではじまって、という風に曲の構成も描いていたんです。だけど、私ひとりではそれを形にすることはできない。そこにもどかしさを感じていました。オリジナル曲を誰かに聴いてもらっても、弾き語りの表現しかできないから、私が思い描いているポテンシャルの1割くらいしか届けられないじゃないですか。

ー曲の骨格の部分しか聞かせられないということですよね。

紫 今: そういう悩みを抱えていたときに、父が「DTMやってみなよ」って言ってパソコンをプレゼントしてくれたんです。

ーそこからパソコンで編曲をするようになると。

紫 今: そうですね。ようやく頭の中で描いていた曲のポテンシャルを100%引き出せるようになって、すごく感動したし、音楽がもっと楽しくなりました。それでつくったのが「ゴールデンタイム」や「エーミール」っていう曲なんです。

ーその頃はYouTubeをアップしつつ、徐々に再生数も伸びて、手応えも感じていたんじゃないですか?

紫 今: カバーのほうはむしろリアクションが少なくなっていた頃でした。だから、そろそろオリジナルも発表しなきゃと思っていて。その頃にちょうどDTMをはじめたんです。それで「ゴールデンタイム」をTikTokに上げてみて。

ーどうしてYouTubeではなく、TikTokに?

紫 今: ちょうどTikTokが盛り上がっていたからですね。そしたらバズって、手応えを感じることができました。本当は不安だったんですよ。「これって曲として成立しているのかな?」っていう気持ちがあったので。

ーそれはどういうことですか?

紫 今: 自分自身が聴きたいと思って、なおかつこの世に存在しない聴いたことのない音楽をつくりたかったんです。聴いたことのない音楽だから受け入れられるかわからないし、そもそもそれって本当に音楽として成立するの? っていう疑問もあったりして。本当にジャンルレスなことをやりたかったんですよ。だからTikTokでバズって、ちゃんと音楽として成立していることに安心したんです(笑)。

ーその安心って、モチベーションになりますよね。

紫 今: 自信がついたし、いろんな曲をたくさんつくるようになりました。DTMって上手くなると、曲のクオリティもどんどんよくなるんですよ。進化している実感もありました。

ー紫 今さんの曲は、メロディもいいし、歌唱力もすごいし、歌詞も考えさせられるし、トラックも複雑なんだけどまとまりがあって聴きやすいなと感じます。

紫 今: もういろんな音楽が出尽くしちゃっているから。100%新しいものってないと思うので、だからいろんな要素を組み合わせたいんです。それも私にしかできない組み合わせを探すっていうのが、新しさやおもしろさに繋がると思ってて。私らしさは大事にしてますね。

ー「凡人様」の歌詞がとくにそうだと感じたんですが、社会的なことをポップに伝導させていて、世の中を俯瞰して眺めているように思ったんですが、どうですか?

紫 今: それはありますね。世代的にもインターネットが当たり前にあって、いろんな情報にアクセスできるので。私はX(旧Twitter)がいちばん好きで、いろんな人間社会を垣間見れるツールだと思うんです。そこからいろんなアイデアを得ています。

ーただ、SNSって危険性も孕んでいると思うんです。リテラシーを求められるというか。

紫 今: 学生時代からいろんなSNSの海を航海してきたので、そこは鍛えられていると思いますね。YouTube、TikTok、XもInstagramも、コメント欄にいるひとたちってそれぞれ違うんですよ。それをリアルタイムで直に受け取りながら育ってきたので、客観して見ることに慣れているというか。

ーそれがもう普通というか、当たり前のようにできてしまっている。

紫 今: そうですね。それぞれのSNSでリアクションが違えば、言葉選びも全然違くて、それは見ている層もきっと違うということ。それが私にとっての世間というか、多様性の証なんです。

ーそこで得たアイデアを楽曲にして、すべてをひとつにまとめる力もすごいなと思いました。表現力がとにかく豊かですよね。

紫 今: 曲が暗くなりすぎないようにすることを意識していて。私の曲ってアンチテーゼとか、風刺的な歌詞も多いので、それをあえてポップに明るい曲に乗せるようにしているんです。そっちのほうが言葉がすっと頭の中に入ってきて届きやすいと思うので。

私の父はボブ・マーリーが大好きで、小さな頃に「このひとは当時のジャマイカの辛い状況や、過酷で重たい出来事を明るく唄うひとなんだよ」って言葉でしっかりと教えてくれたんです。だからボブ・マーリーはむかしから私の中で生きていて、すごくリスペクトしているんです。

ーそれをしっかりと言語化して伝えてくれるのがすごいですね。

紫 今: 父も母もいろんなことを言語化してズバッと言ってくれるひとたちでした。それが正しいか間違っているかはさておき、哲学的なことや答えのない話、そういうことを父とよく討論していました。学校ではそういう話ができるひとがいなかったから、次第にいろんなひとと話したいという欲求も生まれて、音楽ならみんな素直に受け取ってくれるんじゃないかと思ったんです。どんなに思想が強くても、音楽で歌詞として聴くとスッと入ってくるから。

「凡人様」は討論を持ちかけている曲なんです。あの曲を聴いてくれたひとたちから、いろんな意見がコメント欄にきて。私自身もそれによって気付かされたこともあるし、中には「励まされた」と書いてくれたひともいて。私が投げかけた問題提起が誰かの励みになったのは、すごくうれしかったですね。音楽を通していろんなひとたちと討論できたのも楽しいですし。

ーSNSをポジティブに利用してますよね。

紫 今: フィードバックってすごく大切なもので、それによって新しい曲がうまれるかもしれない。もっともっと自分の哲学や考え方をアップデートしていきたいし、それが人生の楽しみでもあるんです。

INFORMATION

紫 今

Instagram:@mulasakiima
Apple Music:紫 今
mulasaki-ima.com

【リリース情報】

紫 今「正面」
9月25日(水) 配信リリース

【ライブ情報】

Mulasaki Ima LIVE 2024 "Episode 0+"
日程:10月24日(木) 
場所:代官山UNIT
時間:OPEN19:00 / START19:30

紫 今、初のワンマンライブ、"Episode 0"東京公演が即日ソールドアウトにつき、 "Episode 0+"として追加公演が決定しました。

e+:http://eplus.jp/mulasakiima/
ぴあ:https://w.pia.jp/t/mulasaki-ima-24/
ローソンチケット:http://l-tike.com/mulasaki-ima/

制作:クリエイティブマンプロダクション
https://www.creativeman.co.jp/event/mulasaki-ima24-0/

a.c-link { text-decoration: underline; }