変わらないからこそ、そこに憧れ続けることができる。

ーそうしたストーリーにもある通り、受け継ぐことができるのは、〈レッドウィング〉の質実剛健なつくりがあってこそだと思うんです。
阿部:今回のキャンペーンは2021年から行っている「OUT OF FASHION」という取り組みから派生して生まれたものです。「時代遅れ」とか、「廃れた」という意味があるんですが、裏を返せば「流行に左右されない」というポジティブな意味としても捉えることができます。トレンドに合わせたものづくりを行なうと、自分たちのコアがブレてしまいますよね。〈レッドウィング〉はファッションブランドではなく、ワークブーツのブランドです。だからトレンドを追いかける必要はない。自分たちが納得のいくものづくりをひたむきに貫いてきたからこそ、時代を超えて幅広い世代の方々に愛されるブーツが生まれているんです。
ー時計の世界においては、ひとからひとへと受け継ぐカルチャーがあると思うんですが、靴ではなかなかそういったことを聞きません。だからこそ、新鮮に映ります。
阿部:〈レッドウィング〉の直営店で働く若手のスタッフは、お父さんの影響でブーツを好きになったひとが多いんです。彼らが小さい頃の写真を見ると、〈レッドウィング〉を履いて子どもを抱っこするお父さんの姿があって。

レッドウィング・シューストア 福岡パルコ店スタッフとお父さん。
ー若い世代にもその魅力が受け継がれていると。
阿部:一方では若いお客さまも、そうした方が多いですね。お父さんが履いているのを見て来られたとか。そうやって循環が生まれているんだなと実感しますね。女性のお客さまだと、お父さんや彼氏が履かれていて、いいものだと分かったから自分も欲しいと思って来たと仰ってくれる方もいます。


ー「ファッションブランドではない」と先ほど仰られていましたが、創業当時の想いみたいなものが脈々と受け継がれ、それがプロダクトに表れている。そこに多くのひとが魅了されているのだと思います。
阿部:良くも悪くも変わらないからこそ、そこに憧れ続けることができる。「あの時代のあのアイテムがよかった」という話をすることってよくあるじゃないですか。だけど、〈レッドウィング〉が好きな方って、そういった表現はされないんです。「これがいい」と言い続けて、長く愛用される。
ーだからこそ愛着が湧くし、仮に履かない時期があったとしても、捨てることなく手元に残したくなるわけですね。
阿部:新しく買い直すという選択肢もあるはずなのに、愛着があるからメンテナンスを繰り返して、同じものを大切にされる。そうした特別な1足だからこそ、大切なひとに譲りたいという気持ちが生まれるんだと思います。
