「何もしてなくても、そいつがスタジオの中にいるだけで音が変わることもある」。

―本当になるべくして、このメンバーになったという感じがしますね。YONCEさんはサチモスの活動休止以降、曲作りはしていたのでしょうか?
YONCE:はい。でも、コロナ禍のときはライブも制限があったりしたし、これはいま表立って何かやる時期じゃないのかなと、同じぐらいの時期にデビューした同世代のアーティストたちの中で唯一と言っていいぐらい何もしてなかった気がします。でも、もちろん家で楽器をポロポロ触ったりする時間はあって。最初に出したEPの『2000JPY』は、その頃に作った曲がほとんどで、それをバンドのみんなにいじくり回してもらい、原型をぶっ壊そうみたいな感じで作りました。だから、いま考えると気持ち的には世相を反映していたり、なんか暗かったなという気もしますね。
―いつかバンドで何かしら形に、という気持ちもあったのでしょうか?
YONCE:いや、その当時はこうやってお話をするような感じで音楽をやるかどうかというのは決めてなくて、家でひとりでやるので満足でした。排泄に近いような、やっとかないと気分悪いので作っていたという感じです。
―今作『Chance』の収録曲たちもそうですが、いつも作詞と作曲、編曲のクレジットが個人ではなく、ヘディガンズというバンド名義になっていますよね。
祐輔:どこまでが作曲、編曲という境名を自分はあんまり意識したくなくて。ベースラインひとつ考えるのも作曲行為だと思いますし、もっと自由な発想でみんなで作っていきたいという風に思っているので、そういう形になったのかなと思います。
本村:同意見ですね。実際分けようとすると大変なんです。
祐輔:もっと言うと、何もしてなくても、そいつがスタジオの中にいるだけで音が変わることもある。
―カッコいいエピソードだなあ。まさにバンド、ですね。
大内:そうなんですよ。お気付きかもしれませんが、ぼくたちバンドなんですよね(笑)。
―(笑)。でも、ヘディガンズを聴いていると、「やっぱバンドって良いよな」と本当に思います。
YONCE:そうですね、それは自分たちもやっていて思います。

―メンバー内で好きな音楽は、近しかったりするのでしょうか?
祐輔:すごい近いと思います。それがデカいよね?
本村:根っこの好きなものは同じで、やりたいことが各々ちょっと違うというのが、すごくバランス良いと思います。とっ散らかりそうになっても、根本が一緒だから綺麗にまとまるような感覚はあります。
YONCE:そうだね。各々が行きたい方向に行っても、結局戻って来れるというのも大きいし、他のメンバーがタッチしたことには興味を持つので。そんなのがあるんだと知れることがいっぱいあって、それが俺は楽しいですね。
―例えばよく名前が挙がるアーティストはいますか?
祐輔:基本的に古いロックが好きというのは、みんな共通してありますね。
本村:具体的なところで言うと、制作の時によく名前が出たのは、ザ・フーやクラッシュ、ビートルズなどですかね。もちろんもっとたくさんありますけど。
将治:自分は、みんなで作ったものに興味があるという感じがあります。ヘディガンズのファンなのかもしれない(笑)。共通して好きなものはあるけど、それに寄せていく感覚はなくて。
祐輔:そうだね。みんなで好きな音楽の話をして、盛り上がっている空気感が曲に入っている感じがしますね。
大内:スタジオの隣の部屋で、みんなで集まってタバコを吸ったり、ご飯を食べたりする場所があるんですけど。そこでみんなでYouTubeを観たりして、盛り上がっているんです。
将治:制作のときにいちばん最初によく聴いていたのは、ニール・ヤングかもしれないですね。
YONCE:確かにそうだ。ああいった滋養たっぷりな音楽というのは好きですね。
大内:いい意味でただのバンド、という感じがありますよね。装飾されていない、村人AとBで組んだバンドみたいな雰囲気というか。
本村:音の側の部分というより、スタンスであったり、関係性であったり、何故こういう発想になったのだろうとか、もう少し奥に入り込んだ部分に影響を受けているかもしれないなと思います。