言葉からはじまる服づくりのストーリー。
それではここで2024年秋冬コレクションの代表作を吉本の言葉と共に紹介します。タイトルは日本語で “分解” を指す「Decomposition」です。
「このコレクションは自分が企画協力者のひとりとして参加した、『21_21 DESIGN SIGHT』の展覧会『ゴミうんち展』のテーマと繋がっています。この展覧会についてリサーチを深める時間が〈アマチ〉のコレクションをつくるタイミングと重なったので、あえて関係性のあるものにしました。あらゆるものが循環され、分解されていくさまを衣服に置き換えた時にどうなるか、そういったことを服づくりの考えに転換しました」

Traces of Repair – Sweater
¥79,200
「人工物を補修して繰り返し使っていくようなプロセスが美しいと感じ、補修された痕跡をデザインのモチーフにしています。ダブルジャカードで編んでいて、裏にグラデーション染めのウールを使い、表のキッドモヘアを部分的に抜いて、そのグラデーションを見せています」

15 Gradation Knit Jacket
¥231,000
「これは15段階のグラデーションからなるハンドニットです。手編みで生産できる限界の色数に挑戦しました。ものが土に還る時、徐々にグラデーションのように酸化されていくさまをモチーフにしています。ボタンは以前からコラボレーションしているフランス人陶芸家、エリーゼ・ジェトリフィによるものです」

Covered Baggy
¥74,800
「フロントからバックまで入り込む、独特なカッティングで体のフォルムを覆うバギーパンツ。『21_21 DESIGN SIGHT』で展示している彫刻作品のひとつの元になったパターンでもあります。ファブリックはデッドストックのチェックメルトンを使用しています」

Loop of Fabric Intent
¥396,000
「過去のコレクションで制作したさまざまなファブリックをハンドステッチで再構成しながらつくり上げた、リバーシブルの中綿入りベストです。服のアウトラインのみ縫製工場で仕立て、その後の手作業を自分自身で行なっています。この写真で裏にあたる面は今シーズン開発した生地で、リネンのストライプがクリンプしたウールの奥に隠れている微かな柄です」
そして、最後は2025年春夏コレクションの服を見ていきます。テーマは「Between and Beyond」。自然現象にフォーカスした内容で、何かの狭間にあるものや現象、膜の向こう側にあるものをモチーフにしています。これが現在のアトリエでつくる最初のシーズンで、新たに見た風景から着想したものが多いといいます。

Gradation Linen Shirt
¥79,200
「毎日、霧がかった道を歩いているのですが、そこにいつも独特な影が落ちていて。そんな現象に触れるなかでテーマにした言葉が出てきました。このシャツはリネンのファブリックが特徴的です。よく見ると、グラデーションのボーダーになっていて、糸の太さを細い糸から太い糸へ4段階変えています。着ると内側が少し透けて、光が差し込んだ時、なかに合わせた服が霧がかったように見えます」

Between Fabric Jacket
¥198,000
「これはコットン、リネン、シルクを組み合わせた接結二重織りの生地で仕立てています。この二重織りには生地同士を繋ぐ糸があって、その接結糸と、生地と生地の間にある構造を見せたいと思ったところから発想しました。ボタンは宮城・白石蔵王にある石材所『大蔵山スタジオ』で伊達冠石を削り出したものです」

Meeting Jacket – FO – Records of Phenomena
¥77,000
「メインコレクションとは別につくる『コレクション000』のミーティングジャケットです。私たちが純天然染色と呼ぶ、すべてのプロセスで化学的処理を施さない手法で染めたジャケット。このグレーは長年協業している京都の職人にお願いし、栗のイガとログウッドをブレンドして出している色です。この光のような、影のような模様は今シーズンから新たにはじめた技法で、天然染料が柑橘系の酸に反応して色が抜けることを利用し、レモン汁と植物を使い即興的に柄をつくる『Records of Phenomena』というシリーズです。日々、アトリエ付近で目にする自然現象をそのまま衣服の上に痕跡として写し取り、さらにそのプロセスもナチュラルな染料と植物の反応によるもの。おもしろいものが生まれたと思っています」