自分がいいと思うビールを自分の責任でつくりたい。
石井: ビールづくりはどのように進行していったんですか?
横溝: ぼくたちのビールは「Hobo Brewing」の川村洋平さんというブルワーがつくっています。
石井: どうしてその方に頼んだのでしょうか?
横溝: 札幌に「BEER CELLAR SAPPORO」っていうクラフトビール専門店があるんでが、そのオーナーの森岡さんと〈サウス2 ウエスト8〉の三浦が知り合いで、まずはその方に相談してみたんですよ。それで川村さんをご紹介いただいたんです。川村さんは北海道の醸造家で、ぼくらとしても北海道にこだわりたかった。だから本当に適任者だったんです。
石井: それで4つのブランドのコンセプトを落とし込んでいったわけですね。


横溝: その通りです。それぞれのブランドの個性をビールで表現するという作業です。こちらの要望を「Hobo Brewing」に伝えて、それを形にしてもらいました。
石井: クラフトビールってIPAとかいろいろスタイルがありますが、ラベルを見るとそれぞれスタイルが異なりますね。
横溝: 4種類のビールを同時につくるということで、川村さんがバランスを取ってくれました。ビールづくりで難しいのは、生産途中で試飲ができないことです。服だとサンプルをつくれますが、ビールは仕上がりの味を想像して仕込むしかないんです。だから本当に経験がものをいうというか。
石井: 一発勝負ってことですか?
横溝: そうなんです。川村さん自身はユニークな経歴の持ち主で、ファントムブリューイングといって、自分の醸造所を持たずにビールづくりをされていたんですよ。どこかの醸造所を借りて、自分でつくりたいビールを熱心に研究されている方なんです。
石井: 間借りをするようなイメージですかね。少量生産だけど、そうして自分で納得のいくクオリティを求めていたと。



横溝: 大きな会社でビールをつくろうとすると、どうしても大衆に向けたものになってしまう。川村さんはそうではなくて、自分がいいと思うビールを自分の責任でつくりたい。そういう道を歩まれているんです。
石井: クラフトビールをつくっているひとは、そうしたオルタナティブな精神を持っている方々が多いイメージです。
横溝: 川村さんもまさにそんな感じがしますね。もともとビールもそんなに好きじゃなかったみたいなんです。だけど、とあるビールに出会ってから開眼して、醸造家を目指して修行をされたそうです。
石井: たしかにクラフトビールを飲むと、ビールの概念が変わりますよね。
横溝: ぼくらのビールのイメージといえば、やっぱり大手メーカーのあの味じゃないですか。だけど、クラフトビールってそれとは全然違う味がする。同じラガーでもつくり手が変われば味も変わるし、それが魅力じゃないですか。次々と違う種類を飲みたくなるし、どんどん幅が広がっていくんです。それにクラフトビールは、食前でも、食中でも、食後でも飲める。肴がなくてもワインみたいにゆっくり飲んでもいいんです。
石井: 美味しいビールを探す楽しさ、それを飲む楽しさ、みんなと共有する楽しさがあって、本当にいろんな魅力がありますよね。