原料の組み合わせを計算して生みだす個性的な味わい。

石井: それにしてもこのビール、本当に美味しいですね。スイスイ飲めちゃいます。これが「花、太陽、雨」のオリジナルでしたよね。
横溝: そうですね。スタイルはペールエールなんですが、フローラルな香りがしませんか?
石井: たしかに、香りがいいです。ラベンダーですか?
横溝: はい。美瑛はラベンダー畑が有名で、それをイメージしました。ラベンダーの香りのあとにシトラスっぽい風味がしませんか?華やかな香りのするホップを使用していますね。それによって奥行きのある味わいになっているんです。
石井: グラスを顔に近づけただけで華やかな香りが漂ってきますね。ペールエールにした理由は何かあるんですか?
横溝: 「花、太陽、雨」は、定番として親しまれるビールにしたかったんです。クラフトビールといえばペールエールの味を思い浮かべるひとも多いと思うんですけど、奇を衒うのではなくて、みんなが飲みやすいものを目指しました。
石井: 料理はどういうものが合いそうですか?
横溝: スパイスを使った料理がいいと思います。カレーとか、クミンを使った料理はどれもおすすめです。あとは苦いチョコレートと一緒に晩酌をするのもアリかなと。最近はそうやって飲む方も増えているんですよ。

石井: なるほど。クラフトビールといえばどれもラベルがユニークですよね。その辺りのこだわりも聞かせてください。
横溝: 〈エンジニアド ガーメンツ〉以外は、それぞれのブランドカラーとロゴをベースにデザインしています。あとはビールをイメージして、ゴールドを差し色に加えているあたりもポイントです。
石井: 〈エンジニアド ガーメンツ〉は、抽象的なグラフィックが描かれていますね。

横溝: 長年ブランドのグラフィックやクリエーションに関わってくれているアーティストによるもので、自由の女神、橋、エンパイアステートビルといったニューヨークのランドマークをユニークなタッチで描かれています。
石井: スタイルはウィートエールですね。
横溝: ビールって大麦を使うのが主流なんですけど、これは小麦でつくられているんですよ。鈴木もよくニューヨークで飲んでいて、アメリカでも定着しているスタイルなんです。小麦なので、大麦よりも優しい味わいがしますね。ちょっと飲んでみますか?
石井: ぜひ、いただきます。

石井: うん、美味しいですね。なんだか大人な味わいというか、落ち着いた印象があります。
横溝: 副原料にベルガモットを使用していて、ちょっとだけ柑橘系の苦味が加わってますね。高知のベルガモットなんですけど、これも鈴木のサーフィン仲間の方がつくられているんです。
石井: 横の繋がりでつくるのも、ストーリーを感じます。
横溝: 川村さんもそうしたストーリーがおもしろいと話していましたね。
石井: 柑橘系のほろ苦い味が、なんだかクセになりますね。
横溝: このビールは燻製された肉料理やチーズに合うと思います。あとはソーセージとか、ベーコンもおすすめです。
石井: たしかに合いそう。ちょっとワインっぽい雰囲気がありますよね。
横溝: そうなんですよ。だから女性にもおすすめですね。実際に評判がいいです。
石井: 〈サウス2 ウエスト8〉と、〈ニードルズ〉のビールも飲んでみていいですか?

横溝: もちろんです。〈ニードルズ〉はレモンビールですね。市場に流通しているものはただ甘酸っぱいだけのものが多いのに対して、こちらはレモンピューレに加えてレモンの皮も加えているので、苦味もあると思います。
石井: たしかに。程よい渋さを感じます。だけど、口の中がさっぱりしますね。
横溝: ホップとレモンのいい意味での粗っぽい香りが組み合わさって、普通のレモンビールよりも複雑な味わいに仕上がっているんです。
石井: ベースとなるビールはどんなスタイルでしょう?

横溝: ブロンドエールですね。琥珀色のビールで、モルトの穏やかな甘みがするのが特徴です。比較的飲みやすいスタイルですね。
石井: レモンの爽やかな味わいが最初にきて、後からビールの苦味がほんのりやってきますね。すごく美味しいです。
横溝: 食事に合わせるなら、こちらは魚料理がやっぱりいいと思います。カルパッチョとかもいいし、白身魚のフライはめちゃくちゃ合いますね。レモンビールなので揚げ物は間違いないです。
石井: たしかに。さっぱりしてますもんね。お次は〈サウス2 ウエスト8〉のビールです。

横溝: こちらのスタイルはヘレスラガーといって、ドイツで親しまれているものです。ホップもドイツ産のものを使用しています。
石井: ぼくらがいつも飲んでいる大手のビールの味に近いんだけど、それだけじゃない別の味わいがしますね。
横溝: これはバーベキューとか、そういったアウトドアシーンで気軽に飲めるものを目指しました。石井さんが仰るように皆さんが慣れ親しんでいる味に近いんだけど、炭酸が強くて喉ごしスッキリというよりは、味わいがしっかりとある感じに仕上げています。クセが少なめで、飽きのこないクラフトビールですね。
石井: それって、どうやって違いを出しているんですか?

横溝: いい意味でホップの雑味があるんです。原材料の雑味を生かすことによって複雑な味わいにしていますね。どんな食事にも合わせやすい万能選手です。強いて挙げるなら、中華料理やタイ料理など、エスニックな食事と相性がいいと思います。
石井: 4つのビール、それぞれに個性があっていいですね。ブランドのムードとも合致していると思います。
横溝: ホップ、モルトの組み合わせを川村さんがすべて計算してくれているんです。材料の種類や分量も含めて。
石井: そういう掛け合わせのおもしろさがあるわけですね。大手のビールは幅広い層に向けてつくっているから、なるべくクセがないようにしますよね。だけど、クラフトビールはそうじゃない。
横溝: 均一じゃない魅力がありますね。
石井: だから個性的な味わいになるんですね。

横溝: そうですね。個性があるのがクラフトビールの楽しさなんです。
石井: こうやって、飲み比べるのも楽しいですね。前にポートランドへ行ったとき、ちょうどクラフトビールのカルチャーが盛り上がっていて、いろんなお店に行ったんですよ。
横溝: アメリカでも大手のビールに対抗するためにクラフトビールづくりがはじまったという記事を読んだことがあります。
石井: やっぱりそうなんですね。そのときは10種類くらいのビールをショットグラスに注いで、それを飲み比べながらいろんな話をしていて。いろんな味を楽しめた経験がすごく新鮮だったのを覚えています。

横溝: いまは日本でもそれができますからね。ぼくたちがつくった4つのビールも、通信販売ができるのでぜひお家で飲み比べてほしいです。
石井: ひとりで丸々1缶飲まなくてもいいわけですよね。小さなグラスでシェアしながら、友人や家族と一緒に楽しむのもいいですね。
