昔ながらのビアホールのようなクラシックな雰囲気。

取材をおこなったのは1月中旬。雪はサラサラとしていて、まさにパウダー状。気温はマイナス8度ほどだったが、日中はそこまで寒さを感じなかった。

「花、太陽、雨」という名前について、「美瑛の景色を表現したくて、この3つの言葉が浮かんだ」という。
石井: このお店のオープンは昨年でしたよね?
横溝: 昨年の5月に先にアパレルショップがスタートして、その後10月にビアホールもオープンしました。



石井: 先ほど少しだけアパレルのコーナーを拝見しましたが、過去のアーカイブなども並んでいて、「ネペンテス」のファンにはたまらない空間になってましたね。
横溝: プロジェクトのスタートに際してつくった「花、太陽、雨」オリジナルのプリントネルをはじめ、「ネペンテス」のアーカイブ、さらには服づくりの参考にするために何十年も昔から資料として集めてきたインポートやヴィンテージもここでは展開しています。オープン初日には並びも出たんですよ。
石井: わざわざ美瑛まで来られるなんて、すごいですね。
横溝: 札幌や旭川のお客さまが駆けつけてくださいました。本当にありがたいです。



※「花、太陽、雨」のオリジナル第一弾はこちらのプリントネル。代表である清水氏のこだわりが随所に詰め込まれた集大成的な1着で全7色展開。 各¥42,900
横溝: 札幌からは電車で約2時間、クルマだと2時間半の距離なので、日帰りで来られる方も多いですね。
石井: でも、わざわざ足を運んで来る価値がここには充分ありますよ。

1993年から「ネペンテス」の店頭に立ち続ける永岡要さん。「時間をかけて集めてきたもの、大切に保管していたものをここで販売しています。想いが込められたものしかないから、売れていくのはうれしくある一方、どこか寂しさも感じます」と、優しい口調で話してくれた。
横溝: 扱っている商材の多くはアーカイブなので、数量に限りがあります。そういう意味ではプロダクトのラインナップをもっと広げていきたいですね。「花、太陽、雨」のオリジナルウェアも、現物を見ていただけるのはこのお店だけです。今年は異業種とのイベントやポップアップなど、皆さんに楽しんでいただける企画も色々と準備しています。



石井: 買い物を楽しんだあとにビールを飲めるなんて最高ですよ。ビアバーではなくて“ビアホール”と聞いていたんですけど、本当に広くてホール感がしっかりとありますよね。テーブルとチェアのセットもこだわりを感じるし、それぞれの席の上に吊るされているライトもムードを感じます。
横溝: 店内はコッパー(銅)を基調としたクラシックで大人っぽい空間にしてますね。イメージしたのはドイツのビアホールです。特徴的なライトの落ち着いた雰囲気のなかで、オリジナルビールをタップで楽しんでもらいたいと思っています。

石井: クラフトビールのお店ってどこかモダンな内装をイメージするけど、ここはそうじゃない。昔ながらのビアホールのようにクラシックな雰囲気。地元の方も結構いらっしゃるんですか?
横溝: ランチやお茶をしに来られます。ビール以外にもソフトドリンクや、ハンドドリップのコーヒーとエスプレッソも用意しています。


旭川で焙煎したコーヒー豆を使用し、お店に在籍するバリスタが丁寧に淹れてくれる。この日はホンジュラス産の豆を使ったコーヒーをサーブ。酸味が効いていて美味だった。
横溝: あとはフードも提供していますね。4種類のサンドが目玉なんですけど、どれも美瑛もち豚を使っています。北海道は食材の宝庫で、なんでも揃うんですよ。とくに美瑛では小麦や米もつくっていて、できる限り地産地消を目指してやってますね。
石井: サンドはビールに合わせたレシピになっているんですか?

フードはすべて店内での手作り。モチモチ食感で小麦の甘さが口の中に広がるバンズと美瑛もち豚の相性が抜群だ。左から「ハンバーガー」 ¥1,100、「ホグドッグ」¥990、「ボスナ」 ¥990、「カツサンド」 ¥1,100
横溝: ビールとの相性はこだわりました。試作を繰り返しながら完成したのは4種類。「ボスナ」というカレーベースのスパイシーなソーセージを挟んだサンド、「カツサンド」はヒレ肉を使用していて、中濃ソースとオリジナルソース、和ガラシをかけたオーソドックスなスタイルです。「ハンバーガー」は美瑛もち豚のパティに特選バターとバルサミコをブレンドしたオリジナルソースをかけて奥行きのある味わいになっています。「ホグドッグ」はロース肉を使用していて、玉ねぎと一緒にとある豚肉専門店のタレと炒めたパンチのある味わいが特徴です。どれもビールが進む味になってますよ。
石井: 「ホグドッグ」が気になりますね。
横溝: ぜひ食べてみてください。これはバーベキューっぽい味わいなので、〈サウス2 ウエスト8〉のビールが合うと思います。
石井: いただきます!

横溝: いかがですか?
石井: うん、美味しい! 具材もそうだけど、バンズがモチモチしてて食感もいいですね。
横溝: バンズは旭川のパン屋さんにオーダーしているんです。タレをつくっている方も釣りが大好きで、〈サウス2 ウエスト8〉をよく着ていただいているんですよ。それで繋がって、今回こういう形で関わることができました。
石井: 「ネペンテス」の魅力ってそういうところにもありますよね。縁があって繋がった方々と一緒になにかするっていう行動力が本当にすごいです。
横溝: ビールをつくってくれた川村さんも〈エンジニアド ガーメンツ〉のファンだったようで、「ネペンテス」のムードみたいなものをなんとなく理解されていました。だからこそ、特徴のあるビールが生まれたんだと思います。

〈ニードルズ〉のトラックジャケットがお店のユニフォーム。左胸には「花、太陽、雨」のロゴワッペンをオン。こちらのワッペンはショップでも販売している(¥1,100)。
石井: それって本当に大事なことだと思います。「ネペンテス」って個性が強いし、そのノリを理解できないと一緒にコラボとかできないと思うんですよ。やっぱりお店があると、そうした繋がりが生まれやすいし、世界観も共有しやすいですよね。
横溝: 本当にそうですね。ありがたいことです。
石井: それにしてもこのサンド、タレもちょうどいい甘辛さで、ビールが進んじゃいますね。ネギもアクセントになっていて、シャキシャキした食感もいいです。
横溝: もともとこのタレで豚肉を焼いて食べていたんですよ。そこにヒントを得て、メニュー開発に繋がりました。他にも「サバサンド」や、バターをたっぷり使用した「ジャンボンブール」というハムのサンド、あとはカレーパンもおすすめです。
最近はクラムチャウダーもメニューに加わりました。やっぱり寒い期間も長いので、カラダを暖めてもらえたらと思っています。

バターと自家製キャラメルのクッキーサンドは現在試作中。お店のロゴを模ったクッキーもかわいい。
横溝: スウィーツの方も充実させたくてクッキーやケーキも試作中です。お店は11時から営業しているので、もちろんカフェとしても気軽にご利用いただけます。

美瑛の街の中心にある「四季の塔」からの眺め。豊かな自然に囲まれているのが一目瞭然。
石井: 横溝さんが思う美瑛の魅力ってどんなところにありますか?
横溝: やっぱり景色ですね。海外から来られる観光客の方々も多くて、単純に景観を楽しみにいらっしゃるひともたくさんいるんです。



クルマを走らせるとすぐにこうした景色と巡り会える。丘陵が多く、ドラマチックな世界がそこには広がっている。
石井: たしかに景色がめちゃくちゃ綺麗で驚きました。
横溝: 数々の映像作品で観た景色がそのまま広がってますからね。自然が豊かで、北海道は釣りのメッカでもある。美瑛は山々に囲まれているのもあって、有名な川が何本も流れているんです。だから釣りが好きな「ネペンテス」のチームも昔からここを訪れているんですよ。
石井: 旭川空港からのアクセスもいいですよね。
横溝: そうなんです。空港からここまでクルマで15分ほどですね。規模は大きすぎず、大都市からは少し距離があるのもいいですね。釣りにも行けて、旭川でも遊べて、立地的なアドバンテージがすごく高いですね。
石井: ぼくもバス釣りをするんですけど、いつか渓流釣りに挑戦したいと思っているんです。
横溝: ぜひやって欲しいです。テンカラはバスの要素もあるんですよ。魚のことを理解していたらきっとのめり込むと思います。夏にまたいらしてください。
石井: いまは雪景色が広がっていますが、暖かくなったら景色もガラッと変わりそうですね。
横溝: 北海道は暖かくなると樹々が一気に芽吹きます。昨年の春なんですが、一度東京へ帰って10日後くらいにまたここへ来たら、全然違う景色が広がっていました。白い景色が一変して緑色に変わっていて、自然が豊かで本当にいいところなんです。