テバが持ってるイメージだけど、テバにない要素を感じる。
ーまずは渡辺さんのシューズ遍歴を教えて下さい。
渡辺 :記憶を辿ってみると、最初にシューズを意識したのは小学生のころかな。当時はサッカーを習っていたので、スパイクは必ず〈アディダス〉か〈プーマ〉じゃないと嫌だった憶えがありますね。当時のアイドルが〈ナイキ〉を履きだして、気になったりして。
中学に進学すると、ヒップホップやブレイクダンス、スケートといったカルチャーに触れるようになって、カルチャーありきで選ぶようになったりして。高校、大学になると渋カジに代表されるようなブーツやレザーシューズを履いたりしていましたね。
そして大人になって旅をしたりするようになると、次は軽いものが良いのかなと。それで、〈ヴァンズ〉や〈コンバース〉のようなオーセンティックなローテクに戻ってきたり。
こう見えて意外といろんなスニーカーを履いてきたんですよ。俗に言う名品から時代を彩ったモデルまで、あらゆるシューズを通ってきました。
ー特に愛用してきたモデルはありますか?
渡辺 :〈アディダス〉ならスタンスミス、〈コンバース〉ならチャックテイラー、〈ヴァンズ〉ならオーセンティック。ブランドを代表するような定番モデルは、色褪せることなく履き続けられるし、どんなスタイルにも合わせられる。そういったモデルとは、なんだかんだ長い付き合いになることが多いですね。
ー最近はどんなシューズを履かれていますか?
渡辺 :実は最近、いかに”楽に履くか”が選ぶポイントになっていて。スリッポンやカンフーシューズ、スリッパのようなシンプルな構造の靴を履いていることが多いんです。だからといっておしゃれを捨てたとかではなく、きちんとスタイルとしても成り立つようなデザインを選ぶのが面白くて。
ー〈アディダス オリジナルス〉とのコラボレーションを経験したことによって、シューズに対する意識の変化はありましたか?
渡辺 :大きな変化はないんですけど、よりファッション目線でシューズを見るようになったとは思います。ぼくらはいくら頑張っても最先端のテクノロジーは作り出せないじゃないですか。そのうえで〈アディダス オリジナルス〉のなかに、ぼくらならではの視点を加えなければいけない。となるとぼくらのスタイルとはなんなのか、より強く意識するようになるんです。
ーシューズを購入する際の選び方や履き方になにかルールなどはありますか?
渡辺 :自分のアクティビティにあった機能性を基準に考えて、その次にデザインが来るようなイメージですね。スケートが好きならデッキテープと相性の良いもの、ランニングするなら軽くて走りやすいもの、といった具合に。
ストラップを採用したのは、〈テバ〉らしい大胆な判断だと思います。
ー〈テバ〉に対してはどんなイメージをお持ちですか?
渡辺 :1990年代のイメージは強いんですよね。初めは決してファッション性というよりも、言うならビーサンでは心許ない人たちが求める本格志向で快適なアウトドアサンダルというイメージ。
当初はサーフとクライミングを行き来するようなアクティブな人がよく履いていて。そのスタイルが街に下りてきて、適応していく過程はとても興味深かったのを憶えています。
ー新たにリリースされるスニーカー『アローウッド エボ』を実際に手に取ってみて、その第一印象を教えてください。
渡辺 :一言でいうと〈テバ〉が持ってるイメージなんだけど、〈テバ〉にない要素も感じられる。ひと目見ただけで、履き心地も気になってくるし。想像力を掻き立ててくれるようなデザインだなと。
実際、〈テバ〉のようなサンダルをメインに作ってきたブランドが作るシューズって、従来のシューズブランドとはアプローチが異なるから、単純に見ていて面白いんですよ。
ーストラップサンダルをモチーフにした部分はいかがですか?
渡辺 :スニーカーのデザインは洋服に比べてバリエーションの幅が狭いと思うんです。紐の有無や、ローカットかハイカットか、みたいに。そういった意味でストラップを採用したのは、〈テバ〉らしい大胆な判断だなと。
都会的なフォルムだけど、ソフトなイメージも併せ持っていて、それでいて〈テバ〉のルーツも感じさせてくれる。とにかくバランスのとれた仕上がりになっていると思います。
ー実際に履いてみていかがでしたか?
渡辺 :とにかく楽ですよ。サンダルと変わらない履き心地でありながら、防水性にも優れていて、耐久性もある。さすがにハードコアなシチュエーションは難しいかもしれませんが、軽登山やキャンプ、フェスといったアウトドアフィールドから街を繋いでくれるようなシューズだと思います。
ーこういった都会的なアプローチが、日本企画として発信されることに対しては、どんな印象ですか?
渡辺 :〈テバ〉のようなグローバルなブランドが、そういった柔軟な姿勢でモノづくりしていることに驚かされますよね。しかも、きちんと本国アメリカのモデルとの差別化もできている。例え同じ構造のシューズでも、都市ごとに求められることは変わってきますからね。とても素晴らしいチャレンジだと思います。今後もどんどんやってほしいですね。
ーどんな着こなしのスタイルに合わせれば良いと思いますか?
渡辺 :提案としては都会的なスタイルであればなんでも合うと思いますよ。逆にあまりアウトドアすぎるスタイルには馴染んでこないような気がしますね。
あとは個人的には、サンダル感覚で履いてみたいですね。靴下も履かずにリラックスした状態で履くと気持ち良さそうじゃないですか。
ーシチュエーションという部分ではいかがでしょう?
渡辺 :先程も話したとおり、あらゆるシチュエーションにフィットするシューズだと思います。都会的な街並みに合うデザインだし、アウトドアフィールドでも遜色のない機能性。これさえあれば、どこでも行けるというと言い過ぎかもしれませんが、あらゆる場所に足を運べるシューズなのかなと。
ーこういった新しいプロダクトを目にして、作り手として創作意欲をくすぐられたりしますか?
渡辺 :もちろんです。ぼくならこうしたい、ここはこの色で、みたいにいろいろ考えてしまうのは職業病みたいなもんですからね。「アローウッド エボ」はとても都会的なので、あえてぼくが触れてきたアメリカンカルチャーをモチーフにしてみたり。
ーこれは今後の取り組みについても期待してもよさそうですね?
渡辺 :実は…。と言っても、まだ動き出したばかりですけどね。詳細はお伝えできませんが、ぼくらなりの〈テバ〉を作れるんじゃないかと。期待しておいてください。
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