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TUMIのクリエイティブディレクターが抱く、尽きることのない“デザイン”への探求。

Voyage of Design

TUMIのクリエイティブディレクターが抱く、尽きることのない“デザイン”への探求。

グローバルブランドとして世界中の人々から支持を集める〈トゥミ(TUMI)〉。このビジネス&トラベルバッグブランドのクリエイティブディレクターを務めるヴィクター・サンズが先日来日しました。優れたデザイン、そしてユ-ザー目線で考えられた実用的な機能で日々の“移動”をより快適にサポートする〈トゥミ〉のアイテムは、どんなことを軸にデザインされているのか? その答えを求めに、彼のもとを訪ねました。

  • Photo_Taro Hirayama
  • Edit_Yuichiro Tsuji
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ヴィクター・サンズ / TUMI クリエイティブディレクター

ニューヨークのアートスクールであるPratt Instituteにて工業デザインを専攻。トップの成績で同校を卒業後、Eastman Kodak Companyにてプロダクトデザインを手掛け、デジタルカメラの分野において数々の賞を受賞。2003年にTUMIに入社し、様々なコレクションのデザインを担当。他プロジェクトのために一時TUMIを離れるも、2009年に再び戻り、2016年に同ブランドのクリエイティブディレクターに就任する。

TUMIが抱く“カスタマーファースト”という哲学。

ーヴィクターさんはもともとコダックでプロダクトデザインを担当されていたんですよね。

ヴィクター:そうです。学生時代に工業デザインの勉強をしていました。コダックでの仕事を経て、より様々な分野でのデザインに興味が拡がり、プロダクトデザインのなかにファッション的なエッセンスを取り入れたいと考えるようになりました。その願いをいま〈トゥミ〉で実現させています。

ー〈トゥミ〉に対しては、もともとどんなイメージを抱いていましたか?

ヴィクター:ビジネスマンにフォーカスしたプレミアムなブランド、ですね。プロダクトそのものはもちろん、細かなディテールに至るまでこだわっていて、ユーザーに愛されている。そんな印象がありました。実際に〈トゥミ〉に入って思ったのは、このブランドは常にカスタマーたちのことを考えているということ。我々には“カスタマーファースト”という徹底した哲学があるんです。良質なデザインと圧倒的なクオリティーを兼ね備えた最高の鞄をお客さまに届ける。そして現状に満足せず、イノベーティブなマインドを持ち続けて新しい感動を創造する。この2つのポイントを軸に我々は動いています。

ー現在はブランドのクリエイティブディレクターとして活躍されていますが、具体的にどんな仕事をしているんですか?

ヴィクター:私はデザインチームを指揮する立場にあります。彼らがクリエイティビティーを最大限に発揮できるように、さまざまなことを調整する役目です。我々のスタジオでは毎日いろんなアイデアが飛び交っていて、その中にあるベストなものを採用する。そして、アイデアが商品として形になったとき、それをカスタマーに届けるためのストーリーを考えます。これも私の仕事です。アイテムの魅力が活きるように、店舗のデザインなど、プロダクト以外のことにも力を入れているんです。

ー〈トゥミ〉がお客さまに届けたいストーリーとは、具体的にどんなものなのでしょうか?

ヴィクター:イノベートとエレベート。これが〈トゥミ〉のクリエイティブディレクターとして私が描いているストーリーです。我々のプロダクトを通して、日常に変化や革新を与える。そして、生活を向上させる。〈トゥミ〉のアイテムを使うことで毎日が輝く。カスタマーたちにそう思ってもらえるように努力しているんです。

いま、世界は小さくなっています。飛行機に乗って海外へ行くことが容易になっているし、SNSを通じていろんな人とコミュニケーションが取れる。それとおなじように、我々のカスタマーもグローバルな視点を持っていて、日々あらゆる場所へ移動しています。彼らが何を考え、何を必要としているのか。それを理解し、サポートすることが我々に与えられた使命だと思っています。

ー2003年にヴィクターさんが〈トゥミ〉に入ってから、ブランドはどのように変化しましたか?

ヴィクター:先程ビジネスマンのイメージがあったと話しましたが、ファッショナブルなカテゴリーをつくって若い人たちへのアプローチをしているし、女性にフォーカスしたアイテムもつくっています。これまでの〈トゥミ〉は、単純にバッグブランドとしての認知が高かったと思いますが、現在は“人々の人生を豊かにするブランド”というイメージを加えることに成功したと思っています。

そのなかで大事だったのは、品質、機能、デザインという〈トゥミ〉のDNAをすべてのアイテムに組み込むこと。日々の“移動”をスムーズでイージーなものにしたいという望みは、常に持ち続けなければなりませんから。

世界は流動的に動いている。その流れを把握することが大事。

ーヴィクターさんご自身は、仕事をする上でなにをいちばん大事にしていますか?

ヴィクター:満足をしないこと、ですね。カスタマーに対して、これは本当にインスパイアを与えられるものなのか? 本当に役立つものなのか? そういったことを常に考えながら仕事に望んでいます。常にベストを模索しているんです。

ー例えばひとつのアイテムをデザインするときに、「これでOK」という基準はあるのでしょうか?

ヴィクター:うーん…、難しいですね。私が思うに、デザイナーというのは満足することのできない職業だと思っています。だからといって自分たちのプロダクトに自信がないというわけではありませんが、常に猜疑心をもってデザインに取り組んでいます。それがつまり、よりよいものをつくろうというパワーの源になるんです。

ーインスピレーションや刺激はどんなところから得ているんですか?

ヴィクター:私は日頃からいろんな景色を見ることを意識しています。さまざまな分野にアンテナを広げ、いろんな情報を取り入れる。宇宙工学や自動車、建築、音楽、料理、人々の会話。すべてが私のインスピレーションになります。

例えば、我々のバックの一部には「アド・ア・バッグスリーブ」という機能がついています。ここにキャリーケースのハンドルを通すことで荷物の持ち運びをラクにするというものなんです。これは、普段使っている鞄への不満を誰かが口にしていて、それをたまたま耳にしたことから生まれました。片方の手で鞄を持って、もう一方ではキャリケースを運ぶのは、確かに不便だなと。だから私はその問題を解決しようとしたんです。

一点だけに視線を集中していると、周りで何が起こっているのか知ることができません。世界は流動的に動いていますし、その流れをキャッチするにはいろんなことに興味を持つことが大事です。アイデアはいろんな所に転がっている。だから私は常にスケッチブックを持っているんですよ。仕事をしていない時間も、いつでもメモを取れるように。

ーそのスケッチブックにはどんなことが書いてあるんですか?

ヴィクター:すべてをお見せすることはできませんが、このページならいいでしょう。ここに描いてあるのはキャリーケースにつける金具のデザインです。細かな部分にもこだわって、美しく見えるようにデザインしています。これは最近浮かんだアイデアのひとつですね。

ーこういった細かな部分までこだわってデザインしているんですね。

ヴィクター:我々にとってはスーツケースも携帯電話のケースもおなじ“商品”なんです。物質的な大きさは異なりますが、その開発にかける熱量はおなじ。〈トゥミ〉で展開しているすべてのアイテムに同様のことが言えます。

常に最高のプロダクトをお客さまに届ける。

ー最後に、今後のブランドの展望について思い描いていることがあれば教えてください。

ヴィクター:まずひとつは、ウィメンズアイテムの更なる充実です。女性のライフスタイルを理解し、そこに適合する価値のあるものを提供していこうと思っています。あとはプレミアムカテゴリーにも注目してほしいですね。このラインでは、充電用のバッテリーなどのアクセサリー類もつくっているんです。普段みなさんが何気なく使っているものだと思いますが、レザーを配することでプレミアムなアイテムになる。そうした日常の昇華を、このカテゴリーでは目指しているんです。

ヴィクター:もちろん、〈トゥミ〉の通常のラインナップにも期待していてください。アイデアは常に持ち続けていますし、むかしから受け継がれてきたブランドのDNAは何も変えず、これからもいいものだけをリリースしていきます。

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