東日本大震災の復興支援の一環として2011年に発足した
「大槌刺し子プロジェクト」。
東北の伝統技法である刺し子は
避難所で生活する女性たちの心の安らぎになり、
次第には仕事となっていきました。
そして、震災から13年後の2024年3月11日、
ファッションブランド〈クオン〉を運営する
「MOONSHOT」の協力のもと、大槌刺し子プロジェクトは
「サシコギャルズ」として新たなスタートを切ったのです。
メンバーは40代から80代までの15人。
彼女たちの手仕事で生まれる刺し子アイテムは
海の向こうでも高い評価を得て、
刺し子の可能性、そして復興の先を示しています。
PROFILE

1964年生まれ、長野県出身。1990年代からスタイリスト兼ファッションディレクターとして活躍するかたわら、2022年5月に故郷である長野県上田市にセレクトショップ「EDISTORIAL STORE」をオープン。2025年3月には「東京クリエイティブサロン」の一角で、自身がディレクションする展示とイベントを行う予定。
PROFILE

1978年生まれ、東京都出身。大学卒業後に法律業界で働いたのち、2012年「株式会社ムーンショット」を設立。2016年にはファッションブランド〈クオン(KUON)〉を立ち上げる。東日本大震災以降は被災地の復興支援活動にも従事。2024年3月に「サシコギャルズ」を始動。
小沢宏が惚れ込んだ、刺し子スニーカー。
ー今回、小沢さんは「サシコギャルズ」と一緒に取り組みをされるということで、その拠点である岩手県大槌町まで足を運ばれたわけですが、前日談として藤原さんとの出会いから聞かせてください。
小沢: 出会いで言うと、実はめちゃめちゃ最近なんです。「サシコギャルズ」にコンタクトを取りたくて連絡したら藤原さんから返信をもらって。それが2024年9月でした。
藤原: そうでしたね。ぼくはもちろん、一方的に小沢さんのことは昔から存じ上げていたんですけど。
小沢: もちろん〈クオン〉というブランドは知っていたけど、「サシコギャルズ」をたどっていくと〈クオン〉にたどり着くってことは知らなかったんです。

ー小沢さんは、なんのためにコンタクトを取ったんでしょうか?
小沢: 今年の3月に「東京クリエイティブサロン」というイベントが開催されるんです。ファッションやアート、カルチャーにまつわるイベントなんですが、都内10のエリアが舞台になっていて、ぼくが丸の内エリアのクリエイティブディレクターとして携わることになって。 そのなかのひとつのコンテンツとして「サシコギャルズ」を紹介したいなと思って、コンタクトを取りました。
ーこれまでもいろんなプロダクトに触れ合ってきたと思いますが、そんな小沢さんが「サシコギャルズ」のどこに魅力を感じたんですか?
小沢: 「サシコギャルズ」はいろんなものをつくっているけど、代表的なものがスニーカーだと思うんです。刺し子は「和」で、スニーカーは「洋」でしょ? こうした取り合わせはだいたい相性が悪い。融合しても形になりづらいものと言ってもいい。でも、「サシコギャルズ」のスニーカーは、そのふたつがうまく共存していて、そこに魅力を感じたんです。

刺し子スニーカーは「サシコギャルズ」を代表するプロダクト。アッパーやシュータン、ソールにまで刺し子を施し、和の雰囲気が漂う新しい表情に仕上げる。職人の個性でデザインも変わり、もちろん全て一点モノ。


ー小沢さんもご自身のスニーカーでオーダーされていましたね。
小沢: 買ったけど全然履いていなかった〈ナイキ〉のテニスシューズに、刺し子をしてもらおうと思っていて。「サシコギャルズ」のこれまでの作品を見ると〈ニューバランス〉が多かったから、違うものも見てみたいなって。

小沢さんがオーダーしたのは〈ナイキ〉の「AIR TRAINER I」。
藤原: 過去にやったことがあるモデルか、初めてのモデルかによってアプローチの仕方が変わってくるんですよ。そういう意味で、この小沢さんのスニーカーは初めて依頼を受けるモデルなので、刺しては外しての繰り返しになりそうです。〈ニューバランス〉の2002や990シリーズは、ある程度フォーマットがあるのでサクサク進むんですけどね。
小沢: どのくらいで完成するものですか?
藤原: 慣れているモデルでも、1足に30時間弱かかるんです。今回は初めてのモデルなので、その倍くらいはかかるかもしれないですね。あと刺し子は、連続して続けることが無理なんです。集中力が続かないし腕の力もなくなります。なので日数で考えると、1ヶ月ぐらいはかかるかもしれないです。