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原宿に誕生したネクサスセブンという名のショップ。
Take The Next Step

原宿に誕生したネクサスセブンという名のショップ。

ヴィンテージに根ざしたものづくりを行なう〈ネクサスセブン(NEXUSVII.)〉が、この春、原宿に路面店をオープンしました。さまざまな古着屋が軒を連ねるとんちゃん通りに生まれた新店は、紛れもなく“らしさ”が漂う重厚な店構え。その一方で、一度足を踏み入れると、これまで手掛けたショップとはどこか異なるムードも感じます。デザイナーである今野智弘さんの頭の中には、どんなアイデアがあったのか。ブランド設立25周年を目前に、誕生したお店について存分に語ってもらいました。

うれしいのに、どこか切なさもあるという矛盾した気持ち。

ー商品は〈ネクサスセブン〉の服が中心にあり、他にも特別なアイテムはあるんですか?

今野: 〈マッドマックス〉という本物のヴィンテージを素材として使用するラインで、ヴィンテージの〈ビーコンブランケット〉の生地を使ったジャケットなどをつくりました。〈ペンドルトン〉も好きなんですけど、こちらはコットンが入っているのでより扱いやすいのも魅力です。それでずっと集めていた物を今回思い切って使用しました。

ーなかなか市場に出回らないものなんですか?

今野: 最近本当に見かけなくなりましたね。個人的にブランケットとして使っていたものもあるんですが、ジャケットにしたほうが触れる頻度がより高くなると思いました。元ネタはヴィンテージのチマヨジャケットといって、市場ではレディースのサイズでやたらショート丈のものが多いアイテムです。今回つくったのは腰ベルトがあるタイプなんですけど、そういうアイテムを一度だけ見たことがあって、着やすさを重視してその仕様にしました。

あとはこちらのバッグも、このお店のためにつくりました。

ーどういったアイテムなんですか?

今野: ヴィンテージのフライトジャケットである「A-2」と「G-1」でつくったアイテムです。戦争から生還した兵隊の方が着ていたかなり希少性の高いジャケットを解体して、バックルはティファニーのアンティークのスプーンをパッチワークしてつくりました。

ーこちらのバッグはもちろん、先ほどのジャケットもそうですが、希少価値の高いアイテムをリメイクしているあたりに今野さんの特別な気持ちがあったと思うのですが。

今野: これまで集めていたものを放出する機会をずっとうかがっていました。どこで出せばいいか、ずっと考えていたんです。もったいないっていう気持ちもやっぱりあったんですが、こうして新店オープンの機会に恵まれたので、出し惜しみすることなく一度フルスイングでつくってみました。

今野: こうした一点物のアイテムがいろいろなかたの手に渡っていくことによって、ブランドの認知にも繋がりますし、お客様の足が再びこちらに向いて欲しいという祈りも込めました。もちろん自分の手元に置いておくのも悪くはないんですが、それは自分の中でのよろこびでしかない。もっと広がりを持たせたかったんです。

ーそれだけ思い入れがあるということは、どこか寂しさも感じるんじゃないですか?

今野: ありますね(笑)。〈マッドマックス〉はとくに売ったあとに寂しくなることが多いです。もちろんアイテムを着てよろこんでくださるお客様がいらっしゃるのはうれしいことですが、その反面どこか切なさもあるという矛盾した気持ちも生まれますね(笑)。でも、そう思えないとよくないですしね。

ーそれだけ真摯にものづくりをされているということですよね。

今野: なんとなくの気持ちでつくったものをお客様へ提案するのは失礼だと思うので。今回のヴィンテージの素材は本当にたくさんの思い入れが詰まっているので、それが伝わってくれたら本望です。そのぶんどちらも高価なアイテムになってしまうのですが、最近は古着もかなり高騰しています。とんちゃん通りは古着屋さんだらけのイメージを持たれる方も多いと思いますし、10年以上前だと〈ネクサスセブン〉の服と価格帯が合わないっていう意識がどこかにありました。でも、いまならその辺りもなじむんじゃないかと感じています。

ー〈ネクサスセブン〉ではヴィンテージに根ざした服をデザインされていて、ここに来るお客さんも古着屋さんの延長線上でこのお店を見ることができると思うんです。

今野: そう思っていただけたらうれしいですね。先ほども話したとおりぼく自身もこの辺りの古着屋さんには本当にお世話になっているので、そうした場所に新しくお店を出せたのはすごく感慨深いです。

あとはインバウンドのお客様へも刺激を与えられたらうれしいですね。夏になるとフェスに出演する海外アーティストがこの辺りに来ることも多くて、以前はビョークも2日連続でとんちゃん通りに来ていました。そういった方々がここで買い物をして、それを堂々と着てくれたら最高ですね。

ーもともとあった「V.E.L」もここから徒歩圏内です。今野さんの中で棲み分けはあるんですか?

今野: 「V.E.L」はギャラリーとしての機能を持たせられるように作り替えました。こっちはしっかりと〈ネクサスセブン〉を見せられるお店として機能させて、「V.E.L」は自分たちが別で提案したいもの、あとは集めてきたヴィンテージが揃った段階でお店に出そうと思っていたり、色々と画策はしています。

INFORMATION

NEXUSVII.

住所:東京都渋谷区神宮前3-27-15 福住ビル1F-A
電話:03-6910-5980
Instagram:@nexusvii.official, @nexusvii_storeinformation
https://nexusvii.jp/