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FEATURE|The Man Who is Working At The Place.

ファッションと音楽、
二足のわらじを履くルクア店スタッフ

宇多田ヒカルに影響を受けた
山内さんの音楽人生。

前のページで、ファッション、そして仕事に対する熱い思いを語ってくれた山内さん。彼を構成する大きな要素に、ファッションに加えて“音楽”というエレメントがある。彼は関西を中心にDJ活動を行っているのだ。表の顔はショップ店員で、プライベートではDJ。こちらではそのDJの側面について掘り下げて行こう。

「ジャンルはR&B、ヒップホップ、ハウス、あとは“ジャージークラブ”というブラックミュージックにエレクトロサウンドを融合させた音楽を中心にかけています。大きなクラブでやるというよりは、30人ほどのお客さんが集まるような小規模なラウンジとかでDJをすることが多いですね」

そう話しながら、自宅でDJプレイを披露してくれた山内さん。曲と曲をシームレスに繋ぐ姿はプロさながら。山場の多い曲をかけながらも、終始表情がクールなところもまた渋い。ブラックミュージックが自身のルーツだという彼は、小学生の頃から音楽が好きだったと話す。一番強く影響を受けたのは宇多田ヒカルだという。

「父親が宇多田ヒカルさんの『Automatic』が好きでずっとそれを聴いていたんですよ。で、ぼくの頭のなかにもそれがずっと残っていて。いまでもたまに聞き返してますね。この曲がリリースされた当時、宇多田さんはまだ15歳。才能を感じます。もちろん、DJするときもたまにかけてますよ」

できるだけお金をかけない、がモットー。

そもそも、彼がDJをはじめたのは専門学生時代。先輩が定期的に開催しているイベントに出演しないかと誘われ、練習をはじめたのがきっかけなんだとか。

「そのときは先輩の機材を借りながら練習して本番を迎えたんですけど、とにかく楽しかった思い出しかないんですよ。もともとバンドをやっていたんですけど、メンバーの集まりが悪くて辞めてしまった経緯があったので、ひとりでマイペースにできる音楽活動という意味で、DJというスタイルがなおさら魅力的に感じたんです」

それからというもの、彼は自分自身の武器ともいうべき機材集めに奔走する。ターンテーブルやミキサーなど、メーカーや機種によって個性はさまざま。自分に合うものを見つけるまでに何十万という金額をつぎ込んだそうだ。現在はPCの音源をそのままDJのプレイに使える機材を使用している。

「いま機材は充実したものが揃っているので、“できるだけお金はかけない”ということをモットーにDJ活動にいそしんでます(笑)。例えば、音源はほとんどネットで拾ってきたものを使っているんです。掘るのはいつも『サウンドクラウド』というサイトからですね」

有名・無名、プロ・アマ問わず、世界中のアーティストたちが自身の作品を披露する「サウンドクラウド」。そこで自分好みの無料ダウンロードできる曲を見つけるのが彼の主な音源の探し方だ。

「自分の好きな有名アーティストを中心に、そのアーティストがレコメンドしている曲とかも見れるようになっているので、そこからどんどん掘って行ってます。無名なのにイケてるアーティストとかいっぱいいて、そういうのを発掘するのが楽しいんです。それで、そのアーティストの曲をイベントのときにかけて、『あのときかけてたの誰の曲ですか?』って聴かれるのがうれしくてたまらないですよ(笑)」

音楽があったからこそ、いまの自分がいる。

そんな彼はDJのほかに自分でトラックメイクも行なっているそうだ。基本的にはひとつの曲をサンプリングして、それをベースにトラックをつくるというヒップホップの曲づくりの手法を採用している。あとはR&Bの曲をベースにリミックスのような作品をつくったり。

「DJでかけたい曲がないなぁ、というときに、それなら自分でつくっちゃえと思ってはじめたのがきっかけですね。専用のソフトを使ってPCでつくるんですけど、実際やってみるとやっぱり難しい。でも本を買って音響について勉強したり、ネットでソフトの使い方を調べたりしているうちになんとか形になるようになりました」

そうしてつくった曲は「サウンドクラウド」でアップしているんだとか。

「曲数は全然少ないので、人に教えられるレベルじゃないんですけど、アカウントをコッソリつくってアップしてみたんですよ。もちろん、ダウンロードできるようにして。そしたら、とあるイベントで知り合いのDJがぼくの曲を流したときがあったんです。当然、ぼくがつくったとは知らずに。あれは最高にうれしかったですね」

そのときは普段通りクールな佇まいをキープしながら、心のなかでドヤ顔を決めたという。現在も仕事とのバランスを上手に取りながらDJとしての活動に励んでいる山内さん。そんな彼にとって音楽とは、どんな意味をもつものなのか? そんな質問を最後に投げかけてみた。

「“輪”ですね。いまぼくの周りには音楽を通して知り合った友人たちがたくさんいるんです。それぞれ出身も年齢もバラバラなんですけど、休みの日はしょっちゅう一緒に遊んでますし、旅行に行ったりするほど仲がよくて。彼らと出会えたのは音楽が好きで、DJをはじめたらからこそ。DJが曲と曲を繋ぐように、赤の他人だったぼくたちもDJ活動を通じて知り合い、繋がることができました。いまぼくが充実した生活を送れるのは、音楽があって彼らと知り合えたからだと思うんです。だから、これからも一期一会を大事にしつつ、DJ活動を頑張っていこうと考えてます」