HOME  >  LIFE STYLE  >  FEATURE

LIFESTYLE_FEATURE

  • OLD

親子をつなぐ弁当づくりと日々のこと。 TOKYO No.1 SOUL SET 渡辺俊美×BRAHMAN TOSHI-LOW

2014.07.08

このエントリーをはてなブックマークに追加
lf_for_good_living_stussy_main.jpg

TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美が高校生の一人息子のために3年間お弁当を作り続けた、心温まるエピソードを綴ったエッセイ集『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』が話題を呼んでいる。そして、渡辺を兄と慕うBRAHMANのTOSHI-LOWも息子のために"鬼弁"と呼ばれるチャーミングなお弁当作りに奮闘中だという。アーティストとして輝き続けながら、ひとりの父親として子どもと真摯に向き合う彼らの日常や素顔に迫る「お弁当対談」。

Photo_Yuichiro Noda
Interview&Text_Seika Yajima
Edit_Ryo Komuta

TOKYO No.1 SOUL SET 渡辺俊美
TOKYO No.1 SOUL SETのヴォーカル、ギター、サウンド・プロダクション担当。福島出身のミュージシャンとクリエーターで2009年に結成されたバンド「猪苗代湖ズ」(渡辺俊美はBASS担当) 活動やソロ活動で、震災の復興支援を積極的に展開。ソロ名義でのアルバム『としみはとしみ』をリリースするなど、全国各地で定期的にソロライブを開催している。"お弁当エッセイ本"『461個の弁当は、親父と息子の男の約束』(マガジンハウス)が好評発売中。

BRAHMAN TOSHI-LOW
4人組ロック ・パンクバンドのボーカル。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。日本以外にもヨーロッパやアジアでもツアーを行うなど活動の幅を広げている。昨年、5年ぶりとなるアルバム「超克」をリリース。渡辺と同じく、震災の復興支援を勢力的に展開。被災地で頑張る体育会系の仲間にジャージを届ける復興支援プロジェクトの企画もしている。
http://www.inspirit.jp/jp/news/JerseyProject/index.html#p1

「誰も傷つけない本を作りたかった(渡辺俊美)」
lf_toshimi_watanabe_toshirow_sub01.jpg

TOSHI-LOW: 弁当の料理本って、めちゃめちゃたくさん出ているじゃないですか。たまに読んでみるんですけど、すごいキレイに作っているなと感心する反面、あまりにキレイ過ぎて不自然に感じるものも多くて。でも、俊美さんの本は一日一日、実際に作った弁当を写真で紹介しているから、すごいリアルなんですよね。息子のことを想いながら、どんなメニューにしようか試行錯誤している様子にすげぇ胸を打たれる。彩りや盛り付けの細部までこだわりが感じられて、たまに曼荼羅に見えてくるんです。これ、宇宙を表現しているんじゃねーかって(笑)。

lf_toshimi_watanabe_toshirow_sub02.jpg

渡辺俊美(以下俊美): アハハハ! 最初はレシピ本にする話もあったんだけれど、俺はその道のプロじゃないから、俺と息子の話をまとめた本でいいかなって思ったんだ。それに、俺がやっていることは特別なことでもなんでもないと思うの。世の中のお母さんたちは毎日当たり前に子どものために弁当を作っているわけじゃん。「なんで褒められないのかしら」とか思いながらね。だから逆に言えば「お母さんってすごいんだよ」という本なんだよね。

lf_toshimi_watanabe_toshirow_sub21.jpg
『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』¥1,620(税込み)Amazon

TOSHI-LOW: 皮肉にもお母さんがいなくなって、シングルファーザーになったから作っていたという(笑)。

俊美: そうそうそう。って、別に皮肉じゃねーけど(笑)。でも、"皮肉にも"っていうのが根っこにあるね。

TOSHI-LOW: ここ太字にするとこですよ(笑)。すべてはここから始まった。

俊美: 家庭の変化もあったし、震災もあったし、いろんなことが重なったんだよね。俺もTOSHI-LOWも震災があって、原発事故もあって日常生活や食べ物に関してすごくナーバスになっていたし。そんなときにハッとさ、まずはちゃんと息子を育てない限り、故郷(福島)だ、東北だなんて言っていられないなってすごい思って。それに気が付いて、前向きな気持ちになれたんだよね。

TOSHI-LOW: その結果として、この本が売れたっていうのはやっぱりすごい嬉しいことですよね。

俊美: 本当に嬉しいね。この本を出すときに、誰も傷つけたくないなって思ったの。例えば「コンビニ弁当なんかダメだ。だから作るんだ」みたいなメッセージを発信したりとか。自分が納得して、食べ物を選択していれば別にアンチなことを言わなくてもいいじゃない。実際、俺の弁当は大好きな福島の食材や名物を入れたり、地方ライブで行く先々で出会った素敵な食材や珍味を使ったり、自分が良いと思ったものを分け隔てなく使っていたんだよね。姉ちゃんにこの本をいちばん最初に見てもらって感想を聞いたら、「誰も傷つけていなくて良かった」って言ってくれた。自分の大切な人に喜んでもらえるのがやっぱりいちばん嬉しいからね。

lf_toshimi_watanabe_toshirow_sub03.jpg

TOSHI-LOW: そうですね。だからこそ余計、俊美さんが故郷(原発半径20キロ圏内の福島県富岡町)に帰れない状況や故郷の食べ物を汚すエネルギーに対して、俺ははっきり言って大反対なんで。誰しも故郷でお弁当を食べた思い出がひとりひとりあるじゃないですか。そんな大切な場所を奪われることがあってはならないと、本を読みながらしみじみとこみ上げてくるものがありました。

俊美: ありがとう。TOSHI-LOWも弁当作りを頑張っているけど、もともと普段から料理を作る人だったの?

TOSHI-LOW: 一応、料理はできるほうだったんです。茨城から東京に出てきてななんとなくダラダラとした日々を過ごしていたときに弁当屋でバイトをやり始めて。最初はフライパンしか振れなかったから、その社長に「とりあえず、調理師免許とってこい!」と言われて「嫌です」って言ったのに、無理矢理行かされて(笑)。そしたら、受かっちゃって。そのお祝いに弁当屋の社長からギターをもらったんです。未だに使っているんですけれど、そのギターで福島の仮設住宅でライブをしたときは感慨深いものがありましたね。

lf_toshimi_watanabe_toshirow_sub04.jpg

俊美: ちゃんといろんな出来事が巡り巡ってつながっているんだね。俺も食べ物に目覚めたのは東京に出てきてから。それまでは好き嫌いがすごい多くてさ。ひとり暮らしを始めて自分で料理をするようになってからは、好き嫌いが多いことで食生活が偏ってしまって大変な思いをしたから、自然と嫌いなものが減ったんだよね。それに、その頃はお洒落することに夢中だったから、2万8千円のラバーソウルがとにかく欲しくてさ。でも、あれを買うためには食費を切り詰めなきゃどうしても買えない。じゃあ、どうしたら良いのか考えたときに、食材を買うのではなく、自分で作ればいいんだ、って思ったの。だから、最初はお洒落をしたいがために料理をしていたようなところがあったね。

TOSHI-LOW: なるほど。今やっているようなことも昔からやっていたんですね。

俊美: うん。そうこうしているうちに作ることがどんどん楽しくなってきて、豚肉は三枚肉を塩でもんで旨味を出すと美味しくなる、とか自分なりのやり方が生まれてきて。

1  2  3  4

LIFESTYLE FEATURE TOP

  • OLD