〈エルメス(HERMÈS)〉の原点である馬具はパリの第一号店上階にあるアトリエでいまなおつくり続けられている。そこからは馬具工房をルーツとすることへの誇りと同時に、胸をはって仕事にのぞんでもらいたいという職人に向けたあたたかな眼差しも伝わってくる。
〈エルメス〉ほどものづくりの現場に敬意を払うメゾンはないが、なかでもレザーへの思いは並々ならぬものがある。世界を巡回し、大いに賞賛されたエキシビション「レザー・フォエバー」は好例だろう。その名のとおりレザーにスポットを当てたもので、〈エルメス〉が愛してやまないその魅力を10を超える切り口で解き明かしていく趣向だった。
そうして生まれたレザーの悪かろうはずがない。この点で、ノートブックの定番「ユリス」は格好の研究材料になる。切りっぱなしのレザーをスナップで留める「ユリス」はシンプルを極めたデザインが持ち味で、レザーのポテンシャルが存分に味わえる。
そのレザーは “ヴォー・トーゴ” といって、きわめてしなやかで密なシボを刻むカーフで〈エルメス〉の顔ともなる存在だ。シックでカラフルな色使いはフランスの老舗ならではのもの。サイズ・バリエーションを揃えて使い手のライフスタイルに寄り添おうとする姿勢もいい。
ここで紹介するのは「ユリス」の新機軸で、カードポケットをはじめとした収納のスペースを加えてあらたに登場したその名も「ユリス・ネオ」だ。
日々の生活にこそ贅沢なものを──というのは洗練された人々が決まって口にする生活信条だが、これに倣うならば、つねに手元にあり、手に触れるノートブックにあっては〈エルメス〉に勝るものはない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
Edit_Ryo Muramatsu
エルメスジャポン
電話:03-3569-3300
www.hermes.com