福岡・大名の賑やかな通りを一本入った先に、ひっそりと、でもたしかな存在感を放つ一軒の店があります。その名も「スーパーコア(Supercore)」。
目を引く看板の奥に広がるのは、ただのサロンとはひと味違います。扉を開けるとまず感じるのは、計算された空間と、どこか自由な空気。その両方が共存する、不思議と心地よさを感じる空間です。
「“音楽”や“ファッション”を含めた、いろいろなカルチャーが交差する場所にしたいんです」
そう話すのは、「スーパーコア」のディレクションを手がける庄司信也さん。過去に〈N.ハリウッド〉のプレスや、「ユースレコーズ」を主宰していたことは、2011年のフイナムの過去記事を確認いただくとして、クリエイティブ ・スタジオ「1994」や「BAR天竺」など、裏側から街と文化を支えてきました。
そんな庄司さんがサロンをつくる上で大事にするのは、ただ“かっこいい”を並べるのではなく、そこに流れる空気や体験の温度まで含めて“カルチャー”だということ。それは発売を予定しているアイテムにも現れています。
佐内さんが撮り下ろした店舗と福岡の海の風景、そこに「スーパーコア」のロゴ、そして〈ガサタン〉といえばなユニークなメッセージがプリントされたTシャツ。
まずは、写真家・佐内正史さん、スタイリストの伊賀大介さん、〈タンタン(TANGTANG)〉デザイナーの丹野真人さんの3人が手がけた〈ガサタン(GASATANG)〉のTシャツ。庄司さんらしい、第一弾プロジェクトです。そして同時に、アパレルレーベルの立ち上げも水面下で進行中しています。
「音や映像、美術や器、いろんなカルチャーがまわりにあるのに、自分たちで服をつくっていないのが不思議だったんです。“生活の中の余白”みたいな感覚を、服で表現できないかって考えてて」と庄司さん。
〈スーパーコア ウェア(SUPERCORE WEAR)〉と名付けられたこのレーベルが目指すのは、“ミニマルで、ちょっとやんちゃな日常着”です。それは、暮らしのなかに自然と馴染みつつ、どこか遊び心のある服たち。必要に迫られてつくるというより、感覚に従って生まれてくる、そんなレーベルです。
「単なる商品じゃなくて、“誰が・どこで・どんな空気の中で”つくったかが見えるものにしたい。そこまで含めて、“着るカルチャー”にできたらって思ってます。衣類は、シーズン毎しっかり出すというより、不定期にあくまで気分でリリースしていけたら、と」(庄司)
このレーベルは、店舗だけでなくオンラインでも楽しめるようにと、ウェブストアがオープンし、全国からアクセスできる新たな発信の場として展開していきます。
「東京にも、いろんな発信の場はあるけど、少しピントをずらして福岡からカルチャーを組み立てていけたらおもしろいなって。(福岡は)都市としてのスケール感も、人との距離もすごくちょうどよくて、空気がちゃんと残ってる気がするんです」(庄司)
そんな距離感のなかでじわじわと育ってきたのが「スーパーコア」という場所。これまで飲食を軸に文化が交差する場として機能してきましたが、現在は一部改装中。2025年秋、装いを新たに“サロン”と銘打ち本格始動します。
「サロンという名前を使用したのは、2Fで紹介制のバーとしても運営をスタートすることにも起因しています。よなよなサロンに集まる大人こどもによる宴も楽しんでほしいです」と庄司さんが話すように、静かに、でも確実に熱を持ち始めた「スーパーコア」。福岡という街で、カルチャーがまたひとつ新たなかたちをまといます。
Photo_Go Tanabe
Edit_Daiki Yamazaki(Rhino Inc.)