1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか17シーズン目! 2巡目のトップを飾る第133回目は、東急世田谷線・世田谷駅から徒歩5分にある「スワンク(SWANK)」。野上さんと小高さんのお2人は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
野上駿介 SWANK ディレクター & 小高佑樹 ショップマネージャー
Vol.133_マルディグラ・モチーフの Tシャツ
ー前回は“キャッチーでマイナー”という絶妙なラインを突いてきましたが、今回はどんなニュー・ヴィンテージをご紹介いただけるのでしょうか?
今回も同じ路線で「マルディグラ(Mardi Gras)」をテーマに選んでみました。
ー「マルディグラ」…とは!?
謝肉祭(カーニバル)と呼ばれる期間の最終日にあたる日のことで、米国南部や、カリブ海の国々、南米、ヨーロッパ各地で行われているキリスト教、それもカトリックのお祭りです。要は、教徒たちがこの謝肉祭の後に肉食禁止などの節制期間(四旬節)に入るため、「その前にとにかく飲んで食ってブチ上げようぜ!」っていうやつで。
ーなるほど。どうりで日本ではあまり馴染みがないワケですね。
マルディグラはその年によって開催日が異なるため、ぼくらもいまだ参加はできていないのですが、これにちなんだTシャツはちょいちょい見かけていて。
ー今回は、そのマルディグラの開催記念Tシャツを紹介いただくと。
正解です! もともとこういったお祭りやイベントのスーベニア物が好きで集めていたんですが、その中でも「これデザインが良いなぁ」とよく見てみたらマルディグラっていうパターンが多くって。入荷するとすぐに売れていってしまいますね。で、今回は3種類を用意しました。まずはコレ。ボディは〈ヘインズ(Hanes)〉のヘビーウェイトで、素材はコットン50%/ポリ50%。
ヘインズ“Mardi Gras in Bossier City,Louisiana graphic”のTシャツ ¥12,100(スワンク)
ーお! なんだかイイ雰囲気。
ーマルディグラのアイコンとなっているのが仮面です。これで素顔を隠すことで身分や階級に関係なく、年齢性別問わず無礼講で楽しむというもので、マルディグラ・カラーと呼ばれる紫・金・緑の3色が落とし込まれた定番的なデザインとなっています。ちなみに紫は正義、金は権力、緑は運命をそれぞれ象徴しているそうです。下部に入ったテキストは“Bossier City,Louisiana”。ボージャーシティは米国・ルイジアナ州北西部に位置し、カジノリゾート、ショッピング、軍事史が融合した北ルイジアナの主要都市だとか。
ーやはり米国南部で盛んなんですね。
ですね。同じくルイジアナ州のニューオーリンズなんかは特に有名です。今は宗教色が消えパレードや音楽が中心の祭りになっているそうですが、世界一と称されるブラジル・リオのカーニバルと並ぶ、世界の主要カーニバルのひとつにも数えられているとか。アイテム的には色彩豊かなデザインが多いイメージはあり、これなんかはグラフィックのタッチも相まって、実に洒落ています。
ー他には定番のデザイン要素ってあるんですか?
開催地名や開催年はお約束。バックプリントがあるものもあって、2枚目のコレがそうです。背面には“BBC THE MYSTIC KREWE OF BREW”のテキストが。調べてみたら、ルイジアナ州ニューオリンズにある老舗醸造クラブのものみたいですね。マルディグラにお酒も欠かすことのできないアイテムで、マジで死ぬほど飲むそうなので「まさに!」って感じ。
フルーツオブザルーム“Mardi Gras in New Orleans graphic”のTシャツ ¥12,100(スワンク)
ーフロントデザインもニューオリンズらしく、南部っぽい色使いですね。
ですね。ボディは〈フルーツオブザルーム(Fruit of the Loom)〉で USAメイド。先程のもこちらも90年代後半ですかね。その証拠にプリントに記された開催年は1996年。中心に描かれている仮面のキャラクターの首に掛けられているビーズのネックレスも、この祭りを象徴するアイコンのひとつです。フリーハンド手描き調のグラフィックがよりローカル感を醸し出していて、メチャクチャ雰囲気良し。
ーなかなか手の込んだデザインですが、シルクスクリーンプリントだし大変そう……。
ベタ塗りではなく濃淡のあるチョークアートのような雰囲気で模様も付けていて、しかもフリーハンド調、さらにこの色数ですからね。制作費もそうですが、版分けも面倒でしょうし、同じモノをいま作ろうとしたら、マジで死ぬほど大変(笑)。そういう意味でも古着で探す価値のある1着といえるかなって。
ーこれぞニュー・ヴィンテージ。では最後の1着をお願いします!
こちらも年代は同じくらいで、ボディは〈シグナルスポーツ(SIGNAL SPORTS)〉という1991年創立のブランクボディメーカー。90年代製でアメリカンな雰囲気のするデザインの個体に多く見られ、USメイドということから人気があります。
シグナルスポーツ“Mardi Gras in Galveston graphic”のTシャツ ¥7,700(スワンク)
ーこれもルイジアナ州のどこかですか?
いえ、フロントデザインにも記されているテキサス州ガルベストンという街で開催された際のものだと思われます。この“MOMUS PROCLAIMS(モムスは宣言する)”というテキストも、同地で活動するナイツ・オブ・モムスというマルディグラ支援団体が、パレードの告知をする際に使うフレーズのようですね。
ーへぇ〜。1枚のTシャツに色々な情報が隠されていて、ディグって着るだけでなく調べるのもまた楽しい。
「米国でも南部で盛んという話だけど、テキサスって西部じゃないの?」と気になって調べてみることで、「実は南部なんだ」と知ることができたりと、より一歩深く楽しめるはず。先ほども話したように色使いも楽しいものが多いので、祭り+カラフル=テンションが上がるし、夏っぽいという軽いノリで着てみてもイイですしね。実際「カラーボディも面白いかも?」という声は増えてきている気がするので、白や黒といったド定番ではなく派手なボディカラーにぜひチャレンジしてみてもらえればなと。
野上駿介 / SWANK ディレクター & 小高佑樹 / ショップマネージャー
2021年8月にECショップからスタートし、イベント出店を中心に活動。2024年8月に実店舗「SWANK」を東急世田谷線・世田谷駅近くにオープン。USモノを軸としながらも、年代やブランドなどのいわゆる希少性や付加価値にこだわらず、ヴィンテージからレギュラー、クラシカルなモノから、カルチャーを感じさせるモノ、さらにはデザイナーズブランドまで幅広く、その時々の気分を尊重したセレクトを心がける。
インスタグラム:@swank.usedclothing

