1969年、東京・池袋の地に開業した「PARCO」。そこから57年…大幅なリニューアルを遂げ、テナントも雰囲気も刷新されました。そんな記念すべきタイミングでキャンペーンビジュアルを手がけたのが、CG、映像、グラフィックを横断するクリエイティブチーム「釣部東京」です。館内に現れた、どこか見慣れない池の生き物たちはどう生まれたのか、ビジュアルができるまでにどのような寄り道をしたのか、メンバー4人に話を聞きました。
- Photo_Tatsuki Nakata
- Text_Keisuke Kimura
- Edit_Yuri Sudo
PROFILE:釣部東京
映像制作を主軸に活動するビジュアル制作集団。CG、実写、グラフィックデザイン、空間デザインなど複数の領域を実験的に横断しながら、アートワーク、ミュージックビデオ、モーションデザイン、ライブ演出、展覧会ディレクション、短編映画などを手がける。トップの写真右から代表の松永昂史さん、高橋彩基さん、渡部克哉さん、村上由宇麻さん。
公式サイト
公式Instagram
「これは引けぬ」と思った「池袋PARCO」からの長文メール。
―「池袋PARCO」のビジュアルを担当することになった経緯から、教えてください。
松永:最初はメールでした。去年の秋ぐらいに、担当の方から「リニューアルキャンペーンのデザインをお願いしたい」と連絡をいただいて。それがすごく熱量のある長文で。
―依頼を受けるかどうかは、みんなで決めるんですか?
松永:基本的にはそうですね。今回は高橋が「ぜひやろう」と。
高橋:「PARCO」のグラフィックには歴史があって、昔からずっと好きで見てきたので、依頼があったときはうれしかったですね。
松永:そのメールには、「池袋PARCO」にとって創業以来の大イベントであること、さらに石岡瑛子さんをはじめとする「PARCO」のクリエイティブの歴史に、爪痕を残したいと書いてあって。これは引けぬ、やらねばならぬ、と(笑)
―具体的なオーダーはあったんですか?
松永:池袋はファッションだけじゃなく、サブカル的な要素もあって、いろんなカルチャーが雑多にある街ですよね。それを表現してほしいと。
釣部東京の事務所の一角。
海でも湖でもなく、やっぱり「池」。
―アイデア出しはどのように行われたんでしょう?
松永:まずはみんなで、見た目のリファレンスというより、考え方や概念を出していく作業からはじめました。ここに費やした時間が一番長かったかもしれないです。2ヶ月くらいやってましたから。
高橋:行ったり来たりしましたよね。
松永:結局は別の案が採用になりましたが、「めでたしおめかし天ぷら」とか「鳥風船」とか、複数ご提案しました。イメージとしては、池袋には、いろんな人やモノが集まっていて、それが池袋という枠の中でゆるくグループになっている。天ぷらって、中身の具材は全部違うのに、衣ひとつで仲間になるじゃないですか。そんな感じで。
渡部:途中で「『PARCO』も服を売ってるから衣屋さんや」って話になったりもしましたね。
高橋:懐かしいですね(笑)
松永:あと、せっかくのリニューアルなので、ポジティブでめでたい要素も欲しかった。そうして考えを巡らせるうちに、コピーが「NEW FRIENDS」になったんです。既存のテナントと新しいテナントも「NEW FRIENDS」だし、まだ出会っていないものと出会っていく場所でもある、という意味を込めています。
ー池袋という街の雑多さは、具体的にどんな部分にあると考えたんでしょうか?
松永:まず、渋谷や新宿も雑多ですけど、新陳代謝が速くて流動性が高い。池袋は雑多は雑多でも、もうちょっと滞留しているイメージ。ビルも新しいものばかりじゃないし、ギラギラしているけどピカピカはしていない。でかい駅ですけど、ほかの駅よりも明らかに癖がある。
渡部:会議でも「池袋っぽさってなんぞや」って、ずっと話してましたね。
高橋:そこからデザインのベースを決めるにあたり、行き着いたのが「池」。最初は「池袋だから池」っていう、バカみたいな理由だったんですけど、考えるほど街の雰囲気であったり、ある種の淀みの話になっていき、この街は海でも湖でもなく、やっぱり池だなと。
松永:謎の生命体が発生してそうな感じも含めて。
高橋:池の生き物って地味じゃないですか。ナマズ、メダカ、タニシ、アメンボ……。普段あまりフォーカスされない生き物が広告になるっておもしろいよねと。
村上:虫とか動物は、ぼくと渡部でCGでつくりました。全部で15匹ぐらいです。
渡部:最初にできたのが鳥で、これが他の生き物の指針になった気がします。どこかワンポイントを変にしつつ、特定の何かにはならない。普遍的なデフォルメ生物を意識して。
ハサミで切って水を垂らす。
―生き物以外は実写だと伺いました。
高橋:カメラマンの寺内尭さんと一緒に植物園やあたたかい場所に行って、空や池の写真を膨大に撮影していただきました。
―風景と生き物は、どう混ぜていったんでしょうか?
高橋:風景もですし、ふたりがつくってくれた生き物もプリントアウトして、何層にも重ねたアクリル板の上に置いて撮影しました。その写真が、ビジュアルとして使われているんです。
※撮影:釣部東京
※撮影:釣部東京
※撮影:釣部東京
松永:あと、アクリル板のいちばん上に水を垂らして撮影してます。これがまた大変で、水なので形が毎回変わる。とにかくたくさんの水のパターンを撮影して、その中からいいものを選んでます。
―デジタルですべて完結できそうなところですが、なぜ、あえてアナログにこだわったんでしょうか?
松永:見飽きないものをつくりたかったんです。たとえば(石岡さんの)「PARCO」の広告って、何十年経っても強いじゃないですか。個人的な感覚ですが、CGで完結すると、数年で古さを感じてしまうことが多い気がして。今回は写真のほうが長い年月を経ても新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思いました。
―完成したビジュアルを見て、手応えはありましたか?
高橋:実際に大きく張り出されたポスターを見たら、切り絵が傾いてたり端切れとかが普通に見えていて。アナログならではの違和感みたいなのが感じられて好きです。ぜひじっくり、見ていただきたいですね。
渡部:ぼくと村上は、生き物がこんなグラフィックになるとは知らずにつくっていたので、「こうなるんや」とびっくりしました。
村上:ホントそう。
松永:いつも後から見ると、コントロールしていない部分のほうがおもしろかったりするんです。2人にお願いした生き物も、想定していたものとはちょっと違う。けど、結果的に良かった。余白を残してつくることは、これからも大事にしていきたいですね。
―ちなみに、生き物たちに名前はあるんですか?
松永:いろんなものの比喩になっているので、あえて付けていません。
高橋:「池袋PARCO」でノベルティとして配られるカレンダーには付いてるんですけど。
松永:えっ、付けたの?(笑)

