自身の首の複製を抱えて闊歩するモデル。ランウェイの中央に置かれた手術台。観客の度肝を抜いた〈グッチ(GUCCI)〉の2018-19年秋冬コレクションはさながらクリエイティブ・デイレクター、アレッサンドロ・ミケーレ本人の開頭手術の趣もあった。
アメリカの学者、ダナ・ハラウェイが1985年に発表した論文『サイボーグ宣言』はフェミニズム理論に一石を投じて評価された。この論文をインスピレーション源に服のあり方を見つめ直したミケーレは、映画会社や野球チームのロゴ、インドのターバン、日本の漫画などさまざまな文化を縦横無尽に切り取り、縫い合わせてボーダーレスなコレクションをつくりあげた。
ショー終わりのインタビューでミケーレはこう語ったといわれている。私たちはみな、自らのフランケンシュタイン博士です──。そこには世の中に迎合することなく、己が信じる、こうなりたいと願う自分を主体的に楽しもうよ、という思いが込められている。
21世紀のフランケンシュタインは、スウェットを着た。それはアメリカン・カジュアルをこよなく愛するミケーレらしいチョイスであり、性差を無効とするチョイスである。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
Edit_Ryo Muramatsu
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