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【FOCUS IT.】人々を熱狂させるノマドな古着屋weberの実像。

ある人にとってみれば、ただただ古びた服。一方、ある人にとってみれば、いくらお金を積んでも手に入れたいほどの価値がある。需要と供給のバランスで価値が浮き沈みし、さながら株や仮想通貨といった投資の対象のようであり、深入りすればするほど混迷を極めていく。古着の世界は実に不思議で奥深い。今回紹介する「weber」は実店舗もECサイトも持たない、神出鬼没の古着屋です。加えて、取り扱う商品は、1着数万円はあたり前で、数十万円もの値がつくものも平然と並びます。評判が評判を呼び、いまでは開店前から客が列をなすほどに。いったい誰が、どうやって運営しているのか、その謎に迫ります。

12月1日(土)からはじまる「weber」4度目の出店。開催日の数日前に、会場となる「東京ミッドタウン日比谷」の3階、「ヒビヤ セントラル マーケット」を訪れました。会場のなかには代表者の池田仁さんと、それを支える3人のメンバーたち。和気あいあいとした雰囲気で開店準備を進める彼らは、古着を生業としているわけではありません。普段は、日本屈指のECサイト「ZOZOTOWN」で働く社員たちなのです。

「ぼくらが働く『ZOZOTOWN』は副業がOKなんです。あと、知ってのとおり、うちの代表である前澤は好きなことをとことん追いかける人で、そのDNAみたいなものが自然と社員たちにも流れている。そこに感化された部分もあって、なにか副業をはじめようと思ったときに、高校からずっと古着が好きだったので、古着屋をやりたいと思ったんです。それを仲間に伝えたら賛同してくれて、じゃあやってみようかと」

彼らは古着のプロではけっしてない。好きが高じて古着屋をはじめた素人と言っていい。けれど、古着への愛と注ぐ熱量、かける時間は、副業とは思えないほど。だからこそ、ここまで古着好きたちを惹きつけるショップに成長していったのです。ではなぜ、素人の彼らが、ここまで希少価値の高いものを集められるのか。

「いろんな人に仕入れのルートは聞かれるんですが、あの手この手でかき集めています。足で稼ぐこともあれば、海外のオークションサイトで落札することもある。割合は半々くらいだと思います」

なかでも、人々を熱狂させるのは、写真家・ブルース・ウェバーが撮影した作品がプリントされたTシャツの数々。

「もともと古着のTシャツが好きで、大学生の頃にブルース・ウェバーのTシャツに出会いました。そこから熱中し、どんどんのめり込んでいったんです。店名も、もちろんそこから拝借しました。今回は『I like』というテーマを設けて商品を構成したので、自分がいちばん好きなブルース・ウェバーのTシャツもたくさん揃っています」

ブルース・ウェバーがリバー・フェニックスの死後、追悼の意をこめ関係者のみに配った幻のTシャツ。

〈ステューシー〉の80年代前半につくられた、キュビズムフェイスのTシャツ。世に出回っている数でいうと、数ある商品のなかで群を抜いて少ない。

ブルース・ウェバーのTシャツを一度にたくさん拝めるなんて、そうそうあるものではないですが、「weber」にくれば必ず拝める。その認知が広まり、回を重ねていくごとに、店前にできる行列は着実に長くなってきています。

これらのTシャツも、最初から価値が高かったわけじゃない。誰とは言わず、世の中のムードが高級品に押し上げていった結果のいまなのです。じゃあ、次にくるのは一体なんなのか。「weber」が思うネクストヴィンテージとは。自身でも「ZOZOTOWN」に入社する前に古着屋を経営し、現在も副業として古着に携わる「weber」の参謀、畠中一樹さんが教えてくれました。

「いま思うネクストヴィンテージは2000年代のものです。まだ、街の古着屋でもそんなに価値はないですが、間違いなく今後、希少価値が高くなってくると思うんです。なので、今回は2000年代の映画ものを相当数集めました。たぶん、いまこの瞬間に限れば、世界でいちばん集まっていると思いますね」

クエンティン・タランティーノと盟友ロバート・ロドリゲス監督が競作した、2007年公開の映画『グラインドハウス』のTシャツ。

2000年代以前の映画にまつわるTシャツも豊富。

市場では90年代の古着の価値が高騰していますが、それがいまからおよそ20年前。けれど、あと数年経てば、2000年代のものが20年前のものになる。そう考えると、必然なことかもしれません。続けて、畠中さんが語ってくれたのが、新しい古着の価値観。

2001年公開の映画『ブロウ』のTシャツ。フロント、バックともにジョニー・デップがプリントされている。中国製。

「古着ってアメリカ製じゃなきゃとか、ウィメンズの大きいサイズをメンズとして売るのがタブー視されている。というよりは、ダサいっていう風潮があると思うんですが、その価値感が絶対ではなくなってきたと最近は感じます。インクジェットの中国製でもかっこいいよねっていう」

いままでの価値観を踏襲しながら、自分たちが新たな価値を定義していく。そんな強い思いも感じた言葉は非常に印象的でした。そして、今後「weber」はどこへ向かっていくのか。

「3年の目標は立てていて、まず1年目の今年は人気のあるお店にしたいということ。で、来年か再来年にはブルース・ウェバーと仕事をできたらなと考えています。突飛な目標に聞こえるかもしれませんが、実は『weber』のポストに本人から数回いいねがあったんですよ。だから認識してくれてるかも?と思っています。あと、利益ももちろん大事なんですが、あくまで仲間たちとワイワイやっていきたいんです。学生時代の部活くらいの感じで」

1980年代前半の〈GERRY〉のダウンコート。

〈パタゴニア〉や〈ザ・ノース・フェイス〉のヴィンテージも品揃えが豊富。

今回の「weber」はさきに挙げたブルース・ウェバーと映画のほか、アウトドアヴィンテージも数多く揃っています。

「weber」の屋号を壁に貼り終え、写真をとるメンバーたち。

きっと今回も並びがでるだろうし、早い段階でレアなアイテムはなくなっていくでしょう。けれど、普段はお目にかかれないアイテムたちが揃いに揃っています。そんなお宝たちを探しに、ぜひノマドな古着屋「weber」に訪れてみてください。会期中は、本職である「ZOZOTOWN」を有給休暇でお休み中の池田さんも、店頭に立つそうです。

Text_Keisuke Kimura


weber
会期:12月1日(土)〜9日(日)
場所:ヒビヤ セントラル マーケット/Tent gallery
住所:東京都千代田区有楽町1−1−2東京ミッドタウン日比谷3階
電話:03-6205-7894
hibiya-central-market.jp
www.instagram.com/weber71

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