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写真家・山谷佑介のパフォーマンスアート「Doors」in ヨーロッパ。

先日フイナムのニュースでお伝えした、写真家山谷佑介による新たなパフォーマンスアート「Doors」のヨーロッパツアー。

前代未聞のドラムパフォーマンス「Doors」を知っていますか? 表現者・山谷佑介の挑戦はついにヨーロッパへ。

欧州数カ国をクルマで廻るという、トラブルの匂いがプンプンする旅。当然のようにいろいろあったようです。

「こんにちはー! びっくりするくらい順調にレンタカーまでピックできて、今フランスのカレーに着きました! ところでGBプレート(UK国外に出るときに車に貼るステッカー)つけてないとやばいですか? 借りた車についてなかったです笑」

このメールは山谷さんが、ロンドン在住のライター吉田早央里さんに送ったもの。

吉田さんは、山谷さんのレンタカー手配のお手伝いをしたことをきっかけに、今回のヨーロッパツアー前半戦に同行することに。今回はその模様をお届けしましょう。以下吉田さんによるレポートです。

9月2日にロンドン入りし、必要な機材、レンタカーを借り、UKからヨーロッパ大陸に船で出発した写真家・山谷佑介とエンジニア・山森文生。フランスへ向かうフェリーのなかでもらった紙に、GBステッカーは貼ってありますか??と書いてあるのを見て、私に連絡が来たのは3日の朝でした。

「GBステッカーに関して、車両保険について一緒に説明されませんでしたか??」と私が送ったメールへの返信は「保険、、すっかり他のことに気を取られて聞くの忘れてしまったかも。保障範囲とか諸々聞いたんですが、俺、EU諸国に行くって言ったかな、、と」。 (UKはEU諸国ではあるが、大陸に出る時ときには事前に申請をし、追加保険料金の支払いが必要です。車でヨーロッパ旅行を計画する際にはご注意を。)

ここだけの話、私は心のなかで思いました。「嘘でしょ。レンタカーで自由気ままにフェリーに乗ってお出掛け出来るほど、この国は自由じゃないよ」。本気で焦った私は鬼の勢いで彼にラインを送り続け、本当に笑えない状況のなか、彼はこう言いました。「いや、笑いましょう😂」と。。。絵文字使ってる場合ではない。そう言ってやりたかったです。

そんなこんなで、保険に関する電話をレンタカー会社にかけまくり、マネージャーから電話かけ直させる。と言われ海外ならではのたらい回しをくらい、最終的にレンタカー会社からの答えは2つ。

・UKに戻ってくるか。

・誰かがEUの保険を彼がいる場所まで届けるか

の二択だったのでした。

事の重大さに目を背け、呑気に車を走らせ続けた山谷達はドイツのハノーファーまで来てしまっており、最初のパフォーマンスまでこの時点で残り48時間、UKに戻ってくるという選択肢は無く、私が代理人となり保険証を握りしめ、ヨーロッパツアー初公演の地ポーランドのヴロツワフまで向かったのが、このツアーに同行する始まりのストーリーでした。
(ちなみにこのまま無保険で走り続けて事故を起こした場合、最悪、新車を購入&営業保証で1,000万近い金額を請求することになるとレンタカー会社は言っていました。みんな保険はしっかりかけようね!)

友人の紹介でレンタカー探しを手伝った経緯もあり、もともと彼のパフォーマンスやクラウドファウンディングのことは知ってたけれど、生で見るのは初めてだった私。簡単に説明をすると、彼がドラムを叩くごとにシャッターが切られ、そのセルフポートレートが8台のプリンターから出てくる仕組みで、(ツアー中にプリンターは増えていき、現在は15台になったそう!)

ヴロツワフ、ベルリンともに観客からの反応もとても良く、パフォーマンスが終わるとたくさんの人が彼に話しかけに来ていた。

「好きな写真1枚持って帰って!」と説明したにも関わらず何枚も持ち帰る人や、サインを求める人。ベルリンのパフォーマンス中には、ドラムを叩くことに疲れ、その手を止めようとする山谷に「もっとやれ!まだいけるだろう!」なんて歓声も上がった。

「なぜこのパフォーマンスにたどり着いたのか?」素朴な疑問を彼にぶつけたのは、ヴロツワフパフォーマンスが終わってすぐのことでした。答えは至って簡単で、「写真を撮るというのはとても暴力的な行為だから」。彼はそう言い、プリンターが焼いたばかりの自身の写真を見つめながら、こう続けた。「こんな自分の表情、自分でも見たことないしね笑」。と。そして、SNSがあり拡散することが簡単な世の中で、自らその地へ足を運び、とても面倒臭くアナログなやり方で自分を拡散しているとも語った。

プリンターがたくさんの“山谷”を製造する無機質な音と、二度と同じリズムを奏でることはないであろうドラムの音。静と動のバランス感が絶妙で、その無情な機械音はバイオレンスの象徴であり、ドラムは“生”の象徴として表現しているのだろう。

これまでの写真家人生で、数十万枚を超えるであろう写真を撮ってきた山谷。他人に向けていたレンズを自分に向けることで、今まで人にしてきた暴挙を精神的、肉体的に理解しようといったところで、それは自身の職業へのアンチテーゼとも捉えられないだろうか?

話は一旦逸れるが、以前別件で行ったアシッドジャズのパイオニア、ジャイルス・ピーターソンの取材で彼が言っていた言葉を思い出した。「素晴らしいクリエーションは反骨心とアンチテーゼから生まれる」。山谷の「Doors」が言葉の通じないヨーロッパの地でも人を惹きつけられるのは彼が持つ確固たる意思とアンチテーゼがそこにはあるからではないだろうか。

ポーランドからベルリンへ車で移動し、約1週間弱に渡り彼らのツアーを共にした。何度も一緒にお酒を飲み、政治のことや仕事のこと。様々な話を通し見えてきた“山谷佑介”は、ヨーロッパツアーに挑戦出来るタフさと、繊細さが極端に共存している人物であった。

半ば巻き込まれたように彼のツアーに参加した私であったが、自分のやりたいことに真剣に向き合う彼の姿、考え方に感化され魅せられた観客の一人になったことは言うまでもない。

私がロンドンに帰った後、ベルリンでアートウィークが始まり、その目の前にある駐車場スペースで無許可のゲリラライブを行ったそう。

その時の模様を、ベルリン在住のライターの藤田芽生さんからコメントをもらいました。彼女は山谷がベルリンに滞在していた時の助っ人でもあります。

上半身裸の男が、髪(アフロ)を振り乱しながらドラムを叩くと稲妻のようなフラッシュが路上へと突き刺さる。さらに両脇に無造作に積み上げられたプリンターから流れてくるのは彼自身のセルフポートレイトだ。アートウィーク初日に路上で行われたゲリラパフォーマンスを一言でまとめると“クレイジー”。だけど、この男がやりたいことは何なのだろう?と人々は足を止めて考えざるを得ないようだったし、自分の視覚に潜入してきた刺激から物事を考えるスイッチが、カチッと入ったように見えた。
“格好良いアート”が大量に消費される今の時代だからこそ、その先にある表現の核心部分へ最短距離で導いていく山谷の表現は気持ち良い。単純で潔い彼の意思表明は、言語や文化を超えて見ている人々の脳みそにジンジンと響き渡るのだろう。

Perspective(個人の考え方、視点)。山谷との会話でよく出てきた言葉。

今回のツアーの写真集は9月30日(月)まで予約販売を行なっている。あなたのPerspectiveで、ヨーロッパの山谷を感じてみて欲しい。

このアート作品は写真を観客に届けた時に完成する。そう彼は思っているはず。

最後に余談だが、日本を出発した後、大きなデモが行われていた香港経由でロンドンに来た彼ら。その直後に勃発したレンタカーの保険問題。最近の彼のインスタグラムで見た情報ですが、どこかの国で車をレッカーされたそう(笑)。今はロンドンに戻って来ている頃だろうか?? 無事に日本に帰国できることを祈っています。

INFORMATION

GALLERY YAMATANI

galleryyamatani.stores.jp/items/5d5341638e691919d6e803a9
※写真集の販売は、9月30日(月)まで。

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