約2年前に公開したこちらの記事を覚えていますか? そう、亀甲縛りのウサギでおなじみのきっこうちゃんのことです。当時は仙台を中心に局地的な盛り上がりを見せるローカルキャラクターでしたが、あの記事をきっかけにさまざまなブランドやショップ、そしてプロスポーツチームともコラボレートを果たし、いまではポピュラーな存在になりつつあります。
フイナムでは10月に行われた「HNF(フイナムのフェス)」のために手ぬぐいをデザインしてもらいました。東京の遊郭である吉原をモチーフにさまざまなグッズをつくる〈新吉原〉とのトリプルコラボです。フイナムでの告知記事を見た方はもちろん、ブースで見て気になった方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、いまではファッション界隈を中心に認知されつつあるのに、その活動内容やきっこうちゃんの素顔に関してはまだまだ謎が多いのも事実。かわいい顔して実はド変態(!?)なきっこうちゃんのこと、もっと知りたくありませんか?
ということで、きっこうちゃんの生みの親であるバチコさんに再び声を掛けました! 前回と同様、パーカにデニム、スニーカーというカジュアルな出で立ちで登場した彼女。人気になってもスタイルは変わらず、ちょっと安心(笑)。気になるその後の状況について話を聞きました。
ー前回の記事の公開から2年が経過しました。お久しぶりですね。
あの記事、すごく反響があって、きっこうちゃんのイベントでも「記事を見ました!」って言ってくれる人がたくさんいてビックリしてます。インスタのフォロワーもすごく増えたんですよ!
ーどれくらい増えたんですか?
当時は1,000人もいなかったんですけど、いまは1.2万人…! いろんな企業とコラボするたびにどんどん増えていくんです。
ーイベントの時期になると、スマホがひっきりなしに鳴るみたいな?
そうですね。イベントの開催が発表になると、一気に何百人とか増えます。
ーそういうのって感覚として気持ちいいんですか?
いや、「怖っ」って思います(苦笑)。予想以上の盛り上がりなので、下手なことできないなって…。でも、ワクワクする気持ちももちろんあるんですけどね。
ーフォロワーの中には有名人もいるんですか?
どなたがフォローしてくれてるか自分でも把握してないんです。でも友達やファンの方々から「あの人がきっこうちゃんのグッズ持ってたよ」って教えてもらったりすることはあります。声優さんとか、舞台俳優さん、ミュージシャンの方が持ってくれているそうです。個人的にいちばん嬉しかったのはラッパーのかせきさいだぁさんですね。わたし大好きなんです!
ーいつかコラボできるといいですね。改めて、いままでどんなショップやブランドとコラボしてきたか教えてください。
いちばん多いのは「ジャーナルスタンダード」です。ブランドだと、ムラジュンさんの〈tr.4 サスペンション〉や〈ミルクフェド〉。あと、「楽天イーグルス」と「ベガルダ仙台」ともコラボしました。
ー「楽天イーグルス」や「ベガルダ仙台」なんて、すごくメジャーな存在じゃないですか!
きっこうちゃんは仙台のご当地キャラとしてやっていきたいという気持ちがあったので、お声がけしてもらったときはすごく嬉しかったですね。だって、両チームとも仙台の象徴じゃないですか。仙台にはむすび丸っていう有名なゆるキャラがいるんですけど、友達からは「もうむすび丸を超えたね」って冗談で言われます(笑)。
ーきっこうちゃんの地元愛を感じます。
有名なクリエイターとか、みんな東京へ行っちゃうので、そういうのが私は寂しいです。福岡のシーンとかを見ていると、みなさんすごく地元愛があっていいなぁって思います。だから私はこれからも仙台キャラ推しでいきます!
ーアートというよりもひとつのキャラクターとしてきっこうちゃんを世に送り出している感覚ですか?
そうです。私はアーティストではなくてデザイナーなので、きっこうちゃんがいろんな人に親しまれるようにかわいく描ければそれでいいですね。アートとして括って敷居を高くしたくないんです。みんなのきっこうちゃんであるのが理想です。
ーライバル視しているキャラクターは?
ん~、キティちゃん…?(笑)
ー世界的なキャラクターですね。
願わくばサンリオとなにかしたいです。でも、そうしたら縛れなくなりそう…。
ー性的な表現に対して世の中から何か言われることはありますか?
いいことも悪いことも両方言われます。「エロをポップに描いてていい」とかおもしろいって声がある一方で、「こういう性的な表現を大衆的にやるもんじゃない」っていう意見もあったりして。いまはポジティブな意見しか取り入れないようにしています。
ーネガティブな意見があるのは、きっこうちゃんがそれだけポピュラーなキャラクターになったことの証であると思います。
とはいえ、大きなブランドや企業とのコラボも増えてきたので、あまり迷惑をかけたくないんですよね…。そこが悩みどころではあるんですが、止めたいと思う気持ちはまったくないので、これからも描きますよ!
ー仮にですが、コラボのオファーがなくなったとしても、きっこうちゃんを続けますか?
もちろんです。私が飽きたときがきっこうちゃんの終焉です。
ーきっこうちゃんに対するバチコさんのモチベーションはどんなところからやってくるんでしょうか。
私は単純にかわいいと思って描いています。それをみなさんに「かわいいでしょ?」って見せたくてやってるんです。実際にイベントへ来てくれたり、きっこうちゃんを好きって言ってくれる方も、“かわいい” っていうところに共感してくれていると思うので、自分がかわいいって思う気持ちは見失わずにこれからも描き続けます!
ー話は変わりますが、先日の「HNF(フイナムのフェス)」では、〈新吉原〉とコラボして手ぬぐいをつくりました。〈新吉原〉のことはご存知でしたか?
恥ずかしながら知りませんでした。でもHPやインスタを拝見させてもらって、すごいかわいいって思いました。エロをモチーフにしてるとか、そういうのを抜きにして、単純にビジュアルとして素敵だなって。
ーある意味ではきっこうちゃんと共通点があると思うんですけど、〈新吉原〉の岡野弥生さんとは何か話されたりしたんですか?
岡野さんが女性だと知ったときに、早くお会いしたい! って思いました。なんだか気が合いそうだと思って。実際にお会いする機会はなかったんですけど、インスタのメッセージで何度かやり取りさせてもらいました。もともとあった〈新吉原〉の手ぬぐいを私がアレンジする形で今回のアイテムをつくったんです。
ー出来上がりを見たときの気持ちを教えてください。
超かわいいと思いました。手ぬぐいってつくったことなかったから、それも嬉しかったです。きっこうちゃんって和のキャラクターだし、それも〈新吉原〉のモチーフにハマっててよかったですね。岡野さんもかわいいって言ってくれて嬉しかったです。この前、京都で「ベイクルーズ フェスティバル」が開催されたときに舞妓のきっこうちゃんを描いたんですけど、それもかわいいって褒めてくれたんですよ。また一緒にできることがあれば是非やりたいですね!
ーきっこうちゃんの活躍は国内だけにとどまらず、台湾でも人気と聞きました。
台湾の「ジャーナルスタンダード」でポップアップをやらさせてもらいました。そのときはタピオカきっこうちゃんを描きました。現地の友達もできたりして、すごく刺激をもらってます。
ー海外から反響が出るのもすごいですね。
日本人なら亀甲縛りって分かると思うんですけど、海外だと知ってる人は少ないと思うんです。でも、文化を超えて “かわいい” っていうのが伝わるのが本当に嬉しいですね。実は香港やフィリンピンとか、他のアジア圏の国からも遊びに来てよってメッセージが来ることもあるんです。
ーアメリカやヨーロッパはないんですか?
実は来年の春にブルックリンでイベントをやる予定です。〈パークデリ〉っていうスケートブランドがあるんですけど、そこのスタッフがきっこうちゃんのファンだったみたいで、オファーを頂きました。わたし、まだアメリカ本土に行ったことがないので、すごく楽しみなんです。そこへ行ってまたいい影響を受けたら、新たなきっこうちゃんが生まれると思います。
ー最後に今後の目標について聞かせてください。前回のインタビューでは「着ぐるみをつくりたい!」と話してましたが、それは実現しましたか?
お金がかかりそうで、まだ実現は難しそうです。でも、つくりたいです。2年経ってもまだふわふわな状態でなんだかすみません…。でもそういえば、今度クラウドファンディングでぬいぐるみをつくります!
ーへぇ~! どうしてぬいぐるみなんですか?
え? だって、かわいいじゃないですか!
ー確かにぬいぐるみのきっこうちゃん、欲しいです。
これは間に合えば年内、遅くとも年明け頃にはアナウンスができる予定です。期待して下さい!
ということで、2年ぶりに姿を現せてくれたバチコさんでした。国内だけでなく海外からもオファーがくるほどワールドワイドなキャラクターに進化を遂げていたきっこうちゃん。これからどんなユニークなキャラクターが登場するのか、ますます目が離せませんね。
Photo_Kota Yagi
Text_Yuichiro Tsuji