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【STAY HOME】都市封鎖。東京とは事情が異なるパリの今を緊急リポート。

4月7日、東京をはじめとする日本の都市圏で緊急事態宣言が発令されました。新型コロナウイルスの感染者は増加の一途、生活は制限され、経済も麻痺しはじめています。そんな中、フイナム編集部も予定していた取材を見送ったり、撮影を自粛したり、イベントを延期したり、これまでに無い状況を経験しています。もともとぼくたちは世界各地で取材することも多く、本来であれば6月のパリ・メンズファッションウィークにも行く予定でした。しかし、今、パリはロックダウンされ、その開催自体中止になってしまいました。そんなファッションと結びつきが深い都市で人々はどのような生活を送っているのか。探ってみると東京とはかなり事情が異なるようです。今の状況を現地在住のライター、角野恵子さんにリポートしてもらいました。

外出制限をどう切り抜けるか? 電話取材から見える、1ヵ月経ったパリ。

新型コロナウイルスは、今や世界中の国々に甚大な被害を与えています。フランスの新聞「ル・モンド」は、3月24日時点で175カ国が外出制限にあると報道しました。地球上の人口の半数以上が、自宅にとどまっているという計算です。

フランスでは3月17日正午から外出制限がはじまり、「必要最低限の外出のみ」許可される生活が約1ヵ月続いています。必要最低限とは、(1)食料品等の買い物、(2)通院、(3)ジョギングや犬の散歩、(4)助けが必要な家族のための移動、(5)テレワークが不可能な場合の通勤。違反者には135ユーロ(約16,000円)の罰金が科されます。こう聞くと「ある日突然普通の生活ができなくなるなんて無理」と思われるかもしれません。が、フランス国民はこれを「1月からはじまった新型コロナウイルス対策が成果を上げず、その結果避けられなかった最終手段」と理解しているようです。外出制限に先駆け3月15日には飲食店や映画館が休業し、16日には全国一斉に学校休校とテレワークがはじまり、そして17日正午にはあらゆる店がシャッターを下ろし人々は外出制限に入りました。不思議なほどスムーズに。社会の混乱は起こりませんでした。

1人1人はどのように対応したのでしょう? 「パリ市観光局」に勤務するエロディ・ベルタさんに伺いました。

「テレワークで仕事を続けています。子供のいる同僚たちは、通常の勤務時間とまったく同じリズムで仕事をしているようですが、一人暮らしの私はゆっくりはじめて、結構遅くまで働いています。今は主に休業中のパリ市内のホテルを医療従事者や病院に振り分ける担当をしています。毎日忙しいです。こうして働き続けていますから収入の心配はありません」

外出制限、と聞くと、何もできない状態(ヒマ?)を想像してしまいますが、先日はあえて有給休暇を取得したのだそう。休む必要を感じるほどに、集中して仕事をしているようでした。

スーパーは入口に消毒ジェルを置き、使用を義務付けている店もある。レジのスタッフは「国民のために第一線で戦う仕事」とされ、政府から1,000ユーロ(約12万円)のボーナスが支給されることに。

パン屋はケースの前に障害物を置いて安全な距離を確保し、レジ周辺はビニールをかけてプロテクション。店内に入れるのは2人までだ。外には安全な距離を保ちつつ並ぶ、お客さんの姿がある。

必要最低限の店として、食品店、薬局、銀行、郵便局、タバコ屋などは営業が許されています。これ以外の職業でテレワークが可能な人は、エロディさんのように自宅で仕事を続けています。

テレワークが不可能な人、例えば、飲食店経営者には、1店舗につき一律1,500ユーロ(約18万円)の補助があり、社会保障費(税金)や家賃、光熱費の支払いは先送りが可能に。ローン返済も6ヵ月先になり、借り入れが必要な場合は簡単な手続きだけでできることも、早い段階で明らかにされました。従業員に対しては、一時失業給付金(80〜100パーセント)が支給されます。

フランス政府がこれらの補償を行うのは、マクロン大統領が公言したとおり「外出制限が明けたその時に、すぐに経済活動を再スタートするため」。雇用を確保し、商店や企業を倒産から守っておかなければ、それも叶いません。「すべてのフランス国民を守ります。誰1人として見捨てません」と、まっすぐこちらを見て語った大統領の言葉には、強い力が込められていました。

安全距離を確保しながら、外で待つ人々。店内に入れる人数は2人まで。店の面積によって、入店できる人数が決められている。タバコ屋は新聞や雑誌、収入印紙等の販売も行うため、必要最低限として営業が認められている。

マスクと手袋を着用して接客するワイン店の店主。フランスメディアの調査によると、外出制限以降働けなくなった人は45パーセントに上るという。

会社の方針に従って、半ば無理矢理テレワークに切り替えた人もいます。「The Kooples」のモデリスト(パタンナー)の内田達也さんです。

「ちょうどPCで対応できる工程にあったのは幸いでした。でもこれが終了した後は、サンプルがないとどうにもなりませんし、フィッティングも必要です。バイク便を使って他のスタッフと連携しながら、進めることになるかもしれません」

アトリエで行っている作業をテレワークで継続することは、簡単ではありません。とはいえ、目の前の仕事の先にも、まだ新しい仕事が待ち構えているとのこと。6月のメンズファッションウィークが中止された影響は現在のところなく、内田さんの仕事が減る見通しもないそうです。

「会社の上層部は先行きの不安を感じているかもしれませんし、ぼくも会社の体力を考えることはあります。でも、ぼくたちのようなクリエイターは、常に1年先の仕事に当たっているのです。立ち止まっている暇はありません」

不便なテレワークではあっても、工夫をしながら現状に対応している様子からは、活発な意欲が伝わってきました。

花屋は必要最低限とはされず、営業が続けられなくなった。そこでこの店はオーガニック野菜を扱う八百屋に転身! 今では人気店になっている。

家にいる時間が長い分、料理やお菓子づくりに精を出す人が多くなった。SNSでのレシピ交換が流行中。

感染者が津波となって一気に病院に押し寄せる事態を回避する。感染者の数を低く抑えて、病院での治療が可能な状況を保つ。これが外出制限をする目的です。しかし4月12日現在、フランスの犠牲者は14,393人。外出制限をもってしても、新型コロナウイルスの被害はこれほどまでに膨らみました。医療現場は早い時点から緊迫状態にあり、3月16日の演説時点でマクロン大統領が野戦病院設置を約束したほどです。検査キットの不足、医師・看護師の不足、人工呼吸器の不足も、他国同様に起きています。これが新型コロナウイルスをめぐる、フランスの現実です。

同時に、政府が明確な対策をとって必要な説明を十分に行い、外出制限の厳しい規制の中にあっても国民は活動を続けている。これもまた、フランスの現実です。今のところマスク以外のものは、普段と変わらず手に入ります。外出できる範囲は自宅から1キロメートル以内、ジョギングも同じ範囲で1日1時間、10時〜19時以外の時間帯のみ許されています。

この外出制限は、ひとまず5月11日をもって終了します。4月13日20時からのテレビ演説で、マクロン大統領が期間を明らかにしました。トータル8週間に及ぶこの外出制限は、その後段階を追って解除される見通しです。第一段階として、学校、工場、商業施設などが再開し、レストランやホテル、映画館、イベントなどは、次の段階を待ちます。それまでの期間の変わらぬ補償を約束しつつ、解除後の検査の拡大、マスクの配布、アプリを使った感染追跡などを盛り込んだ演説でした。「長い戦いを戦わなくてはなりません」とし、状況を追ってもう一度外出制限に入りうることにも触れながら。

新型コロナウイルスを体験した後のフランスが、新しい価値観を生み出し、よりよい社会を目指すというマクロン大統領が掲げた方針は、多くのフランス人の思いを反映しています。それを実現するために、人々は今、厳しい規制を守りながら外出制限を生きています。

Photo & Text_Keiko Sumino-Leblanc

keiko’s paris journal

keikoparis.exblog.jp
ロックダウンの状況下、変わり続けるパリの様子を角野さんが自身のブログで紹介。47歳のジャーナリスト、92歳のワイン評論家、34歳のレストラン店主…さまざまな人たちへの電話取材を通じて、この緊急事態をどのように感じ、毎日生活しているのか詳しくリポートしています。

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