“A Magazine” の最新号はルーシー＆ルーク・メイヤーが丸々一冊キュレーション。

A MAGAZINE CURATED BY LUCIE AND LUKE MEIER ¥3,000+TAX

いま、ファッション誌に求められるものは何でしょうか。情報のスピードばかり重視される時代の中で、ビジュアル、テキスト、レイアウト、これらが三位一体になった時のインパクトたるや、まだまだ雑誌はウェブより説得力や価値があるように思います。だからこそ時間に縛られず、誌面を追求し、よりニッチな方向にシフトする。それもまたあり方のひとつとして正解なのかもしれません。

その究極の存在といえば『A Magazine』でしょう。この名前を聞いて懐かしく思う方もいるかもしれませんが、改めてご説明すると、毎号名だたるファッションデザイナーを召喚し、彼らが丸々一冊手がけるという斬新なコンセプトで愛されてきました。特にいま、初期につくられたメゾンマルタンマルジェラ、山本耀司、高橋盾といった号はファン垂涎のコレクターアイテムです。

Leon Dame photographed wearing Jil Sander by Olivier Kervern, Paris, 2020

Rachel Marx photographed wearing Jil Sander by Olivier Kervern, Paris, 2020

Mos Def wears Jil Sander, photography by Julia Hetta, Barcelona, 2020

Kelsey Lu in Jil Sander photographed by Richard Bush, Paris 2020

最新となる第21号ではルーシー＆ルーク・メイヤーがキュレーション。全240ページに及ぶこの一冊は、写真、絵画、イラスト、インタビュー、ポエトリー、エッセイなどの寄稿で細かく構成されています。中でもフランス人写真家オリヴィエ・ケルヴェルヌが撮影した〈ジルサンダー〉と〈OAMC〉のビジュアルに加え、注目のスウェーデン人写真家ジュアリ・ヘッタがラッパーのモス・デフことヤシーン・ベイを、ロンドンをベースに活躍する写真家リチャード・ブッシュがチェリストのケルシー・ルーを撮影したポートレートは見所のひとつ。さらに、メイヤー夫妻の兄弟、姉妹、親戚、友人が関わっているところも特徴で、今号のテーマである「HUMAN NATURE / MOTHER NATURE」を巧みに表現しています。

表紙は能登で三代続く製紙会社によって手づくりされた押し花の和紙を3Dスキャンで再現するというこだわりよう。背の部分の糸綴じをそのまま露出させた斬新なデザインは服にも通じるインダストリアルな雰囲気が漂います。

いまファッション界で最も注目されているといっても過言ではない、メイヤー夫妻のクリエーションの源泉、アイデンティティを窺い知れる唯一無二の一冊に仕上がりました。6月上旬から東京・表参道をはじめとする〈ジルサンダー〉のストアで発売です。