ストリートカジュアルの流れが続くファッションの世界。そんなシーンとはつかず離れず、常に自分たちのスタンスを貫くメゾンといえば〈エルメス(Hermès)〉です。
改めて、その魅力を考えてみると、キーとなるのは時代を超えて愛される普遍的なデザインではないでしょうか。これは良くあるベーシックではなく、メゾンの伝統を基にしたクリエーション。「カレ」と呼ばれるスカーフ然り、ブレスレットの「シェーヌ・ダンクル」然り、そこには10年後も20年後も使いたくなる飾らない美しさがあります。いつまでも身に着けるひとにそっと寄り添う特別な存在というか。一通り、ファッションを楽しんできた大人たちの行き着く先が〈エルメス〉なのかもしれません。
ここで紹介するのは8月8日にリニューアルした丸の内店です。
〈エルメス〉というとまず銀座店が頭に浮かびますが、実は丸の内店が日本の一号店。1979年にオープンし、2004年この場所に移転しました。
そんな由緒ある店舗が生まれ変わるにあたり、フォーカスしたのは日本の伝統です。
自然光が差し込む店内は2フロアの構成。まずエントランスで目に飛び込むのが、床を覆うモザイク画。〈エルメス〉の主要な旗艦店のひとつ、パリのフォーブル・サントノーレ店のような “エクスリブリス” モチーフが訪れたひとを出迎えます。1階は「カレ」やネクタイ、バッグといったアクセサリー、ホームコレクションなどをラインナップ。店内の左奥、宝飾品のスペースの壁には「西陣織」が贅沢に使われています。
また、1階から2階へと続く階段の壁は左官職人が担当。禅寺の庭園を彷彿をさせる波の模様は芸術的な仕上がりです。
2階はメンズ&ウィメンズの服やシューズが並ぶフロア。中央に備えられた、手すきの和紙を使った仕切りは可動式で、空間のレイアウトを変えることもできるそう。さらによく見ると床には竹が使われ、温かみのある店内の雰囲気を引き立てています。
1階と2階にはゆっくり買い物ができるようサロンスペースを完備。苔や木、石壁などから着想を得たというラグの上に、レザーのソファーと信楽焼の天板を使ったテーブルが置かれています。
日本の伝統美を取り入れるという大胆な空間デザインを担当したのはパリの「RDAI」。数々の〈エルメス〉の店舗を手掛けてきた建築設計事務所です。
近年、名だたるブランドが出店し、盛り上がりを見せる丸の内仲通り。〈エルメス〉の路面店も特別な空間に生まれ変わりました。この店を訪ねると、日本に対する40年越しの想いが良く伝わってきます。
Photo_©Nacása & Partners