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アートとドキュメンタリーの狭間を捉える写真家・石塚元太良の個展。両極端な場所で撮った美しきもの。

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PIPELINE AUSTRALIA 2015

グーグルのストリートビューや画像検索、VRなど、行かずとも、その場所へ行ったかのような近似体験を得ることは難しいことではなくなった現在。しかし技術がどれだけ発達しようとも、その場所に己の肉体を運び、シャッターを押すのがフォトグラファーという生き物なのかもしれない。

写真家・石塚元太良もそのひとりで、パイプライン、氷河、ゴールドラッシュなどのオリジナルモチーフを軸に、世界を旅しながら独自のランドスケープを撮り続けています。

02_PIPELINE AUSTRALIA 2015

PIPELINE AUSTRALIA 2015

03_PIPELINE AUSTRIA 2016

PIPELINE AUSTRIA 2016

04_PIPELINE ICELAND 2011

PIPELINE ICELAND 2011

写真家・上田義彦がキュレーターとなり、600平米のスペースを十分に活用した豊かな写真体験を提供する「ギャラリー916」では、石塚元太良の個展が行われます。

原点となった、アラスカを縦断する全長1,280kmの石油輸送パイプラインを追いかけたパイプラインプロジェクトをメインに、初期から今年オーストリアで撮影した新作まで30点余りの大判プリントを展覧します。

05_PIPELINE ALASKA 2011

PIPELINE ALASKA 2011

06_PIPELINE ALASKA 2011

PIPELINE ALASKA 2011

また、併設のスペース「Gallery 916 small」では、ダイナミックなランドスケープとは対照的に身近なモノに目を向け、ネガとポジを同一のプリント上に表出させることで表裏一体となっている世界を可視化することを試みた、最新作シリーズ「N/P」を披露します。

P 2016

N/P 2016

下記は石塚さんのステートメントです。

「パイプラインのあるランドスケープを撮影し始めたのは、アラスカの北極圏でのことだった。石油輸送の為のパイプラインが、1,280kmにもわたり大陸を貫通している様に驚き、同じようなランドスケープが、世界中にあることに気がついた。アラスカからアイスランドに、オーストラリアに、オーストリア。今ではそんな風景のドキュメントは、都合4カ国に及んでいる。

 大自然の中にまっすぐにのびる写真の中のパイプラインは、どこか真っ白な紙にひかれた一本の鉛筆の線を思わせる。展覧会タイトルの『Demarcation』はそんなところから付けることにした。辞書的な意味は「分界、境界」というものであるが、何もないところに何かを置くことで生まれるエリアや、差異のことである。また、小さな箱のようなスペースと大きく広がる回廊のようなスペースとで成り立つ、『Gallery 916』の空間では、大きく広がるスペースに世界中のパイプラインの写真を、小さな暗室のようなスペースで、新作 『N/P』を展示したいと考えた。

 この作品は逆に一歩も家から出ることなく、モノの影を反転した画像でだすように、ネガとポジを同一のプリント上に顕在化させたものである。デジタル化が進む写真の世界で、約170年にわたり培ってきたネガポジ反転法という写真術は、とても大切なものであるように思えてならない。そんなことを念頭において制作を始めたものである」

P 2016

N/P 2016

辺境地へと自ら出向いて撮影し続けてきた美しい風景を、静かで贅沢な空間「916」で観られる、貴重な機会です。どの空間でどのように写真と対峙するのか、その瞬間の重要性をわかっているひとにはぜひ足を運んでほしい企画です。

そして、場所を移動し続けてきた石塚さんが、家にこもって何をどのように撮影したのか。ひょっとしたら、石塚さんのキャリアのターニングポイントになるのかもしれません。

Text_Shinri Kobayashi


石塚元太良写真展『Demarcation』

期間:〜3月26日(日)
住所:東京都港区海岸1-14-24 鈴江第3ビル 6F
時間:平日11:00〜20:00/土日・祝日11:00〜18:30
休廊:月曜日(祝日を除く)
入場料:一般 800円、大学生/シニア 500円、高校生 300円、中学生以下無料 *半券をお持ちの方には割引あり。
電話:03-5403-9161

©Gentaro Ishizuka

石塚 元太良(いしづか げんたろう)
写真家。1977年東京生まれ。8×10などの大型フィルムカメラを用いながら、ドキュメンタリーとアートの間を横断するように、時事的なテーマに対して独自のイメージを提起している。近年は氷河、パイプライン、ゴールドラッシュなどをモチーフにアラスカやアイスランドなど主に極地方で独自のランドスケープを撮影。2004年日本写真協会賞新人賞受賞。2011年文化庁在外芸術家派遣員。初期集大成ともいえる写真集 『PIPELINE ICELAND/ALASKA」(講談社刊)で2014年、東川写真新人作家賞受賞。また2016年、Steidl Book Award Japanでグランプリを受賞して、ドイツのSTEIDL社より新作の『GOLD RUSH ALASKA』を2017年秋に出版予定。
http://nomephoto.net

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