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【FOCUS IT.】プレイグラウンドが掲げるスニーカーのニュースタンダード。色褪せることのない一足との出合いはここにあります。

リリース日にはストリートに長蛇の列を生み出し、ときにはサーバーダウンすらも引き起こす。もはや一過性のブームを超え、ひとつのカルチャーとして成熟しているといっても過言ではないスニーカー。そんなレア度至上主義の文化を尻目に、いち早くダンクを掘り下げ、名作の影でひっそりと存在していた2000年代以降のスニーカーに目を向けたのが代々木公園のスニーカーショップ「プレイグラウンド(PLAYGROUND)」です。

スニーカーブランド〈pg〉のデザイナーであり、オーナーの草賀雄介さんとディレクションを務める松本龍彦さんの話に耳を傾ければ、希少価値やヴィンテージだけでは語ることのできない、スニーカーの新たな価値観がわかるはずです。

PROFILE

草賀雄介

シューズブランド〈pg〉とバッグブランド〈キルナ〉のデザイナー。2018年からは代々木公園にある自身のオフィスにオープンさせたプライベートショップ「プレイグラウンド」のオーナーも務める。スニーカーに対する豊富な知識のもと、2000年代の〈ナイキ〉や〈アディダス〉を中心にセレクトしている。

PROFILE

松本龍彦

ショップスタッフ、デザインプロダクション、アパレルのグラフィックデザイナーを経て2006年にデザインスタジオ「ワヴデザイン」を設立。現在は衣食住を中心にとしたクライアントのウェブサイトやロゴデザイン、プロモーションなどを手掛ける。

左から、草賀さんと松本さん。2人は「プレイグラウンド」のキーマンであり、良きビジネスパートナーでもある。

フリーロックが呼び起こすスニーカーの価値。

ー草賀さんは〈pg〉の前に、同じくスニーカーブランドの〈ターミガン〉も手掛けられてましたよね?〈pg〉とはどんな違いがあるんでしょうか?

草賀:〈ターミガン〉はファクトリーブランドで、ぼくは企画と営業をやらせてもらっていました。国内生産にこだわっていたのでコストもどんどん高くなってしまって、ほとんどが3万円前後。もはやスニーカーの価格ではないなっていうジレンマをずっと抱えていて。それを改善するために〈pg〉では中国の工場にお願いしているのでスニーカーらしい価格帯で提供できているんです。

ースニーカーを選ぶうえでプライスは重要な要素ですもんね。ブランドコンセプトも〈ターミガン〉と違ってるんですか?

松本:コンセプトは3つあります。まずはパフォーマンス性。例えば、雨の日に靴紐が解けたから結ぶのって面倒じゃないですか。その問題をなくすため、シューレースに代わってフリーロックシステムを採用しています。そうすることで街を気持ちよく歩ける。これって、大きなストレスからの解放だと思うんです。

2つ目は合理的なデザイン。表現するだけのデザインはぼくたちのやりたいことではないんです。結局、軽くするためだったり耐久性を持たせるためだったり、理由があるデザインじゃないとプロダクトは長く残っていけないと思ってます。

そして3つ目が、さっき草賀さんも言っていたカジュアルなプライスです。いろんな人に履いてもらって、その姿を見るのはやっぱり嬉しい。学生にも気軽に手にとってもらえるように、企画を立てるときもまずは値段の話からしますね。

草賀:高くて一部の人しか買えないというより、価格を抑えてもっと多くの人に使ってもらいたい。フリーロックって、おばあちゃんとか紐を結べないような小さい子にとってもすごく便利なシステムだと思うんですよ。

〈pg〉の代表モデル「コントラスト」。
クラシックなデザインとハイテクなスペック、まさに“コントラストの効いた組み合わせがユニーク。

ー脱ぎ履きにも便利ですしね。まさに先ほどおっしゃっていた理由があるデザインですね。

草賀:そうですね。でもハイテクな機能って、デザインが盛りだくさんのシューズに搭載されていることが多いんですよ。〈プーマ〉のディスクブレイズなんて、何年も前からやってますよね。カッコよくて好きなんですが、ぼくは昔から普通のシューズにこういうのが付いてたらいいのになって思ってて。〈pg〉の「コンストラスト」ではオーセンティックなデザインにフリーロックを組み合わせるようにしています。

ーここでは、お客さんが持ってきたシューズをフリーロックにカスタマイズするサービスをやっていますよね。

草賀:最初はエア フォース 1だけだったんですけど、ほかのスニーカーもカスタマイズしてほしいっていうお客さんが増えてきて。もともとは工場に依頼していましたが、細かいニーズに答えられるよう、いまではぼくがミシンを走らせています。スニーカー好きって定番モデルを何足も持ってたりするじゃないですか。そういう眠ったままのスニーカーをアレンジしてみようって方も結構多いです。

ヴィンテージだけでなく、近年代のスニーカーにも日の目を。

ーオープン当初はシューズだけでなく、ウェアや日用品も取り扱っていたんですよね。スニーカーに絞ろうと思ったのは、どうしてなんですか?

松本:ブランディングって広げるものではなく、狭めていくものなんです。始めのうち手広くやりながら、一番の強みを探さないといけない。「プレイグラウンド」ではそれがスニーカーだったんです。お客さんからの反響も大きかったですし、なにより草賀さんのスニーカーに対する知見がものすごい豊富で。それでスニーカー一本に絞るっていうタイミングで、まずは草賀さんの好きなダンクを売り始めたんです。

草賀:そうだったね。なくなっては仕入れて、またなくなっては仕入れてを繰り返して、常にダンクを置いてた気がします。常連さんだと、「プレイグラウンド」=ダンクってイメージを持ってる人も多くて、ダンクマニアには少し名が通ってきた気がします。

ーどうしてダンクに惹かれたんですか?

草賀:渋カジ、アメカジ世代だったので、ダンクとかジョーダン 1は高嶺の花のような存在でした。それを履いて街を闊歩して、似たような格好のやつらとすれ違うとお互いにジロジロ見合って、俺の勝ちだって思い込んで(笑)。

松本:俺の方がレアなやつ履いてるぞみたいな(笑)。

草賀:そうそう。そのときからダンクはかっこいい靴だと思ってて。あと、〈ナイキ〉のなかでも、同じモデルであんなにカラーが多かったのってダンクが最初だったんですよ。それぞれがバスケットボールリーグのチームカラーで。なんだろ、ダンクってひとつひとつにストーリーがあって、接客中にそれを説明すると、お客さんも興味を持ってくれるのが嬉しかったりもしますね。

ーダンクのほかにも、ジョーダンやワッフルレーサー、〈アディダス〉のゴンザレスなんかも置いてますよね。このラインナップは、お二人の趣味嗜好が反映されたスニーカーなんですか?

松本:好きなものだけ集めると趣味の店になるじゃないですか? でもここでは、新しいスニーカーの価値みたいなものを提案したいんです。ヴィンテージのスニーカーって、希少価値でしか評価されていない印象があって。でも、古着の世界ではそれが変わってきています。アメリカ古着だけだったのが、レギュラー古着も注目されるようになってきて、それによってファッションの楽しみ方も広がってきている。スニーカーも同じように、2000年代とか10年前のモノにもあまり知られていないかっこいいシューズがゴロゴロとあるんですよ。

草賀:ほんとそうだね、だけど、いまのスニーカー市場って、どちらかというと手に入りにくい、みたいなところで盛り上がってますよね。そういうハイプなジャンルはもういいかなって人が、うちにはよく来るんです。スニーカーは言ってしまえば運動靴じゃないですか。だから履いてなんぼだと思うし、街を歩いて、その瞬間を楽しむべきなんじゃないかな。

松本:我々はスニーカー好きに向かって、昔こんなにいいのありましたよねっていうのを勝手に説いてるわけですよ。いまの20代がこんなの履いてたら思わず唸っちゃうな、みたいな。

ーぼくも20代なのですが、ここのラインナップはすごい新鮮に感じられます。改めてひとつひとつのスニーカーを見てみると、いまのストリートファッションにも合いそうです。

草賀:そうですよね。でも、若い世代にもすごい子がたまにいて。ぼくも知らないモデル名とかをインスタで聞くと毎回教えてくれる人がいるんですよ。その人が店に来たら、めちゃくちゃ見た目が若くて。年齢を聞いたら22歳とかで(笑)。会うまではてっきりぼくと同年代くらいだろうと思ってたんで、かなり驚きましたね。捨てたもんじゃないなって。

ー最後になってしまいましたが、オープンから2年半。このタイミングでリニューアルした理由を教えてください。

松本:スニーカーという、やりたいことの方向性が定まったからですね。〈pg〉にコンセプトが3つあるように、「プレイグラウンド」にも3つのテーマがあります。ひとつ目はリユース。近年代の〈ナイキ〉や〈アディダス〉を売ることって、昔あったものを買ってもらうことですよね。色褪せない1足を提案しつつも、これを社会貢献の一貫だと思っていて、ものが溢れている世に対してのアンチテーゼを投げかけているつもりなんです。

2つ目がアップサイクル。まだ履けるスニーカーにフリーロックを装着することで付加価値をもたらしています。いま色々なブランドがリサイクルを熱心にやっていますが、そういう活動に近い意識を持っています。

そして、リユースとアップサイクルをふまえて行なっているのが3番目のデベロップメント。世の中にまだないスニーカーを、〈pg〉を通じて表現しているつもりなんです。そこでスニーカーショップとして、コンセプトが引き立つ内装や什器にアレンジしたかったんです。

ーこれだけシューズが並べられると、通りすがりに入りたくなります。リニューアルを記念して〈イズネス〉との別注アイテムもリリースされるんですよね。

草賀:シューズはフィドロックっていうドイツのマグネットパーツに、〈イズネス〉さんのアイコンをあしらいました。オールブラックもインラインにはないカラーです。Tシャツは、ボディをひっくり返した〈イズネス〉さんの定番仕様です。バックにはインスタでアップしていたシューズをプリントしています。

PG × is-ness 限定スニーカー ¥18,000+TAX

フィドロックのパーツにあしらわれた〈イズネス〉のアイコンが、オールブラックのボディに彩りを添える。

松本:普遍的なモノが好きで、Tシャツにするなら絶対フォトTだと思ったんです。インスタのためだけに撮った写真をプリントするのが面白そうだなと。デジタルなものがアナログに生まれ変わるって珍しいじゃないですか。違うスニーカーの写真に変えたら第二弾もつくれそうですし。

PLAYGROUND × is-ness 限定Tシャツ ¥6,800+TAX

訪れる人に特別な一足を。

ースニーカーはもはや一過性のものではなく、カルチャーやワードローブのスタンダードになったような気がしています。今後スニーカー市場はどう発展していくと思いますか?

松本:新品を買うことより、国を跨いだ世界市場が大きくなるような気がしています。「GOAT」っていうスニーカーアプリ知ってますか? 世界中の人とスニーカーの売買ができるサービスなんですけど、会員の国籍は170カ国に及び、アメリカやヨーロッパ、アジアにシッピング用の倉庫まであるんです。だから、循環する市場は広がっていくけど、ブランド競争は激化していくイメージです。

ーファッションのなかのスニーカーから、ファッションとスニーカーというジャンルに細分化されてきてますよね。その状況下で「プレイグラウンド」は先ほど挙がった3つのコンセプトを武器に、スニーカーの新しい価値観を発信していくというわけですね。

松本:これからの世の中は、やる行為そのものが社会活動の一環になっていないと支持されないし必要とされない。でも、身体に良くても美味しくなければ食べないように、スニーカーのセレクトがカッコ悪かったら買わないですよね。だから我々はあくまでもかっこいいもの売りたい。それをお客さんに買ってもらうことが社会活動にも繋がるし、昔のものの価値にまで気づいてもらえたら嬉しいですね。

草賀:松本さんも言ってましたが、かっこいいっていうのが根底にあるんです。高値が付いているスニーカーをかっこいいって思う人もいるけど、ぼくらが目指しているのはそこじゃない。これを履いてこうしたいとか、お客さんにとっての特別な一足を提案したいんです。それを履いていろんな場所に出かけて、いろんな人に「それいつの?」って言われるような体験をたくさんしてほしい。スニーカーってやっぱり楽しいものだから。その高揚感を素直に伝えられたらいいなと思っています。

Photo_Tatsuya Michishita

INFORMATION

PLAYGROUND

住所:東京都渋谷区富ケ谷1-8-7 司ビル1F
電話:03-5738-1872
時間:11:00〜19:00 ※平日のみの営業
Instagram:@playgroundstore.jp
PLAYGROUND オフィシャルサイト

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