これまでの生活が一変してもうすぐ1年。苦境に立たされる企業もあとをたたない一方で、新しい生活様式のためのサービスやものがたくさん誕生しています。
今回紹介する「Tonkatsu ARI(トンカツ アリ)」もまた、コロナ禍にスタートしたフードトラック。
フードトラックと聞くと目新しさはないけれど、そこで腕を振るうのはミシュランのビブグルマン獲得店で腕を磨いたシェフ。提供するのは“ラグジュアリー”なトンカツです。
そのトンカツは、ソースじゃなく泡で食べる。
フードトラックの多くは、焼くだけとか、温めなおすとかがほとんど。けれど「Tonkatsu ARI」はシェフが専用車で注文先まで出向きその場で調理。そして揚げたてのとんかつを“エスプーマ”の泡ソースで提供します。
エスプーマというのはフランス料理で多く使われる技法で、ソースにしたい食材を特殊な装置に入れ、ガスを含ませて泡化させるもの。泡にすることで、ソースと料理の一体感が深まるわけです。
珍しい技法を使うとき、それを隠れ蓑にして実際の料理が疎かになっている、なんてこともよくある話。けれど「ARI」のとんかつは、泡ソースをつけなくても十分美味。店主のアリさんおすすめの食べ方は「最初は何もつけず、次は岩塩をつけて、最後に泡ソースで。そのあとはお好きにどうぞ」。
この日食べたのはラグロース(ロース肉のトンカツ)、ラグヒレ(ヒレカツ)、そして黒カツサンドの3種類。
写真を見てわかる通り、トンカツがとにかく分厚いです。断面はうっすらピンク色で食感はふわふわ。
ここまで分厚いと火入れが難しいものですが、油の温度管理を徹底し、低音でじっくり揚げて、余熱での火の入り方も考えて、食べるタイミングで肉を最高の状態に仕上げていく。。。東京にもとんかつの名店は多々ありますが、それらの店とまったく遜色なし。フードトラックとは名ばかりで、その味は正真正銘、ビブグルマン級。
あと、普通のトンカツは衣がもっと黒い。なぜ「ARI」のトンカツが白っぽいのかというと、糖分のないパン粉を付けているから。「糖分のあるパン粉は揚げるとすぐに焦げてしまうんです。なので、うちは無糖のパン粉を使ってます。無糖のほうがヘルシーですしね」(アリさん)。
カツサンドのパンは竹炭を練り込み、天然酵母でつくられた特注品。炭もまた、体内の毒素を吸着し排出してくれます。パン粉同様、健康面もケアしています。
で、どこで食べられるか。一般的なフードトラックは決まった場所で営業していますが、「Tonkatsu ARI」は家に呼べます。東京23区内であればどこへでも。グランドメニューを2つ以上注文する場合は出張料なし。料理代金だけでOKなのです。お隣さんと一緒に呼ぶとかもOKです。
「飲食店はお店に行く時代からお店が来る時代に」というのが「ARI」が掲げるテーマのひとつです。たしかに、ここまでおいしくて出張してくれるなら、レストランへ行くのもしばらくは我慢できるかも。
緊急事態宣言も延長されて、今年もコロナとの共存は続きそうです。けれど、おいしいものを食べたい欲求は突然やってくる。そんなときは「Tonkatsu ARI」を自宅に呼んで「ラグトン(ラフジュアリートンカツの略。商標も取得済)」に舌鼓を打つのもいいでしょう。コロナが収まったあとはパーティのケータリングなんかにも。