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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.12 あの頃、“ハイブランドなのにストリート”だったエルメス。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

第12回目も新たに加わったニューフェイス。「ダンジル(danjil)」のコージさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


コージ / danjil 店長
Vol.12_エルメスのターボ

―コージさんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

自分の解釈としては“ステップアップできるモノ”なのかなと。そもそも古着の面白みに、自由度の高さがあるとぼくは思っています。これまでのヴィンテージとカテゴライズされる古着の楽しみ方って、みんなが同じモノを探し求めていたじゃないですか。それとはまた違って、自分の趣味嗜好が反映されやすいというか、外野の意見は無視できちゃうモノっていう感覚。レアかどうかという、邪念とも言い換えられる既存の価値観とは違うセレクト基準の上でこそ、成り立つモノなのかなって思っています。

―なるほど。それで言えば、「ダンジル」でセレクトされているような、ストリートカルチャーに直結しているアイテムのセレクト基準は、完全に人それぞれでしょうね。

ですね。ウチの場合なんかも、昔は結構コアな感じのお客さんが多かったんですが、最近では結構ライトのお客さんも増えていますし「見た目がなんとなく気に入った」とかで、全然良いと思います。もちろん、その背景にあるカルチャーを知ればなお楽しめるので、興味を持ってもらいたいけど、あまり押し付けがましくなるのはイヤなんですよね。あくまで自然に、セレクトしたアイテムに紐付く形で、音楽などのカルチャーが連想ゲームのように繋がっていく。そうやって、ステップアップしていく過程を楽しんでもらいたいので。

―で、そんなコージさんに紹介してもらうのが、なんと〈エルメス(HERMES)〉の「ターボ」! ハイブランドとニュー・ヴィンテージって、繋がりづらいように感じられるのですが…。

エルメスのターボ 各¥45,000+TAX(ダンジル)

そもそもモノ自体が良いので、最近の“長く愛用できる良いモノを選ぶ”という風潮にもマッチしていますし、それって“ステップアップできるモノ”という条件にも当てはまりますよね。最近の復刻モノのスニーカーって、オリジナルモデルから素材が変わっていたりして、せっかく手に入れたのに、長く履くことができなかったりもするじゃないですか。もちろん、いつかは壊れちゃうので、遅かれ早かれではありますが…それも〈エルメス〉の手に掛かれば、加水分解もせず壊れず型崩れもせず、こうして時間を経ても楽しむことができる。まぁ、一般的な古着の感覚でいうと、ちょっと高くはありますが(笑)。それでも、定価の1/3以下と考えれば安いもんですよ。後ほど話しますが、ストリート的な背景があるのもウチらしいですし。

―たしかに視点をズラして、隙間を狙っていくという点では、間違いなくニュー・ヴィンテージの定義に当てはまりるアイテムといえます。ちなみに世の中的に、見つかりやすいアイテムなんですか?

正直、見つけづらくはありますね。アメリカのスリフトを回ったりして、買い付けようにもおいそれと見つかるようなアイテムではないですし。「ターボ」に照準を定めて集めているコレクターっていうのも、あまり聞かないし(笑)。ウチだけでプッシュしてもモノが出てこないので、他のお店でもちょっと注目してもらえると、もっと買いやすく、見つかりやすくなるのかなって。とは言っても、見つからないから楽しいっていうのもあったりで(笑)。沢山あるレギュラーの中から、自分だけのスペシャルを見つけ出す。四葉のクローバーみたいなもんですよね、ニュー・ヴィンテージって。

―コージさんは、どこでこのターボを知ったんですか?

そこはやっぱり、藤原ヒロシさんの影響。いまでは普通ですが、ハイブランドのアイテムをストリートに落とし込むという感覚が、当時はすごく新鮮で。ぼくもすごく欲しかったんですが、買おうにもメンズサイズがまず売っておらずで…(泣)。

―その後、ここから着想を得たであろうシューズも、色々と出ていましたよね。

結構サンプリングされていますよね。〈ヴィズビム(visvim)〉もそうですし、最近では〈エスエスジー(SSZ)〉と〈グラビス(GRAVIS)〉もコラボしてよく似たモデルをリリースしていました。個人的に、当時まったく買えず悔しい思いをしたクチなので、「コレをつくった人も同じ経験をしたんだろうな〜」なんて親近感を覚えたりして(笑)

エルメスのターボ ¥45,000+TAX(ダンジル)

―アイテムとしてはどこが見どころなんでしょうか。

デザイン的には非常にシンプルで、アッパーのボリュームが絶妙。何より、よく見たら〈エルメス〉っていうさりげなさ。素材自体にも上質な革を使っているため、アッパーにシワが入りづらいので、賞味期限という意味では相当長いんじゃないかなと思っています。それに素材やカラーバリエーションも結構あって、アッパー素材はスムースレザーとスエード。どちらかといえば後者の方が出にくいですね。で、カラバリがまた多いこと(笑)。もしかしたら顧客用のスペシャルオーダー品なんかもあったかもしれませんね。当時の定価は、約15万円位だったかな。まぁ、〈エルメス〉のアイテムで考えると、当たり前の値段なんでしょうけど(笑)

―いまこれを履くとしたら、どんな着こなし方が面白いですかね?

ハイブランドのシューズって存在感がすごく強いけど、藤原ヒロシさんの、あのラフな履きこなし方を見習いつつ、気負わずにショーツに〈クラークス(Clarks)〉のワラビーを合わせるノリで履いてもらえるといいんじゃないでしょうか。最近の若い子なんて、ルールに囚われない着こなし方をするから、こっちも見ていても面白いし、せっかくなら自由に楽しんでもらいたいなって。あの頃のままじゃ、新しい何かは生まれてこないと思いますので。

コージ / danjil 店長
2003年、東京・西南エリアにおける古着のメッカとして知られていた町田に、80s〜90sのアメリカンカルチャーにまつわるアイテムをラインアップする古着屋「danjil」をオープン。店内には、ストリートカルチャーやアメリカンスポーツにまつわるアイテムがところ狭しと並び、訪れる“好き者”たちを悶絶させる。どうやら新進気鋭のブランド〈コットンパン(COTTON PAN)〉とも、関わりがあるとかないとか…。
インスタグラム:@danjil2

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