コロナ禍によって浮き彫りになった、本当に必要なものとそうでないもの。前者でなければこれからの時代は生き残ってはいけません。
今回ご紹介する〈山内〉というブランド、とにかく精魂込めて懇切丁寧にものづくりをしています。寡聞にして〈山内〉のことを知らなかったのですが、先日編集部に届いた一通のメールにより、その存在を認識するに至りました。
サイトを見ても、とにかく本気だな、というのが伝わるエモーショナルなしつらえなのです。
この度2021SSコレクションが発表になったのですが、なかでも気になったアイテムをピックアップしてみます。
バイオ加工でソフトな風合いにした後、最後に膨らみを持たすタンブラー加工を施した、高密度ストレッチコットンを使用したコートです。
もともと高密度なコットン素材を塩縮加工しさらに密度が増し、撥水コーティングすることにより防風効果も備わった一張羅です。
さらに有松絞りの一種でランダムで独特な柄が特徴であるハコムラ絞りを施しています。
〈山内〉の特徴のひとつである丁寧な縫製技術が際立っており、ディテールの多いミリタリーテイストのコートは〈山内〉のなかでもアイコニックなアイテムとなっています。
ノーミュールシングウール(羊への虫の寄生を防ぐために、子羊の臀部の皮膚と肉を切り取る“ミュールシング”をしていない羊である証明書付きの毛から織り上げた毛織り物)のSP140’Sで、平織り限界密度に挑んだ生地で作られたテーラードジャケットです。
尾州の長い歴史を持つ老舗機屋さんの低速シャトル織機で限界密度まで高めた生地は、天然の撥水性を備えています。また、パンパンに織りあがった生地は、一見するとナイロン素材と間違うほど、一般的な毛織り物とは全く異なります。
〈山内〉のジャケットは肩パットを使わず、肩周りの表情を主張せず、その中に男らしさを表現するために仕立ては 毎シーズン微調整を繰り返しているそう。
シルエットはあくまでシンプルに、ラペル幅も程よく、どのようなシュチュエーションでも着用可能な一着です。この素材には思い入れがあるようで、今後も様々なアップデートを考えているようです。
フランス産のリネンを国内の工場で編み上げたニット。これにもこだわりが満載です。自然な艶、肌触りをそのままにするため、生地を安定させるためのシルケット加工をしておらず、そのため生地自体が安定せず縮みや伸びが起こります。
そこで、塩縮加工により生地を強制的に縮め、独特なシワ感とガシガシとした質感が男らしく、シルケットなしのリネンニットの素朴な風合いはそのまま残した全く新しい素材となっています。
襟ぐり、袖口、裾口をマタギの3本針仕様にして、 真ん中のステッチ糸を30番糸配色に。〈山内〉らしいきめ細やかな縫製をデザインとして昇華しています。
パンツにもこだわりがぎゅうぎゅうに詰まった一本があります。
日本古来から親しまれてきたヘンプは、日本の気候にとても合い、速乾性、消臭性、抗菌性に優れているため、 特に日本の夏には最適の素材です。 難点は肌あたりで、表面を微起毛させることにより、 繊維をバラし柔らかくしています。
それに加えてヘンプ特有の光沢感をなくすために表面加工を施して、ツヤを消しスエードを思わせる表情となりました。
いかがでしょうか? 実際に手にとって触れてみないとなんとも言えないとは思うのですが、とにかく迫力のあるコレクションと言えるのではないでしょうか。
朴訥に真摯に服作りに勤しむひとたちを、これからもフイナムは応援していきたいと思います。