CLOSE
NEWS

【FOCUS IT.】服のない下北沢の古着屋、ソーワットヴィンテージ。どうして、帽子と花瓶しかないんだろう?

レコード、カレー、演劇、その他もろもろ。ありとあらゆるカルチャーが交差し、心地いいカオスを形成している下北沢。そして、石を投げたら古着屋にコツンと当たるくらい、古着というカルチャーが根付いている街でもあります。だけど、“帽子と花瓶”に特化した古着屋なんて世界中を探したって、ここだけじゃないでしょうか。

そんな前代未聞で唯一無二の「ソーワットヴィンテージ(sowhat vintage)」を営むのは、加藤太郎さんと梅下佳純さん。漫才のような軽快なトークで異色のラインナップになった経緯を話してくれたけど、実はこの二人、かなりの苦労人なんです。

SHOP

sowhat vintage

古着屋「フラミンゴ」で店長を務めていた加藤太郎さんと梅下佳純さんによる帽子&花器に特化したヴィンテージショップ。帽子はストリートものをはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、さらにはモロッコ、グアテマラなど、出自やジャンルの異なるものを数多くピックアップ。そして、梅下さんがセレクトした花瓶、食器なども所狭しと並ぶ。2019年4月にオンライン専門の古着屋として立ち上げ、21年2月には下北沢に実店舗をオープンした。
Instagram:@sowhatvintage_shimokitazawa
Instagram:@sowhat_flowervase

起死回生で見つけた“ハット”という光明。

ー 早速ですが、「ソーワットヴィンテージ」の立ち上げについて聞かせてください。スタート時から帽子に特化していたんですか?

加藤:まったくそんなことなく、古着メインで展開していました。ぼくの趣味が全開で、自分がおもしろいと思うものを中心に扱ってました。

ー 変わり種みたいなところですか?

加藤:そうですね。

梅下:でも全然響いてなかったもんね、早すぎたんだと思います(笑)。

加藤:だね(笑)。

ー 例えばどんなアイテムをピックしてたんですか?

加藤:例えば……アメリカ製の〈コンバース〉とかってよくあるじゃないですか。だけど、ぼくは日本製のシリーズを集めていて。アメリカでデザインした日本製みたいな。あとは70’sのデカ襟のポリシャツとか。ぼく自身が人気のあるものより、隅っこで眠っているような服が好きで。そういうアイテムを集めていました。

ー かなりコアなラインナップだったんですね。

加藤:そうですね。ぼくたち二人とも前職は古着屋の「フラミンゴ」で働いてたんです。あそこは幅広い層に向けて展開していると思うんですが、その反動もあったかもしれないですね。前と違うことにチャレンジしたいみたいな。

とはいえ、そんなラインナップで1年くらいやってたんですが、まあ全然売れなくて、めちゃくちゃしんどかったです。

ー そこから服ではなく、帽子にシフトチェンジしたのはなにかキッカケがあったんですか?

加藤:服を1年続けていて流石にこのままじゃまずいなと思って、オンラインで売れてそうな店や大手のセレクトショップでポップアップをしている古着屋を自分なりに分析してみた結果、どこも何かに特化してることに気づいたんです。ヴィンテージアクセサリーとか、バッグとか。

ー 確かにそんな感じの店が多いかもしれないですね。

加藤:そうなんですよ。それで何に特化しようかと深夜3、4時に考えてたら、ふと「so what」の“w”を取れば、ハット(hat)になるってことに気づいて(笑)。ぼく自身も帽子が好きだったこともあって、これまで集めていた帽子50個くらいをまとめて出してみたんです。そしたら、反応がかなり良くて。これ、いけんじゃね? みたいな(笑)。

ー それを機に帽子一本に絞ったんですか?

加藤:いや、そのときは「ソーワット」の帽子プロジェクトくらいの気持ちでした。それをはじめて1、2ヶ月経ったくらいに知り合いの阿佐ヶ谷の古着屋「イージーシック(easychic)」さんにポップアップに呼んでもらえたんです。それがターニングポイントでしたね。

ー なるほど。

加藤:それからしばらくは古着も平行して販売していて、「モーニンググローリー(※現HIMSELF)」という友達のショップでポップアップをさせてもらう機会をいただいたり、緊急事態宣言が明けたくらいのタイミングから毎日のように下北線路街で出店させてもらうようになりました。その頃は週3で出店、残りはバイト漬けみたいな日々。その辺りから徐々にお客さんが付き始めて、最初は服を並べたんですが、帽子ばっかりが売れてたので、意を決して帽子一本に絞りました。

ー 帽子も変わり種をピックしていたんですか?

そうですね、最初の頃は服と同じように変なアイテムが多かったです(笑)。だけど、帽子一本にしてからは自分の中で気持ちの変化があって、それまでは自分の好きを優先させていたんですけど、帽子に関してはどんな服装の人でも被れるものを選ぶようになりました。来てくれるお客さんが増えてくると、自分の好きを優先させるより、お客さんに喜んでもらえる方がうれしいと思えるようになったんですよね。

外出自粛で得た、予期せぬ出会い。

ー そして、いまでは花器も展開されてますよね。

加藤:元々、二人でひとつの店がやりたいねって話はしていて、立ち上げ当初、彼女はまだ「フラミンゴ」に勤めていて、二人とも持ってるカードが古着しかなかったんです。それで何かほかのことを勉強しておいた方がいいってことで僕は帽子、彼女は花瓶にした、というわけです。でもなんで花瓶なんだっけ?

梅下:去年の緊急事態宣言のときに家の中で過ごすことも多くて自宅に花を飾ろうと思って買って帰ったんですけど、花瓶がなくて。それで花瓶を見るようになって、そこで好きになったんです。

ー 外出自粛を機にライフスタイルを見直す方も増えましたよね。

梅下:休日は絶対に外に出かけるようなタイプだったんで、それまで花を飾ったりしなかったんです。だけど、ずっと家にこもってると部屋になにもないのがイヤになってきて。外に出たいし、海外にも行きたいのに行けないから、家の中で非日常を感じたくなったんです。で、私もそうなんだから、みんなもそうなんじゃないかって(笑)。

加藤:そっか、そこからか。

梅下:「フラミンゴ」で働く前は、調理師学校を卒業してレストランで働いていたので、料理も器も好きで。だけど器は奥が深いのでもっと勉強しないとなと思っていて、それに繋がることも含めて花瓶。花瓶と器は似ているところもあるので、勉強にもなっているんです。

ー ということは花瓶をはじめられたのは割と最近なんですね。花瓶と古着で似てるところはありますか?

梅下:似てますよ! 古着と一緒で土地柄とかが反映されていたり、一つひとつに歴史があったり、デザイナーものもあったりするので、ピックの仕方はほとんど古着と一緒です。

ー 結構ディグりがいがありそうですね。

梅下:そうなんです、海外から影響を受けてつくったような日本製の花瓶もたくさんあって、この年代は北欧のものが流行っていたとか、日本製だけど海外ぽいデザインのものがあったりするので、それを部屋の中でミックスしたりするのも楽しいだろうなって。

ー コーディネートと似ていますね。古着や帽子、花瓶など、もちろん見た目のデザインもあると思いますが、モノの背景も知るとさらにおもしろくなる。

加藤:20代前半っていう多感な時期をずっと古着屋で働いてきているので、かならず古着に置き換えて考えちゃうんですよね。服以外の新品のモノを探すにしても、どこかに古着との共通項を探しちゃうというか(笑)。

ー これまではWEBだったり、下北沢での出店がメインだったと思うんですが、実店舗をオープンするに至った経緯はなんだったんですか?

加藤:ほんと不純な理由なんですが、外で出店していると、冬はめちゃくちゃ寒いんですよ。ぼく寒いのが苦手で。だから出店しようって(笑)。

梅下:暑いときもダメだったじゃん(笑)。

ー そんな理由だったんですか?(笑)

加藤:暑い寒いって理由もあるにはあるんですが、出店を続けているとテーブルの上がパツパツになるくらい帽子の量が増えてきて。いろんな種類も見せたいけど、お客さんが見辛そうにしているのも申し訳ないみたいなジレンマがずっとあったんです。インスタで綺麗に撮っていても、出店しているところに来てみたらイメージと違ったと思われたらショックだなって。ラインナップは自信があったし、いろんなアイテムを見てもらいたいけど、見せ方をどうにかしなきゃっているジレンマがありました。せっかく来てくれたお客さんも真夏だったら汗だくで見てもらってたり、いい環境で見てもらいたいって想いはずっとありました。

梅下:それと風が強い日だと花瓶を置けなかったりしたもんね。

加藤:そうだね、花瓶目当てで来てもらってたのに、お断りするのが本当に申し訳なくて。誰も来てくれてなかったら、オープンしてなかったかもしれないですからね(笑)。

雑食ゆえの引き出しの豊富さ。

ー それでは新店舗についても。内装は和と洋が織りなすような空間ですね。

加藤:これはどっちも好きだし、選べなかったんです(笑)。和室みたいな空間はつくりたいけど、それだけだとストリートぽいアイテムがハマらないみたいなところがあったので、奥は和室にして、手前は海外みたいな境界線をつくってパキッと分けました。一つのショップだけど、それぞれで見え方が変わるような感じにしたんです。我ながらおもしろいんじゃないかなって(笑)。

梅下:和食器も置けるし、北欧やヨーロッパの色鮮やかな花瓶もレイアウトしやすいよね。

ー それでは今後の展望は?

加藤:お客さんに楽しんでもらいたいってのはずっと変わらないと思うんですが、おもしろいことを仕掛けていきたいって気持ちはあるんです。極端なことを言えば、帽子と花瓶の店じゃなくなるかもしれない(笑)。

ー たとえば、急に靴下専門店になったり?

加藤:大いにあり得ます(笑)。良くも悪くも帽子と花瓶にこだわる必要はないと思ってるんです。お客さんが喜んでるならそうなってもいい。それにまた服も置いてみたいし、家具にも興味があります。だけど、中途半端にやるのはよくないと思ってるので、「帽子と花瓶なら日本で一番です」って胸を張れるくらい突き詰めていきたいと思っています。

ー 服装もいろいろ変わりましたか?

加藤:古着が好きっていうベースは変わらないんですが、いろんな変遷を辿ってますよ。アウトドアものにハマって〈パタゴニア〉しか着なかった時期もありますし、スケートしてたときはずっと〈VANS〉に〈ディッキーズ〉、あと〈マルジェラ〉にのめり込んでめっちゃシンプルな服装してたりもしましたね(笑)。

ー いろんなジャンルを着てきたからこそ、帽子のラインナップにも反映されてますよね。

梅下:飽きっぽくていろいろ着てきたからそうかもしれないですね。

加藤:確かに。置いてある帽子もほとんど被ったことがあるジャンルなんですよね。キャップ、ビーニー、ハット、〈カンゴール〉もそうだし、民族ものもあるし、レゲエぽいタムも被ったことありますね。

ー タム被ったことあれば、フルコンプですね(笑)。

加藤:ドゥラグもありますからね(笑)。ヒップホップもロックも聴いたり、いろんなところから影響を受けてたりします。それが接客にも生かされてるのかも。自分が通ってきたルートが多いので、どのジャンルの人が着てもなんとなくわかるというか。

ー そういうジャンルレスな部分は前職の「フラミンゴ」にも通じますよね。

梅下:そうですね、いろいろミックスしてディスプレイを組んだりしてたので勉強になりました。

加藤:コンセプトショップじゃなくて、どんなジャンルのどんな年齢の人が着ても欲しいものがあるみたいなショップだったので、それがいまの自分たちの糧になってると思いますね。

INFORMATION

sowhat vintage

住所:東京都世田谷区代沢2-29 ファミール北沢
時間:12:00〜20:00
Instagram:@sowhatvintage_shimokitazawa
Instagram:@sowhat_flowervase

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP > NEWS