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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.20 掘れば掘るほど“発見があり印象も変わる”アメリカ製のスピワック。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

第20回目は、新たに入れ替わった3ショップのラスト。「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」の藤井 潤 &土井 健さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
Vol.20_スピワックのハーフジップジャケット&N-3B&ファイアーマンコート

―早速ですが、お2人の考えるニュー・ヴィンテージとは?

藤井:この店を始めたばかりの頃、ぼくらが学生時代に買っていた〈チャンピオン(CHAMPION)〉の「リバースウィーブ」などのレギュラー古着が、信じられないくらい高騰していて驚いたんですが、この連載の話をいただいた時にそれと同じような感覚が最初の印象としてありました。

土井:ぼくら的には、古着・新品問わず“みんなが見ていない、ちゃんと価値が評価されていなかったモノをフックアップして気付いてもらう”というのは当たり前にやってきたことですしね。“新たなヴィンテージ”と呼ぶには、ちょっと大袈裟すぎる感もあるとは思いますが、こうやってわかりやすいワードでカテゴライズして提案するのは面白いし、大事だなと思っています。

―では、どんなアイテムがニュー・ヴィンテージになり得ると思いますか?

土井:一言で表すなら“スタンダード”。デザインにしろシルエットにしろ、誰しもが似合って格好よく着こなせるモノ。そして新品アイテム的な感覚でカラバリやサイズもおかわりができる。これらは重要じゃないでしょうか。

―なるほど。その上で今回お二人に紹介していただくのが、アメリカ製の〈スピワック(SPIEWAK)〉です。

藤井:1904年の創業以来、ミリタリー&ワークウェアを数多く手掛け、第一次世界大戦の頃からアメリカ軍への納入実績もありますし、〈ショット(Schott)〉と並ぶニューヨーク生まれのアウターブランドとして知られています。アラサー以上の世代には、アメカジ量販店で売られているブランドというイメージを持っている人も多いかもしれません。

土井:ぼくら世代だと『ブーン』などのファッション誌に掲載されていた「中田商店」の広告で知ったという人も多いよね。当時を知る人なら〈ゴールデンフリース スピワック(GOLDEN FREECE SPIEWAK)〉という名前の方がピンとくるかも。

ーあえて”アメリカ製”を謳うということは、いまは違うんですか?

藤井:現在は中国製などに切り替わっていますが、実はまだアメリカでも作っていて、警察や郵便局など官公庁系のユニフォームがそうです。

土井:そちらはファッション向けではなく、言わばガチ勢。今回は古着で見つかるアメリカ製の〈スピワック〉の中から、ぼくらが面白いと思うモノをいくつか紹介したいと思います。

―以前、この連載でも話に出ていましたが、〈ステューシー(STUSSY)〉や〈シュプリーム(SUPREME)〉も別注したり、ボディに使っていましたよね。

藤井:それに味をしめたのか、徐々にファッション向けに舵を切るようになっていきます(笑)。これなんかは〈アー・ペー・セー(A.P.C.)〉とのコラボですね。生地には同社の代表的モデル「タイタンクロス ジャケット」にも使われているタイタンクロスが用いられています。

土井:この生地は耐熱・耐摩擦性能を持った独自の特殊繊維で織り上げられており、表面に防水処理も施されているため、独特な光沢感が特長。…なんですが生地が最初は固すぎるので、ぼくなんかは早々に諦めて手放しちゃいました(笑)

スピワック フォー アー・ペー・セーのハーフジップジャケット ¥22,000(プロップスストア アネックス)

―これはミリタリーウェアが元ネタなんですか?

藤井:デザイン自体は警察のユニフォームをアレンジしたモノだと思うんですよね。インラインでも同じデザインが存在しますし。こうやって、街で見かける警察官や消防士が着ているアイテムを着ることができるというのも、好きな人にはたまらないポイント。

―モデルとしては何が狙い目でしょうか?

土井:読者の皆さんがどんどん後追いして楽しめて、なのに人気が全然なくて狙い目なのが「N-3B」。モッズパーカも同じような形ですが、こちらはいままったく評価されていないので、人と被ることもなくオススメ。

―〈スピワック〉はココが違うというポイントとは。

土井:他のブランドや軍モノの「N-3B」は、ラグランスリーブの真上に縫い目がくるため、肩線が盛り上がってしまうのですが、ココのは肩線をちょっとズラして前に持ってくることでその弱点を解消しています。なのでサイズアップしても肩がキレイに落ちてくれて、シルエットが圧倒的にイイ!

藤井:あと何より生地が軽くて着心地も抜群! とにかくアレンジの匙加減が絶妙なんですよ。

土井:そう、おしゃれなんです。例えば、コレなんかはウール素材でトラッド感が強まっていて上品。ですがポケットに施されたレザーの補強パーツはオリジナルを踏襲しており、分かってるなぁって。こっちはオレンジのナイロン生地で「MA-1」の表と裏をひっくり返したイメージですね。で、こっちは「N-3B」の着丈を短くアレンジした「N-2B」バージョン。これによりすごく着やすくなっていて、デニム素材やダック素材などの派生モデルも沢山作られました。

スピワックのN-3B ¥22,000(プロップスストア アネックス)

スピワックのN-3B ¥22,000(プロップスストア アネックス)

スピワックのN-2B ¥14,080(TAX IN)(プロップスストア アネックス)

土井:で、もう1つはコレ。〈スピワック〉のネームは付いていないのですが、1980年代後半から2000年代まで〈ステューシー〉のデザイナーを務めていた、ポール・ミッテルマンが手掛けていたブランド〈2600〉のファイヤーマンコートです。怪しいなと思ってインスタで本人に直接問い合わせたところ、やはり〈スピワック〉が生産していたとのことでした。

2600のファイアーマンコート ¥22,000(プロップスストア アネックス)

ー〈スピワック〉は別注に柔軟に対応してくれるイメージがあります。

土井:そうですね。多分ですが、当時のストリートブランドの規模感では、別注に対応してくれるメーカーがあんまりなかったんだと思うんですよね。そんな中で〈スピワック〉は既存のデザインをアレンジするだけならイイよというノリで作ってくれた。というくらいの話なんでしょうけど。

―そういう時代背景も考えつつ見ていくのも面白いですね。バリエーション豊富で掘り甲斐もありますし。

土井:同じようなアイテムを作っている〈アルファ・インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)〉や〈アヴィレックス(AVIREX)〉に比べると見つかりづらくはあるけれど、素材や丈の長さ、ディテールなど掘れば掘るほど新しい発見があるので、人と被らないモデルを探す楽しみはメッチャありますし、きっと〈スピワック〉に対する印象も変わると思います。

藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
ストリート直撃世代からシティボーイまでを虜にする、原宿発の人気インポートショップ「プロップスストア(PROPS STORE)」、またその姉妹店でグッドなレギュラー古着が見つかるユーズドセレクトショップ「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」。その両方をディレクションする広島出身の2人。
インスタグラム:@propsstore_annex
公式サイト:propsstoreannex.shop-pro.jp

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